このEXEモードを更に推し進めたのが、同時投機スレッド(Simultaneous Speculative Threading(SST))モードである。このモードでは、マイクロコアの2つのスレッドのリソースを使ってしまうのでプログラムから見ると1コア1スレッド実行しかできない。これが、諸元の表で、マイクロコアあたりのスレッド数が1 or 2となっている理由であろう。

EXEモードではレーテンシの長い命令の実行が終わり、延期命令キューの命令の実行が終わってjoinが成功すると1つのスレッドに戻ったが、SSTモードでは先行するSSTスレッドは、もう一方のスレッド用の延期命令キューにNTオペランドを持つ命令を格納しながら実行を続けていく。そして、先行スレッドに追いついたメインスレッドは、次は、他方の延期命令キューの命令を実行するというように、スレッドは消滅せず、両方とも実行を続けるという動作を行う。

このように、Rockはマルチスレッドメカニズムを使って、シングルスレッドの実行性能を向上させようとしている点が新しい。勿論、このような考え方については既に多くの論文が発表されており、新規なアイデアではないが、商用のマイクロプロセサへの実装を発表したのはRockが初めてである。