仕事をしていると、ビジネス相手から名前を聞かれることがありますが、相手に名前を教えるのが「怖い」「不安だ」と思った時でも、教えなくてはいけないのでしょうか?

『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』の著者である津田卓也氏は、「思わぬ事件に巻き込まれることもあるので、個人情報をお客様に教える必要はない」と話します。

そこで今回は、本書より内容を一部抜粋して、教えたくないと思う相手に仕事中に名前を聞かれたときの適切な対応をお伝えします。

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“私の職場には、名札がありません。
よくお越しになるお客様から「きみの名前はなんて言うの? 教えてもらえない?」と聞かれました。
クレーマーとして要注意人物というわけでもなく、何より常連さんです。私としては本名を教えたくはないのですが、ここで名前を答えないのは不誠実な対応なのでしょうか。”

このようなケースにおいてのNG対応は、「○○○○と申します」と、正直に本名を伝えることです。

スタッフの個人情報を執拗に聞き出そうとするのは、特殊クレームに多いパターン。

「このスタッフは、私のことを理解してくれている。またお話がしたい」というのが真の欲求です。

だからといって、お店のファンになるわけではなく、名指しでクレームを入れてきたり、SNSで根も葉もないことを拡散されたりする場合もあり、注意が必要です。

断り切れない場合は、偽名を教えるという手もあります。鈴木や佐藤といったありふれた名前を告げ、その場をごまかしましょう。

「フルネームを教えろ」と言ってくる相手もいますが、

「プライバシーに関わることなので、お教えできません」「○○課の鈴木(偽名を使用)と言っていただければ、社内では通じます」

と、切り返します。

偽名を伝えた場合は、その旨を同僚にも伝えておきましょう。

これは、クレーム対応者の犯人捜しではなく、同じ相手が来た場合に、誤った対応(他のスタッフが「そんな人はいません」と本当のことを告げてしまい「嘘を言われた」と相手を怒らせてしまう)をしないためです。

名札がなく、名前を公表しないのは、組織に何らかの方針があるからです。

個人の判断で名前を伝えるのは控えましょう。

また不用意に伝えてしまった場合、今後、名指しで対応を求められるほか、嫌がらせをされる可能性もあります。

あなた一人が個人情報を教えてしまったことで、次回から別のスタッフにも同じように、氏名の開示を要求しはじめるかもしれません。

特にお客様の様子に不審な点が見られなくても、自分や同僚の身を守るためにも、組織の方針である以上、個人情報を明かすことは避けましょう。

また、「名刺を出せ」と言われた場合でも「只今、名刺を持ち合わせておりません」と断ります。

相手が食い下がってきた場合は、「なぜ私の名刺が必要なのか、理由を教えていただけますか?」と、切り返しましょう。

トラブル発生時に名刺を求められるのは、役職の確認や氏名の確認が目的です。名前や住所を教えた場合と同様に、嫌がらせをされる可能性もあるので注意しましょう。

津田卓也

津田卓也(つだ・たくや)株式会社キューブルーツ代表取締役。1995年ブックオフコーポレーション株式会社に入社し、2000年にはブックオフコーポレーションの年間MVP獲得、前年対比売上150%以上を3度達成。2005年にセミナー&研修会社キューブルーツを設立。特に、OJT(部下指導)研修・クレーム対応研修は、国内随一の登壇実績を持ち、「こんな研修は初めて!」「非常に勉強になった!」「感動した!」と評価され、リピート率100%、2016年にはセミナー受講者数が、国内最速で10万人を突破。メディアでも活躍し、フジテレビ『バイキング』、テレビ東京『解禁! 暴露ナイト』、テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』、NHK『あさイチ』等に出演。執筆活動にも力を入れており、雑誌では『日経ビジネスアソシエ』等にも寄稿。著書に『どんなクレームも絶対解決できる!』(あさ出版)、『なぜか印象がよくなるすごい断り方』(サンマーク出版)など。

『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』(津田卓也 著/あさ出版 刊)

現場の従業員を疲弊させないためには、カスハラ、悪意クレームなどの“ハードクレーム”への対応方針を企業・組織が明確に打ち出すことが必要です。本書では、豊富な事例をもとに、従業員と組織を守るための仕組みづくりを紹介。お客様の要望を真摯に受け止めるべき“一般クレーム”と避けるべき“ハードクレーム”を区別し、“ハードクレーム”を断るための対応法を、クレーム対応研修国内随一の登壇実績をもつ著者がお教えします。