グループウェアのサポート終了を機に、Google Workspaceに移行

東北放送(tbc)は、宮城県を放送対象地域とするテレビ・ラジオ兼営の放送局だ。TBS系列のテレビとJRN・NRN系列のラジオを運営し、地域に根ざした情報発信を行っている。また同社は、「はやく、ただしく、おもしろく。」をスローガンに、報道・情報番組・スポーツ中継など幅広いコンテンツを提供し、地元の文化や経済にも貢献している。

  • 写真:東北放送が制作するテレビ番組

    東北放送が制作するテレビ番組

同社では、サイボウズのオンプレミス型のグループウェア「サイボウズ Office」を2000年3月に導入し、メール、カレンダー、掲示板・回覧板、アドレス帳、会議室などの施設予約、ドキュメント管理、在籍確認などで利用していた。しかし、同製品のサポート終了期限が2024年8月末に迫っていたため、2023年の夏頃から、代替環境への移行を検討していたという。

移行にあたってはコストや使い勝手、Office 365との比較、DBアプリの移行などを検討したが、同社は最終的に、サテライトオフィスが提供するGoogle Workspaceを選択した。もっとも大きな理由は、TBSの系列局との情報共有がスムーズに行える点だという。

「系列のなかで全国レベル、あるいは地方ブロック単位で会議があり、その資料の共有は、Google Workspaceに置き換わっていました。当社だけ別サービスを使うとなると、資料や予定の共有に手間がかかるため、現場からは早くGoogle Workspaceを導入してほしいといわれていました」と語るのは、同社で DXを推進する立場の東北放送株式会社 テレビ局 業務推進部 専任部長 兼 DX推進部 専任部長 吉田信也氏だ。

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    東北放送株式会社 テレビ局 業務推進部 専任部長 兼 DX推進部 専任部長 吉田信也氏

これまでの機能を継続するために有効だったアドオンツール

Google Workspaceのサービス・パートナーとしてサテライトオフィスを選んだのは、アドオンツールの存在が大きかったという。

東北放送はサテライトオフィスが提供するアドオンツールを20種類以上も導入しており、Google Workspaceだけでは実現できない端末ごとのログイン制御に加え、組織単位でのカレンダー表示、組織共有のアドレス帳、ワークフロー、社内掲示板・回覧板、ポータルサイトなどを実現するソリューションも使用している。なお、サテライトオフィスは、これまで77,000社以上にGoogle Workspaceを導入しているが、その90%以上のユーザーがアドオンツールを利用しているようだ。

  • 写真:サテライトオフィスが提供するアドオンツール

    サテライトオフィスが提供するアドオンツール

「今までの使い勝手や見た目を変えないで移行しようとした場合、サテライトオフィスさんのアドオンツールを使えば、サイボウズで提供されていた機能がそのまま使え、Google環境で統一できるため、サテライトオフィスさんにお願いしました。当初、Googleサイトを用いたグループウェア機能の実装も検討しましたが、スキル、マンパワー、所要時間などの制約から、十分な機能を備えたアドオンツールを導入することにしました」(吉田氏)

東北放送は2023年12月、サテライトオフィスと正式に契約。翌年2月から移行作業をスタートした。そして、4月から従来利用していた社外のメールサービスも含めGoogle Workspace環境に全面的に移行した。

新たな環境では、会社貸与PCからのアクセスを基本としつつ、アドオンツールのシングルサインオンとセキュリティプロファイルにより、会社貸与・個人利用を問わずスマートフォンからのアクセスも許可している。

もっとも懸念していたメールサーバーの移行も、トラブルなくスムーズに移行できたという。

「メールアドレスは業務用だけでなく、番組用もあります。移行がうまくいかないと視聴者からのメールが受信できない恐れもあり気掛かりでしたが、トラブルなくスムーズに移行できたと思います」(吉田氏)

移行期間中は、旧環境と新環境を1カ月程度、並行で運用。その後は、機能ごとに締め切りを設け、徐々に新環境にシフトしていったという。

「サテライトオフィスの営業の方にいろいろ相談しながら、パラレルで動かす場合は最長でも1カ月間で、それ以上はお勧めしませんというアドバイスをもらいました。2月は新旧の環境を使えるようにして、その後は機能ごとに具体的な締め切り日を設け、そこで閉めたものを新環境に移行していく作業を行いました。社内ポータルに関しても、私が合間を見ながら移行作業を行い、4月1日の段階で使えるように準備していきました」(吉田氏)

移行メリットはセキュリティポリシーの強化やドキュメント共有のしやすさ

吉田氏は、Google Workspaceに移行したメリットとして、セキュリティポリシーの強化やドキュメント共有のしやすさをあげた。

「厳格なアクセス制限で強固なセキュリティを確立し、情報漏洩と不正侵入への不安を解消しました。これまでは、自宅のPCから会社のメールサーバーにアクセスすることを許可していましたし、スマホでメールをチェックしたい場合は、転送という形式で認めていました。しかし、今回Google環境に移行するにあたって、メールを受信できるのは会社の端末だけにしました。モバイルについても、クライアント証明書が入っている端末だけにしています。個人のモバイル端末から直接チェックしようとしても、ログインできません。あくまでサテライトオフィス・セキュリティーブラウザ経由でしか使えないようにしており、管理するのがシンプルになり、わかりやすくなりました。また、ドキュメントやスプレッドシート、スライドなどもスムーズに作成できています。アプリ間の連携も容易になり、作業も効率的になりました。これまでExcelやWordは、更新するたびに日付を付加してファイル名を変えたものをため込んでいましたが、今後は1つのドキュメントやスプレッドシートを共有すれば済みます。社員の方にもGoogleのメリットをより身近に感じてもらえるのではないかと思っています」(吉田氏)

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今後はペーパーレスや生成AIの活用を推進

同社では、Google Workspaceの導入を機に、業務効率化も推進しようとしている。その1つがアドオンツールであるワークフローの活用だ。

「各種申請をワークフロー化したことで、業務効率化に繋がったと思っています。サテライトオフィスさんのワークフローは、承認ルートの条件を細かく設定できる点が評価できます」(吉田氏)

また、今後はペーパーレス化にも積極的に取り組んでいくという。

「放送局は、紙の文化がなかなか抜けません。TBSはニュース原稿をタブレットに置き換えていますが、弊社ではアナウンサーが紙の原稿にペンを入れながら読みやすいように整理していますし、それ以外にもいろいろな申請、報告が紙で行われています。そんな状況なので、DX推進部内では新年度に向けて、紙を使わずにPCやタブレットの画面だけで完結できないかと考えています」(吉田氏)

現在、役員会の資料はタブレットを利用する方法に移行しており、今後、徐々にペーパーレスを推進していく予定だ。

また、建物の入退出記録と独自の勤怠管理システムを連携させていくことも検討している。現在使っている勤怠管理システムの出退勤は、手で入力する形式になっているが、本社の建物では何時に入った、出たというのが記録として残る。その情報をもとにサテライトオフィスのアドオンのツールを利用して、独自の勤怠管理システムと連携させていこうというものだ。

さらに、Googleが開発した生成AI「Gemini」にも期待しているという。

「私は普段、DX推進部以外にコマーシャルや通信販売番組の内容を考査する仕事も担当しているのですが、各種法律がきちんと守られているかどうかをチェックするのに「Gemini」が役立っています。まだ精度は粗いですが、かなり効率化できています。また、さまざまな部局からなるプロジェクトチームでもGeminiの使い方を検討しているようです」(吉田氏)

今後は、系列局の考査担当と情報共有しながら精度を高め、実運用できる仕組みの構築を目指していくと展望を語った。

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