今回のテーマは「CMS」

Webサイトの基本ともいえるCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)。最近ではブログエンジンを使ったCMSも数多く出ているくらい、プログラムでコンテンツを管理していればCMSと呼ばれるようになる。そのため、一言でCMSといっても多種多様で、各々特徴が異なっているのが実情だ。

今回は、従来のユーザ画面と管理画面を持ち、モジュールやプラグインを使って拡張するタイプのCMSとは異なる、一癖あるCMSを紹介したい。CMSに合わせてコンテンツの組み方、見せ方を考えるというのも面白いのではないだろうか。

今回紹介するOSS・Webアプリ
Wix.com』 FlashベースのWebサイトを作りたい人に
BitsyBox』 APIを使ったコンテンツ配信とは?
Pier』 簡単に始められる! Webサーバ内蔵型CMS
DryDrop』 バージョン管理も導入したいなら



FlashベースのWebサイトを作りたい人に

名称 Wix.com
URL http://www.wix.com/

Wix.com』の最大の特徴はなんといってもFlashベースで作る、Flash製のCMSであるという点だ。あらかじめ何種類かのテンプレートが用意されており、文字や写真、音楽、ウィジェットを貼り付けて編集するだけで、オールFlashによるWebサイトが出来上がる。

「Wix.com」のトップページ。Flashならではの美麗なインタフェースのWebサイトが構築できる

スプラッシュウィンドウでFlashが使われると嫌がられる傾向があるが、サイト全体をFlashで構築するならクリエイティブな印象を与えることができるだろう。メニュークリック後のページもあらかじめ用意されているので、Flashをまったく分からない人でも問題なく作れるはずだ。

編集画面。左側のメニューから様々なオブジェクトを配置できる

ウィジェットを使えばRSSフィードやコンタクトフォーム、Eコマース、Paypalなど、より本格的なサイトを構築することもできる。よりリッチで上品なイメージを与えるのにぴったりのCMSだ。




APIを使ったコンテンツ配信とは?

名称 BitsyBox
URL http://bitsybox.com/

BitsyBox』は単なるCMSではない。ホスティッド・コンテンツ・ストレージ&マネージメントと謳っており、BitsyBox自体はサービス画面の提供は行わない。利用者は自分のサイトでBitsyBoxの提供するライブラリを読み込むと、指定した場所にBitsyBox上で設定したコンテンツを埋め込んでくれる仕組みになっている。内容をBitsyBoxで変更すれば、サービスサイト側の文字や写真も変更される。

「BitsyBox」のトップページ。データベースも不要で動的コンテンツを利用できる

CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)が組み込まれているので、配信速度は速い。Webサイトでよくある特集ページのコンテンツや、データベースで管理するまでもないような情報を管理するようなときに便利に使えるのではないだろうか。

仕組み。コンテンツはBitsyBox上にあり、APIを通じて配信する

今のところ提供されるのはPHP向けのライブラリのみだが、APIはRESTに対応しているので他のプログラミング言語でも容易に扱えるはずだ。なお、BitsyBoxは現時点ではクローズドベータ中となっている。気になる方はメールアドレスを登録しよう。




簡単に始められる! Webサーバ内蔵型CMS

名称 Pier
URL http://www.piercms.com/

Pier』はWebブラウザ向けに提供されるソフトウェアだが、サーバ込みで実行ファイルとして提供されるのが特徴だ。 Windows/ Mac OS X/ Linuxそれぞれに対応したバイナリが提供されるので、実行すればすぐにWebサーバが立ち上がる。主な機能はブログとなっている。

アプリケーションを実行したところ。データベースやWebサーバを内蔵している

使い方としては、社内や自宅向けに提供するサーバとしてが一番向いているだろう。ダブルクリックするだけですぐに使い始めることができる手軽さがいい。Webサーバやデータベースのセットアップもいらず、誰でもすぐに使い始められる便利なシステムだ。

ブログのエントリー画面。利用はWebブラウザから行う




バージョン管理も導入したいなら

名称 DryDrop
URL http://drydrop.binaryage.com/

小さなWebサイトを構築する際には、バージョン管理を導入するのが面倒に感じてしまうだろう。だが、そんな時に使ってみたいのが『DryDrop』だ。DryDropは静的なWebサイトをGithubを使ってバージョン管理する。そしてそのコンテンツをGoogle App Engine上に配信するのが特徴だ。

「DryDrop」の設定画面。静的コンテンツはオーサリングツールを使って行う

Google App Engineを使えば、一日6.5時間までの利用は無料だ(アクセスがない時間は対象外)。静的なコンテンツサイトであれば、おそらく十分だろう。バージョン管理も自動的に導入されるので、修正を重ねたり、ファイルを削除したりするのも怖くない。失敗したとしても戻せばいいだけだ。

サンプルサイト。サイトの運営はGoogle App Engine上で行う

Githubのリポジトリは公開/非公開どちらにも対応している。プロジェクトサイトなど、静的なコンテンツだけで事足りる場合はDryDropを使ってGoogle App Engine上での構築も考えてみよう。

いかがでしたか?

一口にコンテンツ管理といってもその種類は多様に存在する。動的システムで、HTMLを出力するものばかりではない。多様なCMSを知っておくことで、自分のニーズにあったシステムをうまく選択できるようになるはずだ。言語やコンテンツの種類によって使い分けてほしい。

Webサービスを立ち上げた際に、動的部分はきちんと考えていつつも、ヘルプなどのコンテンツをどう配信するか考えていないケースは多い。そのような時にもCMSと組み合わせれば、うまくサイトに融合した配信ができるようになるだろう。

著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)

1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。