パワーマネジメント機能を強化

一方、FTF Japanに合わせて発表されたMPC8536Eだが、「QorIQを発表したが、(PowerQUICC IIIが採用している)90nmプロセスに最適なソリューションもあり、今後もPowerQUICCファミリはサポートしていく」(同)としており、パワーマネジメント機能を強化したのが特徴となっている。

CPUコアは「Power Architecture e500v2」を採用し、最大1.5GHz動作。L2キャッシュは512KBを搭載し、DDR2/3に対応したメモリコントローラも搭載している。また、内蔵機能も、3ポートのPCI Expressのほか、USB2.0コントローラ×3、GbE×2、SATAコントローラ×2、PCIコントローラ、SDホストコントローラと豊富に取り揃えられている。

MPC8536Eの主な特徴(このほかにパワーマネジメント機能が強化されている)

最大の特徴となるパワーマネジメント機能だが、「Freescale全体としても環境問題を取り上げているが、やはり組込機器に関しても、各国で規制が制定されたりしている。日本ではトップランナー方式で、各社が競い合う形でやっているわけだが、特にプリンタなどが顕著で、1Wでも下げたいと言っている」(同)というのが市場の動向であり、こうした要望に対応するために搭載された機能であるといえる。

同製品には3つのモードが用意されている。1つは「基本パワー・モード」で、これはRUN、NAP、DOZE、SLEEP、DEEP SLEEPの5つのモードが用意されている。通常はRUNモードで駆動するわけだが、同モードの消費電力はI/O含め7.0W(1GHz動作時)だという。また、DEEP SLEEPモードは、コアおよびキャッシュの電源を遮断していても、他の周辺モジュールに対しては電源が供給されるというモードで、これによりシステムのリブートの必要がなく高速復帰が可能となる。消費電力は0.95Wという。「組込機器の場合、年中電源が入っているということは少ない。オフ時の電力をいかに下げるかが重要で、DEEP SLEEPモードの強化に気を配った」(同)という。

2つ目は「JOGモード」で、CPUのコア周波数をダイナミックに管理することで、必要に応じたローディングを実行できるクロックに落とすことができるようになる機構を取り入れたモード。内部PLLにより4段階の電力設定(1/4、1/2、3/4の3つの設定と、他モードと被る設定が1つ)が可能で、それに応じた周波数にコントロールすることができる。

3つ目のモードは、「Packet Loss-less Deep Sleepモード」で、ネットワーク機器への対応を図るもの。ネットワークからパケットを読み込み、機器を立ち上げる場合、立ち上がりが遅くパケットをロスする場合がある。同モードでは、イーサネット・パケット・フィルタリングを用いることにより、DEEP SLEEPモードでもパケットロスを生じさせずにJOGモードやRUNモードへ移動的に復帰する機構が組み入れられている。

これらを組み合わせると、パケットが入った際にDeep Sleepの状態から即座にCPUを起動させることができるようになり、パケットロスをなくすことができるようになるほか、ほとんどの機能を使用しない場合にJOGモードにすることにより、機器の平均消費電力を引き下げることが可能となる。

従来のパケット処理と処理性能の関係例(上)と、MPC8536Eを用いた場合のパケット処理と動作周波数の関係例(下)

MPC8536Eは、プリンタメーカーからの引き合いが強いようで、同社ではその要因として、周辺回路がほとんど内蔵されていること、MFPの要求するCPUパフォーマンスを満たしていながらも低消費電力化が可能ということが評価されているのではないかとしている。