インデントは文書の作成に欠かせない書式指定であるが、意外と利用されていないケースが多いようである。このインデントを上手に使いこなすことが、Word上級者への第一歩となる。そこで今週は、インデントの指定方法と具体的な活用方法を紹介しておこう。

インデントの指定

インデントは、段落の左側に余白を設ける書式指定となる。手軽にインデントを指定したい場合は、「ホーム」タブにある「インデントを増やす」のアイコンを利用するとよい。段落を選択した状態(もしくは段落内にカーソルを移動した状態)で、このアイコンをクリックすると、段落の左側に1文字分のインデントを指定することができる。同様に、2回クリックすれば2文字分、3回クリックすれば3文字分、……という具合に余白のサイズを変化させていくことが可能だ。

インデントの指定

2文字分(21pt)のインデントを指定した段落

ちなみに、ここでいう「1文字分」とは、標準の文字サイズ(10.5pt)を基準にしている。これは編集している段落の文字サイズに関係なく、常に固定サイズである。仮に、編集している段落の文字サイズが12ptであったとしても、インデントは1文字=10.5ptとして設定される。間違えやすいポイントなので、実際にWordを起動して動作を確認しておくとよいだろう。

1文字分、2文字分、……といった大ざっぱな単位ではなく、インデントのサイズを細かく数値で指定したい場合は「段落」の設定画面を利用する。段落を選択した状態で、「ホーム」タブにある「起動ツール」(小さい四角形のアイコン)をクリックすると、「段落」の設定画面を呼び出すことができる。この設定画面にある「インデント」の「左」の項目が、インデントを指定するための設定項目となる。数値の単位には「cm」や「mm」などを指定できるが、これを全角文字で入力してしまうと正しく値が認識されない。よって、数値と単位は半角文字で入力する必要がある。

「段落」の設定画面の呼び出し

インデントに「10mm」を指定した場合

それでは、具体的な活用例を示していこう。以下の図はインデントを指定することにより、階層のある箇条書きを実現した場合の例である。

インデントを利用した段落の配置

この例では、Wordに用意されている「箇条書き」や「段落番号」の書式は利用せずに、「通常の文字」で文章を入力している。続いて、各段落にインデントを指定することで「階層のある箇条書き」のような配置を実現している。Wordに用意されている「箇条書き」や「段落番号」の書式になじめない方は、この方法で文書を作成していくとよいだろう。

ただし、(1)や「・」などの文字を入力したあとに「Enter」キーを押すと、勝手に「箇条書き」や「段落番号」の書式が指定されてしまうケースもある。この自動指定を解除するときは、「オートコレクトのオプション」をクリックし、「箇条書きを自動的に作成しない」または「段落番号を自動的に作成しない」を選択しておくとよい。すると、Wordの初期設定が変更され、「箇条書き」や「段落番号」の自動指定を無効化できるようになる。

「段落番号」の自動指定の解除

もちろん、箇条書きだけでなく、幅広い用途にインデントを活用することが可能だ。例えば、"見出し"を少しだけ左に飛び出させて配置したい場合は場合は、本文に適当なサイズのインデントを指定すればよい。そのほか、ページの右下に連絡先を記載する場合にもインデントが有効活用できる。

インデントを利用した連絡先の表記

念のため、指定したインデントを解除する方法も紹介しておこう。インデントを解除するときは、その段落を選択し、「インデントを減らす」のアイコンをクリックする。1回クリックするごとに1文字分(10.5pt)ずつインデントが小さくなっていくので、インデントがゼロになるまで、アイコンを繰り返しクリックしていけばよい。「段落」の設定画面で指定したインデントも、この方法で解除することが可能だ。

インデントの解除

「ぶら下げ」の指定とタブ文字の入力

先ほど、インデントを使って箇条書きのような表記を実現する方法を紹介したが、各項目を2行以上にわたって記述する場合は、インデントの指定だけでは適切な配置を実現できない。

インデントだけを指定した場合

このような場合は、各段落の1行目だけを左に飛び出させる「ぶら下げ」の書式も指定する必要がある。少し分かりにくいので具体的な例を使って解説していこう。まずは、インデントを指定する段落を選択し、段落の「起動ツール」をクリックする。

「段落」の設定画面の呼び出し

「段落」の設定画面が表示されるので、「左」の項目に適当な数値を入力してインデントを指定する。続いて、「最初の行」に「ぶら下げ」を選択し、「幅」の項目に適当な数値を指定する。

「インデント」と「ぶら下げ」の指定

今回の例では、「左」のインデントに5mm、「ぶら下げ」に10.5mmを指定した。この場合、各段落の1行目だけが左に10.5mm飛び出して配置されることになる。今回は「左」のインデントに5mmを指定しているので、1行目は5mm、2行目以降は15.5mm(5mm+10.5mm)の位置から文章が開始されることになる。

このように「左」のインデントと「ぶら下げ」の数値を調整することで、箇条書き(段落番号)と同等の配置を実現することも可能だ。それぞれの設定項目に指定すべき数値がよくわからない場合は、ルーラーに表示されている2つのマーカーを左右にドラッグして配置を調整してもよい。

「インデント」と「ぶら下げ」を指定した段落の配置

ただし、先ほどの図をよく見ると、1行目と2行目以降で文章の開始位置が少しずれていることに気付くと思う。各行の先頭をそろえるには、「ぶら下げ」の数値を微調整しなければならないが、これはかなり面倒な作業になる。このような場合はタブ文字を利用するとよい。

「ぶら下げ」を指定した段落では、1行目の途中にタブ文字を入力すると、以降の文字を2行目の先頭にそろえて配置することが可能となる。先ほどの例の場合、(1)や(2)の文字の直後にカーソルを移動して「Tabキー」を押すと、各行の先頭をそろえて配置できるようになる。

タブ文字の入力を画面で確認したい場合は、「編集記号の表示/非表示」のアイコンをクリックしてONにしておくとよい。すると、タブ文字が入力されている位置に「→」の記号が表示されるようになる。

タブ文字を挿入して行頭を揃えた場合

このように「左」のインデントと「ぶら下げ」、さらにタブ文字を利用することで、通常の文字でも「箇条書き」や「段落番号」と同じ配置を実現することが可能となる。Wordに用意されている「箇条書き」や「段落番号」の書式になじめない方は、今回紹介した手法を覚えておくとよいだろう。

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Wordに用意されている「箇条書き」や「段落番号」の書式を利用した場合も配置調整が必要になることを考えると、今回の例のようにインデントで書式を指定しても、作業量は大して変わらないことになる。むしろ、自分で書式を指定している分だけ状況を把握しやすくなるだろう。

使い方に慣れるまでに多少の時間を要するかもしれないが、インデントは文書の作成に欠かせない機能となる。時間に余裕があるときに、使い方を研究しておくとよいだろう。