市街化調整区域を土地活用するには?方法を知って申請を検討しよう

「土地活用したいけど、何か特別な手続きが必要?」「そもそも市街化調整区域って何?」このような疑問があり、市街化調整区域内に土地を所有していても、土地活用に踏み切れない方もいるのではないでしょうか。

市街化調整区域内にある土地は原則として許可を得ない限り、建物を建てたり建て直したりすることはできません

建物が不要な土地活用法を選ぶか、建築する場合は許可を得るための手続きが必要なので、市街化区域内にある土地に比べると土地活用までの道のりに制限があります。

そこでこの記事では、市街化調整区域とはどのような土地か、土地活用方法の候補、もし土地活用を始めるならどのような手順を踏むのかについて解説します。

目次

市街化調整区域とは?

簡単に言えば、市街化調整区域は街として開発してはいけない場所で、アパートやマンション、一戸建て住宅といった建築物を建てることが原則できません。

さらに許可の基準は自治体によって異なる部分もあり、実際に土地活用するまでに手間がかかることから、難しく感じられることが多いようです。

市街化を抑制する目的の区域

市街化調整区域とは、街として開発しないように定められた地域のことです。都市計画法により都道府県ごとに場所が定められています。

市街化調整区域を定める理由は、開発によって自然や農地が失われ、無秩序に市街地が拡大することを防ぐためです。建物を建てたい場合は、原則として自治体を通じて都道府県に申請し、個別の診査を受けて許可を得ることが求められます。

市街化調整区域の土地活用が難しい理由

自然や農地が失われないように指定されていることで、市街化調整区域は次の3つの活用が難しくなります。

  • 用途が限定される
  • 立地条件が悪い
  • 電気や水道などが整っていないことが多い

なぜ活用が難しいのか、その理由を一つずつ解説します。

用途が限定される

市街化調整区域では、都市計画法において許可なく建物を建てたり、土地を開発したりする行為が認められていないため、用途が限定されてしまいます。

許可を得られたとしても市街化区域内の土地以上に厳しく、建てられる建築物の床面積に規制がかけられます。つまりマンションやアパート、店舗の建設といった土地活用が困難な可能性があるのです。

また地目(土地の利用目的)が宅地であったとしても、建設確認申請が求められます。都市計画法が最後に改正された平成18年(2006年)以前に建設された建物の場合は、増改築や立て直しに関しても各自治体からの許可が必要です。

立地条件が悪い

市街化調整区域は市街地から離れ、交通の便が悪いエリアにあることがほとんどです。市街化区域であれば成功する可能性がある土地活用法も、市街化調整区域では利用者が少なく収益につながらないリスクがあります。

また、スーパーやコンビニといった生活必需品を購入する店舗のほか、娯楽施設などがないこともあります。逆を言えば、こうした店舗を出店したとしても利用者が少なく、経営が成り立たない可能性が高いでしょう。

電気や水道などが整っていないことが多い

市街化調整区域は電気やガス、上下水道など生活インフラの設備が整っていないため、土地活用が難しい可能性があります。また市街化調整区域は地域の自然や資源を守ることが目的なので、病院や学校、鉄道といった生活に必要な施設がないことも多いです。そのため、そもそも生活しづらい地域であるということも頭に入れておく必要があります。

たとえばマンションやアパートのような賃貸経営による土地活用は、生活インフラが整っていない地域では難しい可能性が高いでしょう。また土地活用ではなく、売却を検討したい方も多いかもしれません。

しかし市街化調整区域にある土地の売却は難しく、万が一売れたとしても価値が低いのが実情です。

市街化調整区域の土地をうまく活用するポイント

市街化調整区域の土地を活用するなら、建物が不要な土地活用法を選ぶか建設許可を受けたうえで建物を建てるか、どちらかを選択する必要があります。そこでどのような土地活用法があるのか解説します。

建物を必要としない土地活用をする

建物を必要としない土地活用とは駐車場経営や太陽光発電、定期借地、資材置き場、墓地といった建物の建築が不要な土地活用のことです。建物がそもそも不要なため、市街化調整区域であっても許可申請が必要なく、有効な土地活用が行える可能性があります。

特別な建築許可を受けて土地活用する

市街化調整区域であっても、事前に自治体と協議したうえで特別な建築許可を得られれば建物を建てられます。ただし、どのような建物でも許可が得られるわけではありません。

市街化調整区域に建てられる建物とは?

都市計画法第34条に適合する建築・開発と認められる建物のみ、各自治体の許可を得たうえで建てられます。より詳しい定義と具体的な建物の例を以下の表にまとめました。

条項定義建物の例
第1号開発区域に住んでいる人の日常生活に必要な施設コンビニ、学校、理美容院、電気製品の修理店など
第2号鉱山資源、観光資源の有効利用のために必要な施設セメント製造、粘土かわら製造業、ゴルフコース、ホテル、遊園地など
第3号温度、湿度、空気等に特別な条件を必要とする施設(本号に基づく令が未制定のため、許可される建物の例なし)
第4号農林水産物の処理や貯蔵・加工などに必要な施設ジャムや乳製品の製造工場、農産物の集出荷場など
第5号特定農山村地域における農林業等活性化施設農林業等活性化基盤施設
第6号中小企業同士の共同化や集団化の事業に使う施設中小企業共同化施設
第7号既存の工場の事業を効率化するための施設隣接する工場を増やす
第8号危険物の貯蔵または処理に利用する施設火薬庫など
第9号市街化区域内に建築することが困難あるいは不適当な施設ガソリンスタンド、ドライブイン、火薬製造所
第10号地区計画に適合した施設一戸建て住宅、共同住宅など
第11号市街化調整区域に近いまたは隣接した地域のうち、条例に当てはまる用途に適合する施設一戸建て住宅、コンビニのような小規模店舗
第12号条例で定めた区域・用途に適合する施設集落内の分家、収容移転の住宅、指定既存集落内の自宅など
第13号市街化区域内になる以前から有する建物へ計画通りに建設を行う場合一戸建て住宅など
第14号上記の1~13号に掲げるもの以外で許可を得られる施設農家分家居住地、寺、納骨堂、ゴルフ練習場、老人ホームなど
“参考:長野県市街化調整区域の開発許可

簡単に言えば、次のような特徴を持つ建物であれば、開発審査会より許可が下りる可能性があります。

  • 周辺に暮らす人々にとって必要な建物
  • 地域で行われる産業に必要な建物
  • 土地所有者が自ら使用するための建物
  • そのほか、開発審査会が許可した建物

また自治体によっては、個別にさらに規制がかけられているケースもありますが、反対に規制が緩やかな場合もあります。事前に自治体へ相談し、許可を得るためにはどのような手続きが必要なのかを確認しておくとよいでしょう。

市街化調整区域の土地活用例

では、実際に市街化調整区域で土地活用を目指すのであれば、どのような方法があるのか紹介します。

建物を必要としない土地活用例

建物が不要な土地活用として、駐車場や太陽光発電、資材置き場、墓地が挙げられます。

駐車場

駐車場としての需要が見込めれば、初期費用を抑えつつ土地活用で利益を得られるでしょう。建物も不要で、土地の状態が駐車場に向いていれば、簡単な整地と区割りのロープだけで始められることもあります。

注意したいことは、その地域で駐車場が必要とされているかどうかです。たとえば周辺に観光地があり観光客が見込めるのであれば、時間単位で貸し出せるコインパーキングの需要があるかもしれません。

駐車場経営の種類や運用方式、メリット・デメリットについて、こちらの記事で詳しく紹介しているので、あわせてご参照ください。

太陽光発電

太陽光発電は建物を建てる必要がなく、集客を気にしなくてもよい土地活用です。

土地に太陽光発電システムを設置し、発電した電気を電力会社に買い取ってもらうことで利益を得ます。定期的なメンテナンスや初期費用は必要ですが、毎月まとまった収入が得られる可能性もあるでしょう。

ただし土地が斜面にあり、太陽光発電システムを平らに設置するための工事(造成工事)が必要な場合は、開発の許可を得なければなりません。また、土地の地目が農地だった場合には農地転用も必要なので、土地の条件次第では始めるまで手間がかかる場合もあるでしょう。

ほかにも、太陽光発電を検討する際は設置費用や期待利回りなど、運営についても知っておくことが重要です。以下の記事を参考に、具体的に太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。

資材置場

近隣の企業などに対し、木材などの資材置き場として土地を貸し出す活用方法もあります。

業者側が土地の管理を行ってくれるため、土地の所有者として業者とやり取りする以外は、手間やコストが発生しません。交通の便が悪いところでも、資材置き場としてなら借り手が見つかる可能性もあります。

また自治体から許可を得る必要はあるものの、倉庫やコンテナを建設して貸し出す貸倉庫やコンテナ経営という手もあり、業者だけでなく個人に貸し出せる点も魅力です。

詳しくは、以下の記事も参考にしてください。

墓地

郊外の広い土地であれば、墓地や霊園を運営する業者に貸し出すという土地活用も視野に入ります。墓地や霊園は、その性質上長期間の貸し出しになるため、駐車場や資材置き場よりも、毎月まとまった収入が長期間得られる可能性があることがメリットです。

半面、墓地という性質上、むやみに土地をほかの用途に使うことはできなくなります。業者に貸し出した場合も、ほぼ永久的に貸し出す可能性があると考えましょう。したがって、他の土地活用との比較を行ったうえで、決定するのがおすすめです。

許可を得て建物を建築する土地活用例

各自治体の許可を得たうえで建物を建てる場合は、高齢者施設・社会福祉施設、医療施設、地域住民の実用的店舗の建設といった土地活用が挙げられます。

これらの施設や店舗は許可を得やすいほか、アパートやマンション経営が不向きな土地でも、利用者を獲得できる可能性があるためです。

高齢者施設・社会福祉施設

高齢者施設や社会福祉施設とは、具体的には有料老人ホームやサービス付きの高齢者向け住宅のほか、特別養護老人ホームや認定こども園といった公的施設を建設する活用法です。地域にとって必要なことも多く、建物を建てる許可が得やすいという面があります。

有料老人ホームやサービス付きの高齢者向け住宅などの高齢者施設は、自治体から周辺住人のニーズや病院との連携のしやすさなどに鑑みて、許可されることがあります。契約期間も長期間となり、収入も安定しやすいのがメリットです。

社会福祉施設は各自治体側が必要に応じて公募し、認可を与えられなければ運営できません。したがって自治体との事前協議と届け出が前提となるため、認可されれば施設の建設が同時に認められます。

地域によっては、特定の日のみ通所して介護サービスを受けられる「デイサービス施設」の建設がニーズとしてあるかもしれません。デイサービス施設を通じた土地活用法について、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

医療施設

開業を希望する医師や医療法人に対し、土地や建設した医療施設ごとに貸し出すことでも活用できます。社会福祉施設と同じく、地域にとって必要度が高いとして、自治体から許可を得られる可能性が高いです。

ただし、自治体ごとに定められた条件をクリアしなければなりません。地域によっては、既存の医療施設のほうがアクセスしやすく、借り手や利用者がいない可能性がある点には注意が必要です。

地域住民の実用的店舗

近隣住民の生活必需品を販売するコンビニや小規模店舗、飲食店を建設する場合も、自治体から許可を得られる可能性があります。

日常生活に関わる店舗であることが前提で、ゲームセンターやパチンコ店は規模が小さかったとしても許可は下りません。また自治体によっては「既存の集落内に建てる場合に限る」とするところもあります。

以下の記事では、土地活用でコンビニ経営を行う場合の設置費用について、詳しく解説しています。初期費用を具体的に知りたい方は、参考にしてください。

市街化調整区域で建物を建てる場合の申請方法

前提として、実際の申請方法は自治体によって異なる部分があるケースも多いです。そこで、ここでは申請時の主な手順と地目が農地であった場合の手順、申請を行政書士に依頼する場合に絞って解説します。

申請が下りるまでの手順

申請して許可が下りるまでには、主に次の6つの手順を進めていく必要があります。

  • 自治体に案内図や公図などをそろえて事前相談
  • 事前届の提出
  • 標識の設置、住民説明、説明報告書の提出
  • 事前協議が行われる:関係各課が実施、都市計画法で建築が認められる建物なのか判断される
  • 開発事業協議・開発審査会が行われる
  • 開発許可申請が下りて許可通知書が交付される

まずは誰がどこにどのような建物を建てるのか、具体的な計画を自治体の該当課へ相談する必要があります。その際に必要な書類は以下の通りです。

  • 土地登記全部事項説明書
  • 案内図
  • 現況図
  • 土地利用計画図

このほかにも、地目が農地であれば農地法許可証明書の提出が求められたり、既存の建物を建て替えるなら、建築確認済み通知書と図面が求められたりするなど、状況によって必要な書類は異なります。

必ず事前に自治体の該当課へ相談して、不足のないように用意しましょう。

農地の場合は転用許可が必要

地目が農地の場合は、そのままでは建物を建てることが法律で禁じられているため、転用許可を先に得る必要があります。地目とは土地の使用目的を示す区分で、基本的に地目以外の利用はできません。

農地の転用許可を得るためには、農地を農地以外に転用する農地法第4条または、売買や借地等の農地の権利移動を目的とする農地法第5条に基づき、以下の手順を行ったうえで開発許可を得る必要があります。

  • 農地転用許可申請書の作成
  • 必要書類の取得
  • 該当する農地がある農業委員会へ申請
  • 検査
  • 農地転用の許可が下りる

注意点として、農業振興地域の整備に関する法律により農振地域に指定されている場合は、原則として農地転用が認められません。開発計画によっては、農振地域からの除外を受けられる場合もありますが、さらに厳しい条件が課せられ、結果として土地活用まで至らない可能性もあります。

以下の記事では、土地活用にあたり農地転用を行う際の注意点や手続き方法、必要書類などを解説しているので、参考にしてください。

申請は行政書士に依頼できる

土地開発の申請を行うためには、個人の力やネット上の知識だけでは難しいことが多く、現実的には行政書士に代行してもらう方法が効率的です。許可申請書を提出する際は、自治体ごとの基準をよく理解する必要があります。専門知識を持つ行政書士へ依頼することで、用意すべき書類の不足や不備を防ぎ、スムーズに土地活用を始められるでしょう。

ただし土地活用の目的や土地の面積、開発の目的が自宅用か開業用かなど、さまざまな条件によって申請代行費用は異なります。一般的には土地の面積が広くなるほど高額になりますが、具体的には15万円~50万円以上かかり、ときには70万円近くかかることもあるでしょう。

代行を依頼する際は、複数の行政書士へ相談して見積もりを提示してもらったうえで、土地開発の予算内に行政書士への報酬も含められるように、慎重に決めていくことをおすすめします。

まとめ

市街化調整区域は原則として建物を建てられず、建物が必要な土地活用を行う場合は許可を得る必要があります。また生活インフラが整っていなかったり立地条件が悪かったりなどして、土地活用が難しい側面があることも事実です。

しかし、建物を必要としない土地活用を行うという手もあります。まずは該当する自治体に土地活用について相談し、必要な手続きを踏まえたうえで、土地を有効活用できるように用意を整えていきましょう。

※「マイナビニュース土地活用・不動産投資」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
https://www.fsa.go.jp/news/30/20190328_summary.PDF
https://www.fsa.go.jp/news/r4/kokyakuhoni/20230120/kpi_toushin_230120.pdf
https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/law1.html
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001411696.pdf
https://www.fsa.go.jp/


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