ソニーモバイルコミニュケーションズの鈴木国正社長兼CEOは、スペイン・バルセロナで開催された世界最大級のモバイル関連展示会「Mobile World Congress 2013」の会場で記者団とのインタビューに応じ、今後の方針などについて説明。グローバルで3位以内の地位を確保することを目指すと語った。

鈴木国正社長

MWC 2013でソニーモバイルは、「Xperia Z」「Xperia Tablet Z」の製品紹介・発表を行った。鈴木社長は、ソニーモバイルとなって1年を振り返り、今年1年を「ブレークスルーの年にしたい」と話していた。

ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズからソニーの完全子会社となってから、「ビジネスの骨格を作り上げることを地道にやってきた」と鈴木社長は語る。

新製品だけでなく、その製品の裏にある、ビジネス上の体力をつけるための取り組みを進めてきた1年だったという。それは、プレスイベントでも鈴木社長が話した「売る力」「オペレーターと話す」「パートナーを作る」という取り組みだ。

Xperia Z/Tablet Z

さらに、経営に関しても改善を図った。ソニーと一体化したことで、ソニーモバイルも力がつき、サプライチェーンの高速化など、要望に応じた素早い対応ができる体制を整えることができたという。「地道なところで、地に足をつけて確実にやってきた」と鈴木社長は説明する。

Xperia Zは、「単純に強みのハードウェアだけでなく、ユーザーエクスペリエンス(UX)を意識して作った」製品だという。Xperia Tablet Zは、日本国内でNTTドコモの2013年モデルとして発表された製品をグローバル向けに発表。LTEモデルに加え、無線LANモデルも用意した。

イベントで提示された「Listen(聞く)」「Create(作る)」「Watch(見る)」「Play(遊ぶ)」という4つの“エクスペリエンス(体験) “を軸に、ソニーとしての「物作り」を見せることで、2013年を「ブレークスルーの年」にすることが、鈴木社長の目標だ。鈴木社長は、自らはもとより、社内全体で自信を持っていると強調する。

ソニーは、新社長となった平井一夫社長の「One Sony」の号令の元、組織の壁を取り払い、社内の組織連携を強化していく方針を示している。その2~3年前から、少しずつこうした取り組みは進められており、現在はそれが「当たり前」という雰囲気になっているという。

例えばWALKMANアプリを作り込み、そこにMusic Unlimitedなどのサービスがシームレスにつながるようにした。メディアプレイヤーを開けば、ローカルコンテンツだけでなく、サービスにもそのままつながる、という体験を作ることを目指したという。

また、ソニーのオンラインサービス「Sony Entertainment Network(SEN)」も、Xperiaと連携することで、サービスをどのように伸ばせるか、という点を意識しているそうだ。「われわれ(ソニーモバイル)自身がPlayStationやSENのビジネスを作っていく」という意識で取り組んでいるとう。

アプリとサービスの連携も強化する

ハードウェアの連携では、テレビ、タブレット、スマートフォンでユーザーエクスペリエンスが共通化されていることを重視している。同社では、スマートフォン・タブレット向けアプリとして、テレビと連携する「TV Side View」アプリを提供しているが、同アプリのようなコンセプトを強化する。NFCを介して、端末同士の連携をワンタッチで設定する機能も、同社だけの機能としてアピールする。

また今後は、スマートフォンのラインナップも「分かりやすく絞り込んでいく」方針。多数の製品を広く薄く提供するのではなく、ターゲットを絞り、ハイエンド、ローエンドも含めて、ラインナップを見直す意向だ。

今回、Xperia Z/Tablet Zはともにハイエンド機だが、「高級機を徹底的にやらない限り、下(廉価版)の話はできない」と鈴木社長。30年のソニーの経験から、新ジャンルに参入する際に、低価格モデルを最初に出しても成功を収めたことがないとし、まずは高級機を作り込み、そこからミドル機、ローエンド機とラインナップを完成させる方針だ。

鈴木社長はこのほか、コネクティビティ(接続性)も重視。機器同士を連携させるため、クラウドサービスなどを活用し、接続性をさらに強化する考えだ。鈴木社長は、これらの取り組みを「トコトンやったら、本当にいい商品ができる」と強調する。

これらの取り組みで「トップ3キープレイヤーになる」ことが目標だという。現在は、Appleとサムスンという2強が市場を席巻しているが、それ以外は「みんな3位」という状況だという。ここから抜け出て、明確な3位以内になることが当面の狙いだ。今後数年は、世界の地域ごとに3位以内のシェアを確保。しっかりとしたポジションを確立していくことで、世界シェアで3位以内に位置することを目指す。

なお、Firefox OSに関しては、スペインのキャリア・テレフォニカがソニーと提携して技術開発をする意向を示しているが、鈴木社長は、「あくまで技術提携で、技術的な議論をする」という表現にとどめた。同社自身は、全ての可能性は排除しておらず、検証のためにFirefox OSにも取り組む姿勢を示している。すでに、Firefox OSをXperiaにインストールするROMが公開されているが、これも検証の過程の1つだろう。「今すぐにいくつかのプラットフォームをやるだけの体力があるわけでもない」と鈴木社長。商品化に関しても「未定」として明言を避けている。