業務効率を低下させているメールシステム

電子メールに代わる良いコミュニケーションツールはないものか──メールの処理に時間を取られた経験のあるビジネスパースンは、少なからずそうした期待を抱いたことがあるはず。出社して受信ボックスを開くと未読メールが何十通もあり、それを処理するだけで小一時間要してしまうことはざらだ。

さして重要でないメールばかりなら対策の立てようもあるが、大量に届くメールの中には、見落としが許されないものも含まれているので、結局、すべてに目を通す必要がでてくる。役職や担当プロジェクトによっては、1日に数百通のメールを処理しなければならないというケースも少なくない。企業システムとしてのメールは実質的に破綻していることを実感しながらも、代替手段がないために使わざるをえないというのが本音だろう。

一方で、メールの代わりにSkypeなどの個人向けチャットツール(インスタントメッセージングツール)を企業内のコミュニケーションに利用するケースも増えている。即時性が高く、手軽に返信できるため、意思確認や進捗確認をスピーディーに行うことができ、業務効率の向上につながる。ただし、相手がオフライン時にメッセージ・ファイルが送れない、PC移行時にログの移行が面倒、セキュリティ面が不安といった欠点もあるため、メールを完全に代替するものではなく、状況によって使い分けているというのが実情だ。

では、メールシステムやチャットツールは具体的にどのような点に問題があり、どう解決すれば、"本当に使える"コミュニケーションツールになりえるのだろうか。

メールコミュニケーションの課題

まず、企業でメールを利用する際の問題としては、以下の4点が挙げられるだろう。

(1) 大量の迷惑メールで重要なメールを見逃してしまう
(2) 過去のやりとりをさかのぼって内容を把握するのが面倒
(3) CCやBCCで受信者を指定する必要がある
(4) 誤送信したメールを取り消せない

(1) 大量の迷惑メールで重要なメールを見逃してしまう

冒頭で触れた点だが、やっかいなのは、自分にとって重要かどうかが分かりにくいことだ。重要度を示すヘッダ(Importance:)はあるもののほとんど使われず、逆に迷惑メールとして悪用されるケースが目立つ。題名を括弧付き(【】など)で強調するケースもあるが、やはり迷惑メールと見間違いやすい。

(2) 過去のやりとりをさかのぼって内容を把握するのが面倒

特にメーリングリストのように運用している際には、やりとりの全体を把握するのに手間がかかるという問題や、コミュニケーションに時間がかかることから短時間のうちに意思決定ができないという問題もある。

(3) CCやBCCで受信者を指定する必要がある

この点が問題になるのは、送信漏れが起こりやすい点だ。簡易メーリングリストとしてやりとりしている際に「全員に返信」しないケースが一度でもあると、メーリングリストとして機能しなくなってしまう。この場合、重要度の高いメールを1人だけ受け取れないという事態に陥り、チームワークを壊すことにもなりかねない。また、社外向けに発するメールでBCCとすべきところをCCとしてトラブルになるケースも目立つ。これは、(4)誤送信したメールを取り消せないという問題にもつながる。

(4) 誤送信したメールを取り消せない

宛先のミスや内容に不備があったなど、一度送ったメールを取り消したい、と思ったことは、誰しも一度はあるのではないだろうか。トラブルやクレームにもつながりやすく、メールシステムが抱えているリスクとも言える。

それだけではなく、毎回の定形挨拶文や署名、ファイルの添付忘れといった問題もあり、メールは、非効率、不便さ、そしてトラブルを起こしやすい危険性さえ持ったコミュニケーションツールであるとも言える。

個人向けチャットツールのメリットと課題

一方、チャットツールに関しては、メールにはない便利な点が多数ある。

【チャットツールのメリット】

  • グループチャットで、複数の関係者とリアルタイムにやりとりができる
  • 迷惑メッセージが来ない
  • メッセージの編集や削除が可能
  • 過去のやりとりがたどりやすい

以上のようなメリットがチャットにはあるものの、Skypeをはじめとした既存のチャットツールは、個人向けに作られているため、業務で使うには問題点もある。

想定される課題は次のようなものだ。

【個人向けチャットツールの課題】

  • 相手がオフラインの時にはメッセージやファイルを送れない
  • PC移行時のログの移行が難しく面倒
  • 企業によってはセキュリティ上、導入が難しい
  • 複数のPCでアクセスすると、メッセージの状態がバラバラで同期されていない

このような問題があるため、実際には、個人向けのチャットツールの利用は禁止され、エンジニアやコールセンターのオペレータのように、特定の職種の人のみ利用しているというのが実情だ。利用形態としても、冒頭で触れたように、あくまでメールを補完するツールという位置づけがほとんど。やはり業務で本格的に利用するには限界があると言わざるをえない。

では、チャットの効率性を活かしつつ、メールの代替となるコミュニケーションは可能なのだろうか。その1つのかたちとして注目できるのが、クラウド形態で提供される企業向けチャットツールの存在だ。なかでも、クラウド型ビジネスチャットツール「チャットワーク」は、クラウドの特徴を活かしながら、個人向けのチャットツールの問題点を解決したサービスとして注目できる。具体的には、次のような特長を持っている。

【チャットワークの特長】

  • どの端末からでも同期され、最新の状態で利用可能。バックアップやログの移行が不要
  • 相手がオフラインでもメッセージやファイルを送受信できる
  • チャット内で発生したタスクを担当者に割り当てるタスク機能

その他、ファイル共有、スマートフォン対応など、業務で使うために必須の機能は網羅されている。開発したのは、「電話無し」、「ペーパーレス」、「お客さんとは会わない」といったスタイルで有名になったEC studioである。

次回以降、このチャットワークの機能を紹介しながら、新しいコミュニケーションツールの可能性を探ってみたい。