今回のテーマは「ソーシャルニュース」

日本で言えば「newsing」というサイトがもっとも有名だろう。海外であれば「Digg.com」が最大――ソーシャルニュースサイトと呼ばれるサービスのことだ。個人が自由にニュースをポストし、そこに対して良いと思えば投票を行い、その投票数によってニュースの並び順が変わっていく。投票が多ければトップページに出るようになり、露出が増えればそれだけトラフィックに反映されていく。

ニュースにはコメントができるので、ソーシャルニュースサイトでは議論が活発に行われている。旧来の掲示板のシステムに似ているが、Web2.0という単語が登場して以来のソーシャル(共有)というキーワードにヒットして爆発的に広まっている。

今回はそんなソーシャルニュースをテーマにWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介したい。ソーシャルブックマークとも、それまでのメディアとも違う楽しさを味わえるこのサービスをぜひ知ってもらいたい。

今回紹介するOSS・Webアプリ
slinkset.com』 オリジナルのソーシャルニュースサイトを1分で
Sphinn Japan』 エキスパート参加のSEM専門ソーシャルニュースサイト
RubyFlow』 Ruby専門ソーシャルニュースサイトのオープンソース版
Pligg』 見Diggクローンと言われる高機能ソーシャルニュースシステム



オリジナルのソーシャルニュースサイトを1分で

名称 slinkset.com
URL http://slinkset.com/

既存のソーシャルニュースサイトは肌に合わない? そんな思いをしている人はいっそのこと自分で作ってしまってはいかがだろう。『slinkset.com』を使えば簡単な操作で自分だけのソーシャルニュースサイトを構築できる。デザインをパターンから選んだり、独自のCSS設定を指定したりすることができ、デザインはほぼ自由に設定可能。投票やコメント、RSSフィードを配信する機能もある。ブックマークレットによる簡単ポストもサポートしており、ソーシャルニュースサイトに必要な要素はほぼ網羅されているのではないだろうか。

「slinkset.com」のトップページ。CSSまで独自にすれば、まったくオリジナルサービスと変わらない

さらにドメインの設定をすれば(デフォルトではslinkset.comに好きなサブドメインを割り当てる)、独自ドメインでの運用も可能になっている。これだけの機能がそろっていれば、ほとんど自分でサーバを使って運用する意味などなさそうだ。slinkset.comを使えばすべて事足りて、それが1分もあればできあがってしまう。

作成した例。デザインやブックマークレットなど便利な機能が数多い

ソーシャルニュースサイトという枠組みがあれば、必要な機能は明確になってくる。あとはコンテンツやデザインで差別化を図ればよいだけだ。




エキスパート参加のSEM専門ソーシャルニュースサイト

名称 Sphinn Japan
URL http://www.sphinn.jp/

Sphinn Japan』は、米Sphinnからライセンス提供を受けて開始されたSEM(検索エンジンマーケティング)専門のソーシャルニュースサイトだ。一般ユーザが議論に参加するのはもちろんだが、渡辺隆広氏(アイレップ)や阿曽鉄之輔氏(スマートシステム)、佐藤竜也氏(フラクタリスト)、木村賢氏(サイバーエージェント)、芳賀麻奈穂氏(フルスピード)といった業界のエキスパートたちが議論に参加しているという点が特徴になっている。

「Sphinn Japan」のトップページ。SEMに特化した情報が集う

他のソーシャルニュースサイトでは、玉石混淆の意見が混じり合う。それが面白い点でもあるのだが、専門的なソーシャルニュースサイトになれば、やはり専門家がニュースに対してどのように捉えているのかは気になるところだろう。その希望を叶えてくれるのがSphinn Japanになる。

記事詳細。コメントや投票、関連記事などが表示される

水平的な展開は他の業界、他のサービスでも考えられそうだ。専門的に特化していくからこそ、専門家の意見が重みを持つ。それはソーシャル(共有)を売りにしたサービスであっても変わらないだろう。




Ruby専門ソーシャルニュースサイトのオープンソース版

名称 RubyFlow
URL http://www.rubyflow.com/

RubyFlow』は同名Webサービスがすでに存在し、そのシステムをオープンソースとして公開している。その名のとおり、Rubyに関連したニュースを伝えている。他のソーシャルニュースサイトとは異なり、セグメントをRubyに絞り込むことで価値を高めているのが特徴だ。

トップページ。記事は時系列で並んでいく

システムはRuby on Railsを使って作られている。だが○○Flowと考えれば他の要素でも使えそうだ。Rubyに限らずPHPやJava、はたまたプログラム言語に限らず東京Flow、アニメFlowでもよい。ジャンルを絞り込めば、その特化した分野に対して意味のあるソーシャルニュースサイトになるはずだ。

記事詳細。コメントが可能。投票機能はない

インタフェースはごくシンプルな作りになっているので、自分なりにカスタマイズしてみるのもよいだろう。また、不特定多数による投稿はとりやめて、自分だけが発信できるニュースサイトとして活用するのもよい。オープンソースならではの、自分なりのソーシャルニュースサイトを目指そう。




Diggクローンの名を持つ高機能ソーシャルニュースシステム

名称 製品名
URL http://www.pligg.com/

Pligg』は、Diggクローンとも言われるオープンソース・ソフトウェアで、非常に高機能なシステムになっている。ユーザがニュースを投稿するのはもちろん、各ユーザ間におけるソーシャルネットワーク的なつながりを構築したり、自分がポストしたニュースやコメントを一覧したりすることもできる。

「Pligg.com」のデモ。デモでありながら記事や投票の数は多い

PHP+MySQLという、いわばスタンダード的な作りになっているのも特徴で、このふたつがサポートされているサーバであれば大抵動かすことができるだろう。さらに海外での人気が高いため、ユーザが作成したテーマが多数公開されているのも利点だ。

詳細画面。デザインも整っていて、表示も見やすい

完成度は高く、内部には手を入れずとも使えるはずだ。逆に言えば、すでに内部が複雑化しているので自分なりのカスタマイズを施す余地は少ないかもしれない。Diggのようなソーシャルニュースサイトを構築したいと言われたらまず第一にお勧めしたいソフトウェアだ。

いかがでしたか?

ソーシャルニュースサイトはソーシャルブックマークサービスとは異なり、コミュニティであることが重要になる。そしてシステムとして機能は限られたもので、サービスは林立するものの、どれの機能もほぼ同じという状態だ。その中でオリジナリティを出すのはなかなか難しいが、今回紹介したものはそれぞれ異なる特徴を持っている。

ソーシャル系のサービスは模倣コストが低く、乱立する傾向にある。さらにオープンソースを使って、わずかなコストでサービスが提供できるようにもなっている。ソーシャルの中に加わるのもよいし、自分で別にサービスを打ち立てるのもよい。独自性を出して、面白いサービス構築にトライしてみてほしい。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。