携帯PCゲームの戦国時代だ。ROG ALLY、Steam Deck、ONEXPLAYER、GPD WINなど多彩なシリーズが発売されており、興味ある人にとってはどれが自分にマッチするのか迷ってしまうだろう。そこで、性能と画面の見やすさを重視するなら注目したいのがAOKZOEの「AOKZOE A1 Pro」だ。実際のゲームにおける性能、コントローラーの使いやすさも含めレビューをお届けしたい。

  • AOKZOEの「AOKZOE A1 Pro」。UMPC専門店「ハイビーム」が直販しており、メモリ32GB/SSD 1TB版が149,800円、メモリ32GB/SSD 2TB版が159,800円だ。カラーは写真のクォンタムブルーとルナホワイトの2色がある

「AOKZOE A1 Pro」は、PC本体、ディスプレイ、コントローラーが一体化した携帯PCゲーム機だ。ディスプレイは8型のWUXGA(1,920×1,200ドット)で10点マルチタッチに対応する。本体のサイズは幅285mm×奥行き125mm×高さ21~40mmで重量が約729gだ。Nintendo Switchのディスプレイ6.2型の1,280×720ドットで本体サイズが幅239mm×奥行き102mm×高さ13.9~28.4mmで重量が約398g(いずれもJoy-Con取り付け時)に比べると大きい。

  • Nintendo Switchとの比較。一回り大きいのが分かる

  • ディスプレイは8型のWUXGAで携帯PCゲーム機としては大きめ。IPSパネルを採用しており、視野角も広い

  • 正面左側にはアナログスティックと十字キー、バックキー(ゲームなどで前の画面に戻るなどに使用)、ホームキー(デスクトップとゲームの切り替え)を備える

  • 正面右側にはボタン(Xbox風レイアウト)、アナログスティック、スタートキー、キーボードキー(スクリーンキーボード起動)、ターボキー(管理アプリのAOKZOEプレイヤーセンター起動)が用意されている

  • リフレッシュレートは60Hzと一般的

  • 上部には電源ボタン、音量ボタン、ヘッドセット端子、USB 4(DisplayPort出力、電源入力対応)、USB 3.0、LB/LTボタン、RB/RTボタンを備える

  • 下部にはUSB 3.1 Type-C、microSDカードスロットを搭載

  • 背面にはスタンドと通気孔が備わっている

スペックで一番注目したいのは、搭載しているAPU(CPUとGPUを統合したもの)の「Ryzen 7 7840U」だ。CPUとしてはAMD最新世代のZen 4アーキテクチャを採用した8コア16スレッドで、最大5.1GHz駆動とモバイル向きとしてはかなり高性能なもの。GPUもAMD最新世代のRDNA 3アーキテクチャを採用したRadeon 780Mが組み合わされている。

  • CPU-Zでの表示。Ryzen 7 7840Uは8コア16スレッドとモバイル向けとしては高性能

  • GPU-Zでの表示。Radeon 780MはCU(Compute Unit)を12基搭載する。これはCPU内蔵タイプとしてはかなりの多さ

APU以外のスペックはメモリがLPDDR5X-7500の32GB、ストレージは2TBのSSD(PCI Express 4.0 x4接続)、ネットワークはWi-Fi 6E対応だ。また、SSDが1TBのモデルも用意されている。

PCとして見ても充実の基本性能

ここからは気になる性能をチェックしよう。テストを始める前に、本機は「AOKZOEプレイヤーセンター」アプリでTDP設定やCPUパフォーマンスの設定が行える。ここでは、性能を28W、CPU最大ステータスを100%でCPUブーストON、ファン回転数も最大ともっともパフォーマンスが出る設定でテストを実行した。

  • 「AOKZOEプレイヤーセンター」アプリでCPUパフォーマンスやファンの回転数、解像度、輝度など細かな設定が行える

PCの基本性能を測定する「PCMark 10」、CGレンダリングでCPUパワーを測定する「CINEBENCH R23」、ストレージのデータ転送速度を測る「CrystalDiskMark」を試そう。

  • PCMark 10の結果

  • CINEBENCH R23の結果

  • CrystalDiskMark 8.0.4cの結果

PCMark 10は、Web会議/Webブラウザ/アプリ起動の“Essentials”で4,100以上、表計算/文書作成の“Productivity”で4,500以上、写真や映像編集“Digital Content Creation”で3,450以上が快適度の目安となっているが、すべて大幅に上回った。とくにEssentialsとDigital Content Creationは目安の2倍以上のスコアと、普段使いのPCとしても十分な性能を持っているのが分かる。外部ディスプレイやキーボード、マウスと接続して仕事で使うのもアリではないだろうか。

ストレージはシーケンシャルリードが7,046.53MB/s、シーケンシャルライトが6,249.17MB/sとPCI Express 4.0 x4接続のSSDとして優秀と言える速度。かなり高速だ。ゲームのロードで不満を感じることはないだろう。

実ゲームはどこまで快適に動作するか。5タイトルでテスト

ここからはゲーム性能をチェックしよう。実ゲームの前に3D性能を測る定番ベンチマークの「3DMark」を実行する。このテストに関してはROG Allyの上位モデル(Ryzen Z1 Extreme搭載版)のスコアも掲載する。

  • 3DMark

ROG Allyと非常に近いスコアだ。ほぼ同等の性能を見てよいだろう。ROG Allyの上位モデルは110,000円前後、試用した本機は直販で149,800円。ディスプレイのサイズやメモリやストレージの容量では本機のほうが上回っているため、価格という側面で評価しても非常によい勝負になっていると言える。

さて実ゲームに移ろう。今回は1,920×1,200ドットと1,280×800ドットと2種類の解像度でフレームレートを測定することにした。動作モードは基本性能テスト時と同様だ。

まずは人気FPSの「Apex Legends」から。トレーニングモードで一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測している。画質は中程度に設定した。

  • Apex Legends

画質中程度なら1,920×1,200ドットでも平均73.3fpsと快適にプレイできるフレームレートが出ている。ディスプレイのリフレッシュレートは60Hzなので、平均60fps以上出ていれば快適という判断でよいだろう。

続いて、人気格闘ゲーム「ストリートファイター6」を試そう。CPU同士の対戦を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。画質はLOWESTとした。このゲームは解像度として1,920×1,200ドットや1,280×800ドットが選べなかったので、1,920×1,080ドットと1,280×720ドットでテストしている。

  • ストリートファイター6

このゲームは最大120fpsまで設定でできるが対戦時は最大60fpsまで。1,920×1,080ドット(フルHD)でも平均59.5fpsとほぼ上限に到達しており、快適に遊べる。

続いて、オープンワールドアクションRPGの「エルデンリング」を実行する。リムグレイブ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定した。画質は低設定でレイトレーシングはオフにしている。

  • エルデンリング

画質設定を低まで下げても描画負荷は重い。プレイするなら、カク付きが少なくなる1,280×800ドットがオススメだ。

続いて、ロボットアクション「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」をテストする。移設型砲台破壊ミッションの一定コースを60秒移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定した。

  • ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON

このゲームは最大120fpsまで設定できる。1,920×1,200ドットでもプレイは可能だが、快適度は1,280×800ドットのほうが高い。

描画負荷の高いAAA級ゲームではどうだろう。ここでは「ホグワーツ・レガシー」と「サイバーパンク2077」を用意した。ホグワーツ・レガシーは寮内の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定、サイバーパンク2077は内蔵ベンチマーク機能でフレームレートを測定した。どちらも画質プリセットは一番下の「低」にしている。

  • ホグワーツ・レガシー

  • サイバーパンク2077

ホグワーツ・レガシーは画質が低設定なら1,920×1,200ドットでも平均58.9fpsと問題なくプレイ可能だ。サイバーパンク2077はとくに描画負荷が重いPCゲームだけあってレイトレーシングを使っていない画質低設定でも1,920×1,200ドットではなんとかプレイできるレベル。平均60fps以上でプレイしたいなら、1,280×800ドットまで下げる必要がある。

駆動時間はゲームと一般用途で大きく変わる

バッテリー駆動時間もチェックしておこう。ゲームはTDP 15W設定で約5時間、ビデオ再生なら7~9時間としている。ここではPCMark 10のBatteryテストからゲームを実行する「Gaming」と一般的な処理を実行する「Modern Office」を試した。CPUのTDPはほかのテストと同じく28Wにしている。

  • PCMark 10 Batteryの「Gaming」の結果

  • PCMark 10 Batteryの「Modern Office」の結果

Gaminはバッテリーが100%から5%まで、Modern Officeは100%から4%までの動作だ。Gamingでは1時間23分、Modern Officeでは7時間50分となった。PCMark 10のBatteryテストは負荷は高めだが、バッテリー駆動でゲームの長時間プレイは難しそうだ。プレイ時間を延ばすならTDP設定は下げたほうがよいだろう(その分、性能も落ちてしまうが)。その一方で、一般的な用途なら十分な駆動時間と言える。動画を見たり、電子書籍を読んだりといった用途にもよさそうだ。

コントローラーの使い勝手は良好

ホームキーとキーボードキーの同時押しでタスクマネージャが起動、ホームキーとターボキーの同時押しでスクリーンショットを撮影、ホームキーと音量のマイナスキーでRGBライト効果の切り替えとボタンの組み合わせでさまざまなショートカットが用意されている。

  • 正面の右下、左下にはRGBライトを内蔵。ショートカットで効果の切り替えができる。もちろんオフも可能だ

  • 持ったところ。裏面にグリップがあるため本体をしっかりホールドできるのがナイス。安心してプレイできる

アナログスティックには、ホール効果センサーを採用し、触れてなくても勝手に動いてしまうドリフト現象を防ぐとしている。ゲームプレイにおいて、アナログスティックの精度は非常に重要だが、筆者がApex Legendsをプレイする限り、スムーズな視点移動ができ快適だった。十字キーとボタンの反応も上々だ。ボタンはやや柔らかめの押し心地だが、ストリートファイター6でもスムーズに必殺技を出せて、音ゲーの初音ミク Project DIVA MEGA39's+もズレを感じず快適にプレイできた。

ここまでがAOKZOE A1 Proのレビューだ。重量は重めだが、8型のディスプレイはゲームだけではなく動画の視聴にも快適だ。このサイズなら、Windowsの画面も見やすく、キーボードとマウスを接続して一般的な用途にも使えそうと感じた。メモリは32GBと十分で、ストレージ容量にも余裕があるので汎用性の高さは携帯PCゲームの中でも上位クラスと言ってよいだろう。インタフェースも充実しており、複数の周辺機器を接続しやすいのも強み。ゲームだけではなく、PCとしても使いたい人にもオススメだ。