米AT&Tによる買収話が破談となった米国第4位の携帯キャリアT-Mobile USAだが、こんどは同第5位のMetroPCS Communicationsとの合併を模索しているという。両社の合計シェアは13%程度と、第3位で17%のシェアを持つ米Sprint-Nextelには及ばないが、加入者流出が止まらないT-Mobile USAにとって、生き残りを賭けた選択肢の1つとなりつつある。

同件は米Wall Street Journalなどが関係者の話として10月2日(現地時間)に報じている。T-Mobile USAの親会社である独Deutsche Telekom AGがMetroPCSとの合併に向けた交渉を進めており、同社幹部は3日にもMetroPCS関係者との会合を持つとみられている。もし交渉が成立すればT-Mobile USAで3320万、MetroPCSで930万の契約ユーザーを合わせた中規模キャリアが誕生するが、これでもまだ第3位のSprintの水準には及ばない。

2001年の米VoiceStream Wirelessと米Powertel買収でスタートしたDeutsche Telekomの米国での携帯電話事業だが、加入者伸び悩みと投資継続性の困難から、シェア拡大と周波数獲得を目指す米AT&Tへの事業売却で同市場からの撤退を目指していた。だがVerizon Wirelessらライバルからの猛烈な反発や米連邦通信委員会(FCC)の横やりにより、1年近くに及ぶ交渉は破談し、T-Mobile USAは独自発展の道を歩まざるを得なくなった。T-Mobile買収で大きくシェアが抜き出る可能性のあったAT&Tに対し、今回の買収で当局の妨害が発生する可能性は少ないとみられる。WSJによれば、MetroPCSのCEOであるRoger Linquist氏は74歳と高齢で、同ポジションからの撤退を検討しているという。実際、今年初めには事業売却でSprintとの交渉が進んでいたものの、Sprint役員会の判断により破談になったという経緯がある。もしT-Mobileとの交渉が成立した場合、新会社の株式の大部分はDeutsche Telekom側が持つことになり、引き続き傘下での事業継続となり、Linquist氏は勇退という形になるとみられる。

とはいえ、T-MobileとMetroPCSの合併が成立したとして、その先はいばらの道が待っている。例えばポストペイド携帯が中心のT-Mobileに対し、MetroPCSは低所得者向けの安価なプリペイド専業事業者であること、そしてT-MobileがGSM系列のネットワークなのに対し、MetroPCSはCDMA系列のネットワークを採用するなどサービス間での互換性がない。またMetroPCSはLTEサービスを開始しているが、こうした次世代ネットワーク戦略でT-Mobileは出遅れている。以前、Sprintがビジネス形態やネットワークシステムの異なるNextelを買収して相乗効果がほとんど出せなかったように、単純な契約者数増がどの程度のメリットになるかは未知数だ。またカバーエリアについてもMetroPCSの人口カバー率は3割程度で、やはりT-Mobileと並んでカバー力が弱い。これら課題をどのように乗り越えていくのかが本件の最大の注目ポイントだろう。