シャープの「RACTIVE Air」シリーズは、軽量かつ動作時の低騒音性にもこだわった高機能なコードレススティッククリーナー。そのRACTIVE Airから9月7日、シリーズ初となる紙パック式モデル「RACTIVE Air EC-KR1」(以下、EC-KR1)が発売されます。

高機能コードレススティック掃除機のほとんどはサイクロン式ですが、昨年(2022年)から「紙パック式の高機能コードレススティック掃除機」の注目度が上昇中。紙パック式のメリットとシャープならではの特徴を、プレス向け発表会でEC-KR1の実機をチェックしてきました。

  • 「RACTIVE Air EC-KR1」。価格はオープン、推定市場価格は77,000円前後。カラーはブラックのみ

  • シャープ初の紙パック式コードレススティッククリーナー、EC-KR1の本体サイズは幅209×奥行き251×高さ957mm、重さは1.3kg

いま改めて注目されている紙パック式の掃除機

現在の主流であるサイクロン式掃除機の大きなメリットは、紙パックのような消耗品がいらずランニングコストがかからないこと。一方で、「ゴミ捨てでホコリが舞う」「ダストカップの掃除が面倒」「フィルター掃除が手間」といったデメリットも。そんなこともあってか、紙パック式コードレススティック掃除機の良さが見直されています。紙パック式なら、パックのままゴミ捨てができるため、手が汚れずゴミを見ることもありません。また、ゴミと掃除機が直接は触れないので、掃除機本体が汚れにくいことも魅力です。

  • EC-KR1用のシャープ純正 抗菌3層紙パック「EC-330PN」。1パック5枚入りで希望小売価格は1,210円。交換目安は約1.5カ月です

紙パック式にもデメリットはあります。シャープが実施したアンケートでは、消耗品コスト以外にも「紙パックを外すときにゴミが落ちることがある」「紙パック収納部が汚れる」「ゴミ捨て時に紙パックに触れるのが嫌」などの不満がユーザーから寄せられました。そこでEC-KR1は、業界初(シャープ調べ)の「パックinカップ構造」を採用。サイクロン式のようにダストカップ部分を取り外せる構造を指します。

  • ダストカップ部が本体から分離できる「パックinカップ構造」。本体からワンタッチでダストカップを脱着できます。使い勝手はなかなかのもの

  • 手の上で作業できるので、紙パックの装着も手軽

ダストカップを取り外せるメリットは複数あります。まず、ダストカップを取り外すことで、ゴミ箱の上でゴミ捨て作業ができます。EC-KR1のダストカップにある「ゴミ捨て」ボタンを押すと、紙パックに触れずゴミを捨てられるのです。手が汚れないうえ、紙パックの口からゴミがこぼれて床を汚すこともありません。

また、一般的な紙パック式の掃除機は、紙パック収納部が本体と一体化しているため、紙パック収納部にホコリがついても「丸洗い」できません。パックinカップ構造のEC-KR1は、ダストカップ部が汚れてもカップごと水洗い可能です。

【動画】RACTIVE Air EC-KR1の紙パックゴミ捨て

風が流れる経路を確保し、吸引力の低下を抑制

紙パックにゴミが溜まってくると、掃除機の吸引力が落ちる――。これも紙パック式の掃除機でよく見られるデメリットのひとつです。理由は、紙パックがゴミで膨らむことによって、本体内部で「風の通り道(ヘッドから排気口へ抜ける)」がふさがれるから。

構造上の問題点を改善するため、EC-KR1は紙パックの周辺(上下左右)に空気の流路を確保しました。これにより、紙パックが満杯になっても風が通り、吸引力の低下を抑えます。

  • 流路が見やすいように、透明の樹脂で作られたデモ用ダストカップ。満タンの紙パックをセットしていますが、パックとダストカップの間に風が通る隙間が作られています

発表会では、吸引力だけで重たいボーリングの球を持ち上げるデモンストレーションも。デモの条件と順序は以下の3つです。

  • 空の紙パックをセットして吸引
  • 約1カ月半の使用に相当するゴミが入った満杯の紙パックをセットして吸引
  • 実験的に流路をふさいだダストカップを使って、満杯の紙パックをセットして吸引

【動画】RACTIVE Air EC-KR1の吸引力比較(大きな音声が流れます。ご注意ください)

風の通り道を確保したダストカップの場合、ゴミで一杯になった紙パックでもボーリング球が上がっていくスピードはそこまで落ちていません。一方、同じ紙パックを使用しても、流路をふさいだダストカップでは目に見えて遅くなりました。流路を作ることによる、吸引力の違いは明らかです。

低騒音化技術や新スグトル構造などRACTIVE Airならではの便利機能

ここまでは、EC-KR1の目玉機能「紙パック式」「パックinカップ構造」に注目しました。EC-KR1は紙パック式であることを除けば、基本的にシャープのRACTIVE Air EC-AR9とほぼ同じ仕様です。

EC-AR9は2023年8月24日発売の製品で、RACTIVE Airシリーズの中でも軽量タイプに分類されます。軽量タイプながら、RACTIVE Airシリーズでおなじみの「低騒音化技術」を導入しており、今回の紙パック式EC-KR1もこの低騒音化技術を備えています。実際に掃除中の音を聞き比べてみると、低騒音化技術を持たない掃除機から聞こえてくる「キィィィン……!」という耳障りな音が減っていることがわかります。

  • EC-KR1の展示用カットモデル。音を遮断するため、モーターを遮音カバーで囲っています。ヘッドに防振材などを配置して駆動音を減らす工夫も

【動画】RACTIVE Air EC-KR1の運転音と、同じく2023年モデルのEC-AR8で運転音を比較
(大きな音声が流れます。ご注意ください)

このほか、立ったまま腰をかがめずにヘッドを着脱できる「新スグトル構造」や、壁ぎわのゴミを吸いやすくする「端までブラシ(片側のみ)」、ヘッドのブラシに髪の毛などが絡みにくい「からみにく~いブラシ」など、RACTIVE Airシリーズならではの機能を搭載しています。

  • 手元の操作でヘッドや延長パイプを外せる「新スグトル構造」。外したヘッドやパイプが自立するため、装着も立ったままスムーズに

  • ヘッドの片側(本体を持ったときに上から見て右側)は端までブラシを配置。壁ギリギリのゴミも吸い取れる「端までブラシ」です。また、ブラシには高密度で縮れた毛を用いており、髪の毛などの絡まりを防ぎます(からみにく~いブラシ)

各社のコードレススティック掃除機、特にプレミアムモデルではまだまだ少ない紙パック式。EC-KR1は、2022年に日立グローバルライフソリューションズが発売した「かるパックスティック PKV-BK3K」に続く注目製品となりそうです。

EC-KR1は既存のコードレススティック掃除機を紙パック式にしただけでなく、ダストカップが分離する「パックinカップ構造」にした点が特徴的。独特の視点で使い勝手をブラッシュアップしたシャープらしい製品だと感じました。

日立に続いてシャープも紙パック式の高機能コードレススティック掃除機を発売したことで、今後は紙パック式の製品が増えるかもしれません。「ゴミを捨てやすい紙パック式が欲しいけど、いいコードレススティック掃除機がない」と思っていた人にとって、EC-KR1は有力な選択肢になるはずです。