今回のテーマは「PDF」

コンピュータ上で文書を作成、閲覧するのによく使われるのがPDFだ。WindowsやMac OS X、Linuxなどの各種OS間で変わらぬ表示結果が得られ、リーダーでは表示のみで編集ができないという点が利点になっている。WindowsであればAdobe ReaderやFoxit Readerなどが閲覧用に使われ、作成も多数のプリンタドライバ形式でのソフトウェアが登場しており、無料でPDFを作成することができるようになっている。Mac OS XについてはOS標準でPDFの閲覧や作成が可能だ。

利用機会が多くなっているPDFだからこそ、さまざまなソフトウェアがPDFを使ったサービスを提供している。閲覧するだけでなく、作成するものや加工するものなど、ニーズに合わせて多数の機能がある。今回はそうしたPDFを使った魅力的なWebアプリケーションやオープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介したい。 PDFをさらに便利に、活用範囲を広げてくれるはずだ。

今回紹介するOSS・Webアプリ
Web2PDF Online Widget』 Myブログ&WebサイトにPDF出力ボタンを
iPaper』 Office文書やPDFをWebブラウザでスピード閲覧
JODConverter』 オフィスドキュメントをPDFに変換する
Skim』 PDFの簡易編集ならオマカセ



ブログに貼り付けるPDFウィジェット

名称 Web2PDF Online Widget
URL http://web2.pdfonline.com/

ブログのサイドバーなどに貼付けるさまざまなウィジェット・ブログパーツが存在している。『Web2PDF Online Widget』はそのひとつ。ボタンを押すと、閲覧中のブログやWebサイトをPDFとして保存できるというものだ。ページを見たまま保存しておきたいというときに便利なWebアプリケーションといえる。

「Web2PDF Online Widget」のトップページ。ユーザ登録・利用は無料だ

ブログパーツなので、設置はブログ管理者が行う。とはいえ手順は簡単。Web2PDF Online Widgetのサイト上で生成されるJavaScriptタグを貼り付ければよいだけだ。印刷方向を垂直または水平から選ぶことができる。試しに生成してみて確認するとよいだろう。

PDF生成ウィジェット作成画面。生成されたJavaScriptを埋め込めばよい

日本語も問題なくPDF化され、テキストも埋め込まれるので日本語での検索もできる。リンクは無効になってしまうが、記事内容をPDFで保存しておくだけでも十分便利に使えそうだ。ブログはもちろん、通常のWebサイトなどでも便利に使えるWebアプリケーションだ。

生成されたPDF。日本語も表示される




Office文書やPDFをWebブラウザでスピード閲覧

名称 iPaper
URL http://www.scribd.com/ipaper

Windowsであれば、Webページ内のPDFのリンクをクリックするとWebブラウザ上でPDFが表示される。しかしこの仕様、Webブラウザがフリーズした状態になるなど、いまひとつ評判はよろしくない。とはいえ、ダウンロードしてAdobe Readerを立ち上げて……というのも面倒だ。同様にMicrosoft Officeのドキュメント(Word/Excel/PowerPointなど)もダウンロードして開くのが面倒という意見は多い。

Scribdの開発した『iPaper』は、そうした面倒から解放される素晴らしいツールだ。iPaperはFlashで出力されるので、ブラウザ内でレンダリングできる。YouTubeで動画を再生するような感覚で、Webブラウザ内で各種Office文書やPDFを閲覧できるようになる。

「iPaper」の紹介画面。画面中央に表示されているのが「iPaper」

表示はもちろん、検索やズーム、マウスのドラッグによる移動などができる。Web APIが公開されており、ブックマークレットを実行するだけでリンク中にあるPDFやオフィスドキュメントをiPaperに変換することも可能。iPaperはOffice文書とWebブラウザとを密接に連携させてくれる素晴らしいツールだ。

Webブラウザ内で検索やズームなどができる




OpenOffice.orgを使ってドキュメント変換

名称 JODConverter
URL http://sourceforge.net/projects/jodconverter/

PDFを作成するにはいくつか方法がある。有料であるAdobe Acrobatのようなツールを使えば高度な設定を施したPDFを作成できる。また、フリーウェアにも数多い、プリンタドライバを使って生成する方式であれば、見ている文書をそのまま、簡単にPDF化することが可能だ。

JODConverter』は、PDF生成処理をサーバサイドで可能にするソフトウェアだ。実体は「OpenOffice.org」を使ったツールであり、各種オフィスドキュメントをPDFやFlashなどに変換することができる。OpenOffice.orgでMicrosoft Officeのファイルを開いた結果に満足されている方であれば、便利に使えるソフトウェアになるはずだ。

PowerPointのファイルを変換した例(Flashに変換)。日本語も表示される

内部でWebサーバを立ち上げて、そこにドキュメントをポストして変換する、といった一連の処理をJODConverterは自動で行なってくれる。多数のドキュメントを変換する場合や、各端末にドライバを入れるのが難しい場合にも適用できるソフトウェアだ。

PDFに変換した例。これも再現性が高い




PDFの簡易編集ならオマカセ

名称 Skim
URL http://skim-app.sourceforge.net/

配布されているPDFは一般に、閲覧のみで編集ができない状態となっている。しかし、やはり簡単な修正を施したり、マークを付けたりしたいといったニーズはあるものだ。そのためにPDF編集ソフトウェアを購入するという手もあるが、まずは『Skim』を試してみるのがよいかもしれない。

一部を囲んでメモを付けることもできる

Skimは文字を追加したり、メモをPDF内に埋め込んだりすることができるソフトウェアだ。文字サイズや文字色を自由に変更できるほか、メモなどを追加後、PDFとして再保存することもできる。

文字に色をつけることも可能

ただし、文字の削除やインラインでの追加はサポートしていない。あくまでも簡易編集の範囲といったところだ。だが、これくらいの機能でも十分という場合もケースはあるだろう。覚えておくと便利なソフトウェアだ。

いかがでしたか?

PDFはビジネスシーンでよく使われる文書ファイル形式で、Word文書と同じくらい目にする機会は多いだろう。だが、自分でPDFを作成して便利に使ったり、職場の文書をPDFで作成、保存するといったところにまで踏み込んでいる人はまだ多くない。

保存のしやすさ、マルチプラットフォームで動作する点、改ざんが難しい点などさまざまな利点が存在する。それらの利点をいかせば、もっと便利な活用法が見えてくるかもしれない。ぜひ皆さんの職場でもPDF活用にチャレンジしてみてほしい。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。