ハイブリッドAI時代、なぜ企業はいま「AI PC」に投資すべきなのか TECH+編集長 小林 行雄が語るCopilot+ PCの価値

生成AIの導入はすでに珍しいものではなくなった。企業の関心はいま、「導入するか」から「どう使うか」という第2フェーズへ移っている。しかし、そのポテンシャルを十分に引き出せている企業は決して多くないだろう。

TECH+(テックプラス)編集長の小林 行雄は、AIモデル開発とAIを導入した企業の動向を踏まえ「クラウドAIとローカルAIのどちらか一方が優れているというわけではなく、それぞれの長所を組み合わせたハイブリッドAIを意識することが重要。そのカギはAI PCにあります」と語る。

本稿では、現在のAIトレンドと日本企業の働き方、そして日本HPの Copilot+ PC「HP ProBook 4 G2a 14 AI PC」を交え、企業がいまAI PCを導入することが、なぜ単なる設備投資を超えた戦略的価値を持つのかを解き明かしていく。

小林 行雄(TECH+編集長)

1990年代後半、大学で電子工学を学ぶ傍ら、秋葉原でPCパーツの販売に従事した後、2000年代前半に半導体・FPD業界専門誌の編集記者に転身。主に半導体デバイスに関するアーキテクチャ、製造プロセス、製造装置、材料分野を中心に担当。2008年1月に、毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)の運営するオンラインメディア「マイコミジャーナル」に移籍。以降、半導体業界を中心に、半導体の適用範囲の拡大とともに、スーパーコンピュータ、自動車、ロボット、産業機器、宇宙、AIとフォロー範囲を拡大してきた。2021年のビジネス情報メディア「TECH+」立ち上げに併せて編集長に就任して以降も、技術の進化を肌で体感するべく最前線で技術の変化を追い続けている。

変わりつつある生産性の定義
――「行動量」と「行動の質」を
最大化するAI
生産性向上はどのような組織においても変わらぬ目的だ。しかし、日本では少子高齢化の影響から人手不足が深刻化しており、多くの組織は採用に四苦八苦している。それと同時に、デジタル化の進行によって業務の複雑化も進んでおり、育成にかかる時間も延び続けている。

一人あたりの業務負荷が増大している中で、いかにして生産性を向上させる仕組みを作っていくべきだろうか。そのカギは「行動量」と「行動の質」にある。有限である労働時間のなかで生産性を上げるには、全体の行動量を増やすか、一つひとつの行動の質を上げるしかない。

「TECH+」の編集長としてIT・テクノロジーとビジネスの変遷に触れてきた小林は「組織や個人の課題を解決し、生産性を高めるためには、テクノロジーによる業務の加速が欠かせません」と語る。とくに生成AIは“地味だが時間のかかる作業”を大幅に軽減し、“新たな時間を生み出す”ツールとなるという。

「ある調査では、生成AIを業務で使う知識労働者が約75%に達し、AI利用者の約90%が時間削減に役立つと回答しています。これは、AIが一部の先進的なユーザーだけのものではなく、すでに多くのビジネスパーソンにとって業務効率化の現実的な手段になりつつあることを示しています」(小林)

いま、世界は空前のAIフィーバーの中にあり、その影響を受けて半導体は高騰を続けている。理由は言うまでもなく、AIが業務のあり方を大きく変えると考えられているためだ。その変化は「行動量」×「行動の質」という掛け算を加速させ、極めてシンプルなかたちで生産性を向上させるというものであり、あらゆる産業がその恩恵を受けることになるだろう。

AI PCがローカルAI活用の鍵を握る――Copilot+ PCの可能性

生成AIといえば真っ先に思い浮かぶのが「Microsoft 365 Copilot」などのクラウドAI。圧倒的なスケーラビリティと大規模なパラメータを持つクラウドAIは、初期投資やサーバー構築を行わずとも導入でき、多くの課題を解決してくれる存在だ。だが「昨今は、クラウドAIのデメリットも表出してきています」と小林は言う。

「ひとつは情報セキュリティです。昨今、社内規定やクライアントとの契約により、クラウドにいかなるデータもアップロードしてはいけないといった規約なども増えています。もうひとつはトークンコスト。従量課金型であれば消費した分だけ費用が発生しますし、サブスクリプション型であっても継続的なコストが発生します」(小林)

そんななか、いま新たな選択肢として注目されているのがローカルAI。つまり、インターネット上のクラウド環境ではなく、PCやスマートフォン、社内サーバーなどのローカル環境で動作するAIだ。小林は、このローカルAIを導入する手段のひとつとして「AI PC」を挙げ、もっとも身近な製品としてマイクロソフトが提唱する「Copilot+ PC」を紹介する。

「Copilot+ PC は、AI特化型プロセッサ『NPU(Neural Processing Unit)』を活用することで、インターネットに接続せずともローカルでさまざまなAI処理が行えるPCです。トークンコストを気にする必要がなく、ローカルで完結するので外部に出せないデータもAI処理できます。人間の代わりに仕事を完結するというより、人間が判断する前段階の作業を大幅に軽くしてくれる存在だという点が重要でしょう」(小林)

さまざまな使い方が考えられるAIだが、日本HPの調査によるとビジネスパーソンの使い方は文章要約、社内情報検索、リサーチ、翻訳、議事録作成、アイデア出しで約7割を占めるという。これらはいずれも、ローカルAIでほとんど処理できるものであり、同時に社外に出せない機密情報が重要になる仕事だ。クラウドAIには聞けないことも、ローカルAIになら聞くことができる。

Copilot+ PC なら強力な独自機能がローカルで利用可能

Copilot+ PC として認定されるには、毎秒40兆回以上の演算(40TOPS)が可能なNPU、16GB以上のメモリ、256GB以上のストレージが必須条件となっており、スペック的にも高性能が求められる。その性能を活かし、Copilot+ PC にはNPUで処理できる独自機能がビルトインされている。現在約10機能が利用可能で、いずれもローカルのみで動作可能だ。

「例えば『Click to Do』などが代表的な機能です。画面上のテキストや画像を認識し、選択するだけでAIが画面を判定して、テキストならばコピーや要約、画像ならば検索や加工を提案してくれます」(小林)

そのなかでも小林は、「セマンティックインデックス」がお気に入りだという。

「みなさんおなじみの『Windows Search』も改良されています。従来はファイル名に文字列が入っていないと検索できませんでしたが、Copilot+ PC ならファイルの中身まで検索できます。例えば“田中さん”と検索すると、ファイル名に『田中さん』が入っていなくても、ファイルの中に『田中さん』という記載があるファイルが検索結果に表示されます」(小林)

さらに小林は、「リコール」機能についても触れる。

「PCのモニターに映った内容を定期的にスナップショットとして自動保存し、後からテキストで検索できる機能です。例えば、Web会議でだれかが出していた『各生成AIのメリット一覧表』を探したい時に“生成AIのメリット”で検索すると、『もしかして、この画面ですか?』と候補を表示してくれます。AIはこの画像が表であることを認識し、生成AIという言葉を含んでいることも理解しています」(小林)

この他にも、PC上で流れる音声をリアルタイムで翻訳して字幕を表示する「ライブ キャプション」や、テキストによるプロンプト(指示)や手書きのスケッチをもとにイラストや画像を生成できる「コクリエーター」、Web会議の映像や音声をAIが自動で補正してコミュニケーションを円滑にする「Windowsスタジオ エフェクト」などがあり、独自機能の拡張・拡充も続けられている。

「Copilot+ PC のローカルAIは、クラウドAIのデメリットを補ってくれる存在です。しかし、やはりクラウドAIには大規模かつ高度なAIモデルを利用できるという強みがあります。両方の長所を組み合わせたハイブリッドAIを活用する意識が、これから求められていくことでしょう。将来的には『これはローカルで』『これはクラウドで』といった判断をAIが行うようになると思います」(小林)

「HP ProBook」が Copilot+ PC の実務面をサポート

そんなCopilot+ PC の最新法人モデルのひとつが、日本HPの「HP ProBook 4 G2a 14 AI PC」だ。CPUに「AMD Ryzen AI」を搭載し、最大50TOPSという高いNPU処理能力を誇る。

「日本HPの Copilot+ PC の強みは、AI処理性能だけでなく、法人利用に必要な接続性、管理性、セキュリティまで含めて提案できる点にあると思います。どうしてもNPU性能に注目が集まりがちですが、企業が実際に導入する場合、重要なのは『現場で安定して使えるか』『IT部門が管理しやすいか』『紛失・盗難時に対応できるか』といった実務面です」(小林)

「HP ProBook 4 G2a 14 AI PC」の特徴的な機能のひとつに「HP eSIM Connect」(※1)がある。これは法人向けノートPCに4G LTE/5Gのau回線を組み合わせ、5年間データ通信を利用できるというサービスだ。

「ノートPCがインターネットに常時接続できます。サービス開始から約2年半で3700社以上に導入されているそうで、日本HPによると満足度は100%だとか。価格は30万円程度と一定の初期投資は必要ですが、5年間のネット使い放題を考えると非常にコストパフォーマンスが良いサービスですし、SIMカードやモバイルルーターの管理、開通設定やアプリ設定の工数といったコストも削減できます」(小林)

また、電源オフや通信オフラインの状態でも、位置情報の探索、遠隔ロック、データ消去が可能なMDMソリューション「HP Protect and Trace with Wolf Connect」も心強い。日本HPは“世界80カ国以上で利用可能であり、NISTが定めるパージレベルでのデータ消去にも対応する”と説明している。

「チップセットの違いを意識することなく使えることも『Wolf Connect』のポイントです。企業では異なるCPUプラットフォームのPCが混在して使われていることも少なくありません。そうした環境でも一元的に管理できることはメリットだと思います」(小林)

もちろん、AIを呼び出すための専用キー「Copilotキー」も搭載。また、手動やローカルAIの自動判断でON/OFFできる内蔵プライバシーフィルター「HP Sure View」(※2)も嬉しい機能だ。従来のPCで採用されてきた巨大なACアダプターの代わりに、「HP 65W USB Type-C GaN フォルダブル ACアダプター」を採用し、可搬性や汎用性を向上させたのも大きなトピックだろう。

攻めのIT投資として
AI PCの導入を検討すべき
テクノロジーやエンターテインメント業界において進化の著しいAIだが、ビジネスの現場ではまだまだ使い方が定まっていないのが現状だ。だが小林は、「従来通りの選定基準でPCを選んでいては、5年後に競争力の差となって表れるでしょう」と警鐘を鳴らす。

「コモディティ化が進んでいたこれまでのPCは、言わば守りの投資でした。一方、現在はPCの価格が上がっています。だからこそ、AI PCは攻めのIT投資になるのです。とくに『HP ProBook 4 G2a 14 AI PC』はAIを十分に活用するためにメモリも潤沢に搭載しているハイスペックなモデルです。しかしAIの重要性を考えたとき、あとから必要なスペックだと気づくはずです。いまなら Copilot+ PC を選んでも、標準モデルと数万円程度しか変わりません。業務効率、通信費、管理工数、セキュリティリスク、そして今後のビジネスまで見据えた総コストで考えてみるといいかもしれません」(小林)

クラウドAIもローカルAIも同じプラットフォームで動かせる Copilot+ PC は、来たるハイブリッドAI時代に柔軟な対応ができる環境を企業にもたらしてくれるだろう。これは単なる新しいPCカテゴリではない。AIを活用した生産性向上と、AIとの付き合い方に対応するための次世代業務基盤として捉えてほしい。

  • (※1)「HP eSIM Connect」は対応モデルのみ利用可能です。
  • (※2)「HP Sure View」は対応機種のみで利用可能な機能です。本記事で紹介している「HP ProBook 4 G2a 14 AI PC」には搭載されていません。