【経済産業省】25年版「中小企業白書」 「経営力」の重要性を提唱

経済産業省は2025年版の中小企業白書をまとめた。円安・物価高の継続や、構造的な人手不足などで中小企業を取り巻く環境は依然として厳しく、「従来のやり方では現状維持も困難だ」と説明。企業の成長や持続可能性向上に寄与する「経営力」の重要性を提唱している。

 白書は、「金利のある世界」が約30年ぶりに到来したことに言及。中小企業は大企業と比較して有利子資産の保有量が少ない一方、借入金への依存度が高いため、「金利上昇は大きな利益下押しリスクになる」と警鐘を鳴らした。

 また、人手不足を踏まえ、人材確保のために業績改善を伴わない賃上げに踏み切る中小企業が増えている現状も紹介。これらの外部環境の変化を受け、「コストカット戦略は限界を迎えている」として、適切な価格設定などを進める経営への転換を訴えた。   

 そのためのカギを握るのが「経営力」だ。白書は具体例として、経営戦略の策定力、経営資源のマネジメント力、経営者の成長的志向、従業員にとって健全な環境を整備する能力などを挙げた。その上で、「個人特性面」「戦略策定面」「組織人材面」の3つの要素に分け、経営力について分析している。

 個人特性面では、経営者が異業種・広域のネットワークに参加することの意義を強調。他の経営者と交流することで、成長意欲が喚起されたり、新たなアイデアを獲得できたりすることを効果に挙げた。また、経営者自身がリスキリングに取り組めば、従業員にも意識変革が浸透し、付加価値の向上につながる可能性があるとした。

 戦略策定面では、長期を見据えた経営計画を策定している企業ほど、付加価値額が増加する傾向があると指摘。自社の商品・サービスの特徴や市場環境を見極め、自社の競争力を的確に認識した上で戦略を立案することを求めた。組織人材面では、自社の立ち位置や経営者の思いを踏まえた経営理念を定め、従業員に共有することが重要だとしている。

 日本企業の99.7%は中小企業であり、中小企業が元気にならないと日本経済は活性化しない。今後は各社の経営力が問われそうだ。

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