異国エジプトで、ダブルワークならぬトリプルワークをこなす"おろぐちともこ"が、仕事や現地生活をマンガとコラムでご紹介。ピラミッドだけじゃないエジプトをお楽しみください。(毎週火曜更新予定)

【地下鉄での優しさ】

ちょっと憂うつな毎日の通勤。「カバンが電車の扉に挟まれた!」とか「線路に靴が落ちた!」という嫌なハプニングが起こった日には、もう仕事へのやる気がゼロになっていることも…。エジプトの地下鉄も、朝のラッシュ時は満員のギューギュー。どうにか乗り込んだものの、電車のドアにカバンや服が挟まってしまった! という人も見かけます。

この日も混んでいる女性専用車両に乗り、半ば押し流されるようにして下車した私。確かにこの駅で降りたかったけど、相変わらず容赦ない…とドアが閉まるのを遠い目で眺めていたときです。私と一緒に(半ば強制的に)降車した女性が「キャー!!」と悲鳴を上げているではありませんか!

「何事!?」とびっくりしていると、「私のカバンが中に!!」と大慌て。どうやら人の波に挟まれ、カバンが中に取り残されてしまったようです。中にはきっと財布や身分証、手帳など仕事の必需品が入っていることでしょう。出勤中なのに、とんだ災難…。でもドアはもう閉まっているし、また開きそうな気配もありません。

「大丈夫かな…」と思っていたら、車内の女性が取り残されたカバンをつかむ様子が窓越しに見えます。「?」と見つめていると、窓の隙間にカバンを押し込み始めたではありませんか。

その手があったか…と思いましたが、私が乗った路線の車両の窓は、上部が固定された「外倒し窓」のようなタイプ。ガバっと大きく開くことができないので、隙間はそこまで広くありません。でも諦めずに中からギューギューと押し込む女性。奮闘の結果、ついにカバンは窓から「べしっ!」っとホームに落ちてきました!!

すごくシンプルな力技で帰ってきたカバン。そして何事もなかったかのように走り出す電車。カバンは無事持ち主の手の元へ戻ったことですし、窓から押し込まれて投げ落とされ、中身が潰れたとしても結果オーライ! となったことでしょう。…多分。

サヘイル島から見たアスワンのナイル川。満員の地下鉄で通勤していると、開放感あふれる大自然が恋しくなります…


おろぐちともこ
大学で古代エジプト史を専攻し、2011年よりカイロ在住。日々、エジプト人観察に励む。
現在はWebやエジプト人による日本語雑誌の漫画を執筆したり、デジタルアシスタントをしたりと、国境を越えて活動中。至上の喜びは、素敵なカフェで水タバコの煙をゆらしながらぼけっとお茶をすること。生活記Blogつぶえじでは、現地の生活の様子を不定期に発信している。