モトローラ・モビリティ・ジャパンから7月21日に発売された「motorola edge 40」を1週間ほど試用しました。大型化の進む昨今のスマートフォンには珍しい「薄さ」「軽さ」が際立つ、片手操作派におすすめしたい1台です。

  • モトローラのミドルハイスマホ「motorola edge 40」。直販サイト「moto store」での販売価格は64,800円

    モトローラのミドルハイスマホ「motorola edge 40」。直販サイト「moto store」での販売価格は64,800円

ミドルレンジとハイエンドのあいだの「ちょっと良い」機種

2023年現在、モトローラ製スマートフォンのラインナップは、ローエンドの「moto e」ファミリー、ミドルレンジの「moto g」ファミリー、ミドルハイ~ハイエンドの「motorola edge」、フラッグシップに位置付けられる折りたたみスマホの「razr」の4つに分類されています。

今回紹介するmotorola edge 40は上から2番目、通常の板状のスマートフォンとしては上位のmotorola edgeというグループに属します。細かく言えばその中でもグレードが分かれており、日本で発売された機種に限ってさかのぼると2021年はミドルハイの「motorola edge 20」、2022年はハイエンドの「motorola edge 30 pro」が投入され、今年は再びミドルハイに戻りました。高級路線の機種としては折りたたみの最上位機種「razr 40 ultra」が同時に発表されたので、そこはラインナップ全体のバランスを見て選ばれたということでしょう。

  • (参考)2022年のハイエンドモデル「motorola edge 30 pro」

    (参考)2022年のハイエンドモデル「motorola edge 30 pro」

  • (参考)edge 40と同時に国内発表された折りたたみスマホ「razr 40 ultra」

    (参考)edge 40と同時に国内発表された折りたたみスマホ「razr 40 ultra」

昨年のmotorola edge 30 proは筆者も試用しレビュー記事を執筆しました。当時のハイエンドSoCであるSnapdragon 8 Gen 1を搭載する機種としては手頃な価格で、カメラ性能や独自要素に注目すると他社のハイエンドスマートフォンと比べてやや地味ではあるものの、堅実な作りは好印象でコストパフォーマンスも高い機種でした。

今年も「pro」モデルの国内投入を望んでいた方はがっかりされたかもしれませんが、今回発売された「無印」モデルのedge 40もスルーするには惜しい魅力的な端末です。まずはスペック表をご覧ください。

  • OS:Android 13
  • SoC:MediaTek Dimensity 8020
  • メモリ(RAM):8GB(LPDDR4X)
  • ストレージ(ROM):256GB(UFS 3.1)
  • ディスプレイ:6.55インチ pOLED 2,400×1,080(フルHD+)144Hz/DCI-P3/HDR10+対応
  • アウトカメラ:約5,000万画素 F1.4(広角)+約1,300万画素 F2.2(超広角/マクロ)
  • インカメラ:約3,200万画素 F2.4
  • 対応バンド(5G):n1/n3/n28/n41/n77/n78
  • 対応バンド(4G):1/2/3/4/7/8/11/12/17/18/19/26/28/38/39/40/41/42
  • SIM:nanoSIM+eSIM(DSDV対応)
  • Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax(2.4GHz/5GHz)
  • Bluetooth:5.2
  • バッテリー:4,400mAh
  • 有線充電:TurboPower 最大68W(ACアダプタ付属)
  • 無線充電:最大15W
  • 外部端子:USB Type-C(USB 2.0)
  • 防水/防塵:IPX8/IP6X
  • 生体認証:画面内指紋認証、顔認証
  • その他の機能:NFC、FeliCa対応
  • サイズ:約158.43×71.99×7.58mm(イクリプスブラック)/7.49mm(ルナブルー)
  • 重量:約171g(イクリプスブラック)/約167g(ルナブルー)
  • 価格(直販サイト):64,800円

ざっくり言えばミドルレンジとハイエンドのあいだの「ちょっと良い」機種といったポジションで、売れ筋の価格帯に1~2万円足したぐらいで手に入りつつも満足度の高い内容となっています。

注目のポイントとしては、昨年のミドルレンジモデル「moto g52j 5G」を皮切りに本腰を入れ始めた「日本仕様」がワンランク上の本機種にも及んでおり、IP68レベルのしっかりした防水・防塵、そしてFeliCa/おサイフケータイ機能が加わりました。

ディスプレイやスピーカーといった各種コンテンツを楽しむ上で大きく影響する部分のクオリティ、画面内指紋認証などの快適性の上がる機能、そして昨今のスマートフォンでは軽視されがちな「薄さ」「軽さ」にも注目です。

  • 6.55インチと大きめのディスプレイを備えながら、本体重量は約167g~171gと軽い

    6.55インチと大きめのディスプレイを備えながら、本体重量は約167g~171gと軽い

  • 付属ケースは恒例のTPUケースではなく、後述の本体形状の都合か、ハードタイプのクリアケースとなっている

    付属ケースは恒例のTPUケースではなく、後述の本体形状の都合か、ハードタイプのクリアケースとなっている

  • パッケージは今世代からプラスチックフリーの環境配慮型に切り替わる

    パッケージは今世代からプラスチックフリーの環境配慮型に切り替わる

薄くて軽い!上質感のあるデザインも魅力

最近の中~上位のスマートフォンは、大画面化やSoCの高性能化に伴うバッテリーや放熱システムの大型化、そして各社がこぞって力を入れているカメラ性能の強化などを背景に、年々大きく重いものが増えています。

しかし、そもそも携帯電話の歴史を振り返れば、肩掛けの大きなショルダーフォンの時代から始まって基本的には時代が進むほど小型化してきたものです。スマートフォンでゲームをしない人や過剰なカメラ機能を求めていない人、言い換えればコミュニケーションツールや携帯情報端末としての根源的な役割を求めている人にとっては置き去りにされている印象もあるのではないでしょうか。

  • (参考)edge 40/razr 40 ultraの発表会場に展示されていた「RAZR IS12M」(2012年発売)

    (参考)edge 40/razr 40 ultraの発表会場に展示されていた「RAZR IS12M」(2012年発売)。カメラ部分を残して他を薄さ7.1mmまで削った独特のフォルムと、ケブラー素材を用いたバックパネルが今見ても個性的

その点においては、実はモトローラはこだわり派のユーザーのお眼鏡にもかなう「中の上」以上のクラスで薄型端末や小型端末などハンドリングの良い機種を継続的にラインナップしている数少ないメーカーのひとつ。古くは折りたたみになる前のスマートフォン版RAZRやGoogle傘下時代のMoto X、2016年当時世界最薄5.2mmのMoto Z、そして最近ではmotorola edgeファミリーの非ハイエンド機がそれにあたります。

edge 20は厚さ6.99mm/重さ163g、edge 30(日本未発売)は厚さ6.8mm/重さ155gで、今回のedge 40は厚さ7.49mm~7.58mm/重さ167g~171g。数値的には若干退化したようにも見えますが、防水レベルを上げてバッテリーも4,400mAhに増やしていることを考慮するとかなり健闘しています。

  • 昨今の大画面スマートフォンとしては非常に持ちやすく、片手操作が多い人も快適に使える

    昨今の大画面スマートフォンとしては非常に持ちやすく、片手操作が多い人も快適に使える

個人的な話をするとスマートフォンはSNSのチェックやWebブラウジングに使うことが大半で、片手操作をする場面が多いです。昔はコンパクトスマホを好んでいたのですが、ある時に「小ぶりでごろっとした機種よりも、大画面で薄くて軽い機種のほうが実は操作性が良いし表示量も増やせて捗る」と気付いて以来、この手の機種は大好物。先々代のedge 20も個人的に購入して使っていました。

そんな元edge 20ユーザーの目からすれば数値的に劣るはずのedge 40の薄さ・軽さには驚かなさそうなものですが、発表会場でスペックを見る前に実機を手に取った第一印象としては、むしろedge 20よりも軽快だと感じました。

その秘密は形状にあり、フラットな形状だったedge 20/30に対し、edge 40は前面と背面を表裏対称にカーブさせて極細のミッドフレームで繋ぐという、側面を限界まで減らしたフォルムになっているのです。これによって数値以上に体感的には薄く感じられ、しっかりと握れて遠くまで指が届くようになっています。

  • edge 40の厚さは7.49~7.58mm。7mmを切っていたedge 20/30よりは若干厚いが、手に取ってみると負けず劣らずの薄さに感じる

    edge 40の厚さは7.49~7.58mm。7mmを切っていたedge 20/30よりは若干厚いが、手に取ってみると負けず劣らずの薄さに感じる

  • 持ちやすさの秘訣は単純な薄さ・軽さだけでなく、前面・背面がカーブしており、より薄く感じやすい本体形状にもある

    持ちやすさの秘訣は単純な薄さ・軽さだけでなく、前面・背面がカーブしており、より薄く感じやすい本体形状にもある

薄型・軽量路線で徹底的にそぎ落とされた端末ではどうしても高級感や質感といった点では見劣りするものになりがちですが、6万円台の「ちょっと良い」スマホとして納得の行く仕上がりである点も評価できます。

日本版のedge 40は「ルナブルー」「イクリプスブラック」の2色展開で、外装の一部の材質が違います。軽さを突き詰めるならルナブルーなのですが、ここはあえてイクリプスブラックをおすすめしたいところ。ブラックの背面にはヴィーガンレザーが使われており、見た目も手触りも軽量端末とは思えないほど高級感のある仕上がりで、光沢を抑えたメタルフレームと合わせて落ち着いた雰囲気にまとめられています。

  • カラーバリエーションはルナブルーとイクリプスブラックの2色

    カラーバリエーションはルナブルーとイクリプスブラックの2色。背面の材質が異なり、ルナブルーはアクリル、イクリプスブラックにはヴィーガンレザーが採用されている。フレームはどちらもサンドブラスト加工を施したアルミ素材

ミドルハイの機種としては物足りない部分も

ルックスや軽さというアドバンテージにはミドルレンジ+αの値段を出す価値を感じられるものの、一方で性能面ではやや物足りない印象も受けました。

まずSoCが前世代までのQualcommからMediaTekの「Dimensity 8020」に変更されており、単純にベンチマークスコアで見ればそう低くはないものの、実用環境では「YouTube Premiumの小窓表示で動画を観ながらSNSのタイムラインをチェックする」程度の負荷でスクロールのカクつきが見られ、主にグラフィック性能の面であまり余裕はなさそうです。さらに言えば、ゲームアプリをよく遊ぶ方には各タイトルのSoC最適化の問題も考えるとなおさらパフォーマンス的におすすめしにくいでしょう。

  • Geekbench 6のベンチマークスコア

    Geekbench 6のベンチマークスコア

  • 3DMark(Wild Life)のベンチマークスコア

    3DMark(Wild Life)のベンチマークスコア

前モデルにあたるmotorola edge 30は日本未発売なので比較できませんが、edge 30と同じSoC(Snapdragon 778G+)を搭載しているNothing Phone (1)を試用した経験では日常利用ではハイエンド機に迫る快適な動作と感じていたため、処理性能では前モデルからおそらく退化している点は残念です。

ただ、内部スペースの限られた薄型端末ということで懸念される発熱や電池持ちに関しては善戦しています。4,400mAhバッテリーで駆動時間は十分ですし、最大68Wの急速充電のおかげで朝の支度をしている間に充電を済ませられました。ベンチマークテストで負荷をかけている時にはほんのりと発熱を感じられましたが、通常の利用中は特に縦持ちならパーツ配置的に問題視するほど熱いと感じる場面は少ないはずです。

  • 独自仕様でフルスペックを引き出すには純正充電器(付属)との組み合わせに限られる点は惜しいが、最大68Wの急速充電はとても頼りになる

    独自仕様でフルスペックを引き出すには純正充電器(付属)との組み合わせに限られる点は惜しいが、最大68Wの急速充電はとても頼りになる

メインカメラは約5,000万画素のクアッドピクセル/PDAF対応センサーにF1.4のレンズを組み合わせ、光学手ブレ補正も完備。このほかに、約1,300万画素F2.2の超広角/マクロ兼用カメラと約3,200万画素 F2.4のフロントカメラを備えます。

写りの傾向としては明るく鮮やかで、やや発色のクセが強め。採用センサーは非公表ですが1/1.5型程度の大きめのものと思われ、明るいレンズとの組み合わせで「ボケすぎる」傾向から料理などのテーブルフォトは苦戦気味。また、スペックの割にディテールの甘さも気になるところ。画像処理でもうひと工夫あれば化けそうです。

  • メインの広角カメラは約5,000万画素 F1.4。もうひとつのカメラは超広角/マクロ兼用で約1,300万画素 F2.2

    メインの広角カメラは約5,000万画素 F1.4。もうひとつのカメラは超広角/マクロ兼用で約1,300万画素 F2.2

  • メインカメラで撮影

    メインカメラで撮影

  • 同地点から超広角カメラで撮影

    同地点から超広角カメラで撮影

  • オートHDRが適用された例

    オートHDRが適用された例

  • 室内で料理を撮影

    室内で料理を撮影。なお、作例は4枚とも参考のためフルオートで露出やホワイトバランスに手を加えず、掲載時にリサイズのみ行っている

気に入った点としては、最近のモトローラ製スマートフォンは価格帯を問わずスピーカーのクオリティが高いものが多く、本機種のDolby Atmos対応ステレオスピーカーも例外ではありません。広色域・高リフレッシュレート対応の有機ELディスプレイと合わせて、エンタメ性能の高さは動画コンテンツ全盛の時代には欠かせない要素として評価できるでしょう。

  • Dolby Atmos対応のステレオスピーカーを搭載

    Dolby Atmos対応のステレオスピーカーを搭載

また、edge 40にはモトローラのスマートフォンのなかでも上位寄りの機種のみで利用できる「Ready For」というデスクトップモードが搭載されています。外部端子がUSB 2.0相当のため有線モードには対応しませんが、Miracast対応のテレビなどに無線で映像を出力してパソコンライクなUIで作業できます。

もうひとつの使い方として、Windows 10以上のパソコンに専用クライアント「Ready For PC」をインストールしておけば、パソコンでの作業中に画面上でスマートフォンのアプリを開いて確認したり、手軽にデバイス間でファイルをやり取りすることも可能です。この手のデスクトップモードはハイエンドスマートフォンでは見慣れた機能ですが、6万円台でこういった使い方ができる機種は希少です。

  • やや物足りない部分もあるが、デザインやサイズ感、機能で選ぶ価値はある

    やや物足りない部分もあるが、デザインやサイズ感、機能で選ぶ価値はある

総合的な評価としては、motorola edge 40はSoCやカメラ性能に若干の不満は残るものの、機能面ではやはり売れ筋のミドルレンジモデルよりは一歩進んだ満足度の高い内容となっていますし、扱いやすい薄型軽量ボディや質感の高さなど、「ハイエンドの価格までは出せないけれど、ちょっと良い機種が欲しい」というニーズを満たせる機種です。moto g52j 5Gを皮切りとした「日本仕様」の取り組みが上位機種にも波及しつつあるのは良い流れで、次世代ではぜひ折りたたみのrazrでもFeliCa対応を期待したいところです。