KDDIの2012年冬モデルとして「HTC J butterfly(HTL21)」が発表された。同モデルには特筆すべきポイントが3点ある。それは「フルHD(1080×1920ドット表示)の5インチディスプレイ」「LTE対応」「F値2.0、画角88度の220万画素インカメラ」だ。

HTC J Butterflyは、1.5GHzのクアッドコアCPU(APQ8064)に最新OSのAndroid4.1(Jelly Bean)を採用。おサイフ、ワンセグ、赤外線、防水機能といった日本国内向けの機能も充実している。加えてNFCに対応するほか、LTEの高速通信を有効活用できるテザリング機能も搭載。最大8台までWi-Fi対応機器を接続可能だ。このほかおなじみの音楽機能「Beats Audio」やSense4.0の進化系である独自のユーザーインターフェイス「Sense4+」を採用。内蔵メモリも強化され2GBになった。

初代HTC J(IS13WHT)に引き続き「隙の無い」ハイスペックな仕様は、今回発表された冬モデルの中でもひと際目立つ存在となっている。

2012年冬モデルとして登場するHTC J butterfly HTL21

最も注目すべき点は5インチディスプレイの採用だ。大型ディスプレイを搭載したスマートフォンを各社が多数提供するなか、海外ではHTCの5インチディスプレイを搭載した端末リリースが噂になっていた。今回これが実現し、日本にまず投入されることになったのだ。

最近のグローバル端末の流行の1つはディスプレイの大型化であり、特に5インチモデルはアジア市場で大いに好まれている。メーカー各社はこぞって5インチ台のディスプレイを搭載した端末を開発している。この5インチモデルの流行の先駆けは、Samsung Electronicsの「GALAXY Note」で、同製品は昨年の発売以来、全世界で累計5000万台以上を販売している。

今回の5インチモデルの提供の背景について筆者は次のように考えている。HTCの2012年度7~9月期決算は、前年同期48%減となっており、予想以上の苦戦を強いられている。苦戦の原因はiPhoneを提供するAppleであり、同じAndroidスマートフォンをリリースするSamsungである。特にSamsungのGALAXYシリーズはHTCが過去にハイスペックの雄として君臨していたポジションを完全に奪った形だ。アジア市場を重点市場とし展開を進めているHTCは、AndroWireの別稿で紹介した4.3インチモデルに加えて、アジアでブームとなっている5インチモデル市場も開拓することで、巻き返しを図りたい。

このような背景の下に登場した5インチモデルの第1弾が日本向けに投入されるということは、興味深い。同社が日本市場を重要視していると共に、アジア市場への展開も狙った動きと見ることができる。

次に注目したいのはLTEの採用だ。HTC J butterflyは、日本向けのHTC製品としては、初の4G LTE端末となる(KDDIの冬モデルのスマートフォンは全てLTE対応)。LTEはアメリカを皮切りに日本でも利用者が広がり、さらにはヨーロッパやアジアでも普及が進む次世代の通信規格である。世界的なLTEスマートフォン需要に対し、HTCも対応製品を本格的に投入するはずだ。その第1弾がこのHTC J butterflyということなのだろう。

3点目の注目ポイントは、カメラ機能の進化だ。HTC J butterflyは初代HTC Jと同じく高性能・高画質のカメラを搭載。前面カメラが強化され、220万画素、F値2.0、画角88度のレンズを採用している。前面カメラの強化は、FacebookやTwitterなどで写真をシェアする際、ディスプレイで確認しながら撮影する「自分撮り」のニーズに応えた格好だ。

このように大きく3つの特徴を持つHTC J butterfly。HTC初のアジア市場向け5インチモデルとして、その動向は国内外から大きく注目されるだろう。そしてこのモデルを足がかりに、Android端末の先駆者として、ハイスペック端末の雄としての輝きを取り戻すのではないかと筆者は期待している。HTC J butterflyの海外展開や、これに続く新モデルにも注目したい。

(記事提供: AndroWire編集部)