今回のテーマは「カレンダー」

コンピュータを使ったサービスで人気があるものは、意外とインターネットだけではなくリアルとのつながりが求められるものが多い。たとえば、地図、路線乗り換え情報、相手とのやり取りに使うメールやIM(インスタント・メッセンジャー)などだ。そして今回のテーマであるカレンダーも同じようにリアルとのつながりがある、利用度の高いサービスだ。

たとえば、グループウェアのスケジュールや個人的な予定の管理などにも使われている。が、カレンダーではスケジュールを共有する相手がいることが多く、それは何も社内だけとは限らない。プライベートな予定であれば、仲間内で共有したいこともあるだろう。カレンダーは不特定多数とうまくつながることで、とても便利になる可能性を秘めている。

今回はその「カレンダー」をテーマに、各種Webアプリケーション、オープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介したい。さまざまな情報と結びつくことでさらに魅力を増すカレンダーのあり方を知ってもらえるはずだ。

今回紹介するOSS・Webアプリ
mixin』 細かい管理は不要! ゆるいスケジュール共有
ソユーズ』 カレンダーをリミックスして楽しむ
Funambol』 多彩なデバイス、サービスとカレンダー情報を同期
Calendar Server』 クライアントが自由に選べるカレンダーサーバ



細かい管理は不要! ゆる~く時間を共有する

名称 mixin
URL http://www.mixin.com/

最近の流行はTwitterに代表されるように、"ゆるいつながり"だ。あまり束縛されず、かといって必要なときには相手に連絡がとれる、そんな存在のサービスが数多く登場している。『mixin』もそのひとつと言えそうだ。とくに時間の管理についてもアバウトだ。

「mixin」のトップページ。時間帯は5つに分かれている

時間を分単位で管理するのが当たり前のスケジュールにあって、mixinでは「tonight」「afternoon」「lunch」などの時間帯で情報を管理するようになっている(細かく指定することも可能)。たとえば、金曜日の夜に恵比寿の勉強会に参加する(Study session @Ebisu Friday night)、といったような登録の仕方をする。

ユーザのトップページ。Ajaxを使ってスムーズな操作ができる

この情報は友人と共有したり、IMと連携させたりするようなことができるようになっている。また、コメントを付加できるほか、flickrやPicasaの画像、 YouTubeの動画を貼り付けておくこともできる。あまり厳密に管理すると、その管理に疲れてしまったり、入力が面倒になってしまったりする可能性がある。プライベートな予定であれば、このくらいのアバウトさがちょうど良さそうだ。




カレンダーをリミックスして楽しむ

名称 ソユーズ
URL http://www.souseit.com/

カレンダーはなにも自分が登録した情報だけを管理するのが目的ではない。むしろ他の人や企業、団体が公開している情報を日付とともに書き留めておきたいということのほうが多いかもしれない。たとえば、書籍の発売日、映画の公開日、商品の発売日、コンサートの開催日などが挙げられる。

ソユーズ』は、自分だけのカレンダーを作るサービスではあるが、自分で入力するだけではなく、他のサービスで公開されているカレンダーデータを取り込んで表示できるようにもなっている。いくつかの情報を取り込んでリミックスして公開することも可能。カレンダーのマッシュアップと言えそうだ。

「ソユーズ」のトップページ。携帯電話からでも利用可能

取り込んだ情報は必要なものだけを表示できるほか、他のユーザとのリミックスによる作成をサポート。携帯電話からの利用が可能なので(現在は閲覧のみ)、どこからでもスケジュールを確認できるというメリットもある。"取り込んでリミックス"というのが新しい感覚のカレンダーサービスだ。

カレンダー画面。シンプルでわかりやすい表示




各種デバイスと連携するカレンダー同期ソフトウェア

名称 Funambol
URL http://www.funambol.com/

外出先などでスケジュールを手早く確認したいときには携帯電話に登録しておくのが便利だ。だが業務で使っているコンピュータとデータを二重化してしまったり、機種が多種多様に存在するといった問題点がある。携帯電話だけに入力しておくのは不安、という人もいるだろう。

そこで同期ソフトウェアに注目が集まる。さまざまなデバイスと同期ができれば、母艦となる場所にスケジュール情報を集約し、そこから同期する形でデータをやり取りすればよいようになる。『Funambol』はまさにそのための同期サーバとなるソフトウェアだ。Funambolではカレンダーとアドレス帳のデータが同期できるようになっている。

登録画面。Webベースで操作する画面はシンプル

オープンソースで開発されていることもあって、コミュニティベースで多彩なプラグインがそろっている。スマートフォン/Windows Mobile/Microsoft Outlook/iPodとの情報同期はもちろん、SyncMLというデータ同期のオープン規格に則ることで、プラグインの開発が容易になっている。

同期設定画面。アドレスとカレンダーが選択できる

コミュニティベースでは、Gmail/vtiger CRM/SugarCRM/BlackBerry/Google Android/Exchange/LDAPといったソフトウェアやサービスと同期ができるようなプラグインが開発されている。Funambolを使えば、GmailとWindows Mobileとでデータを共有することも簡単にできるようになる。




オープンソース版のiCal Server

名称 Calendar Server
URL http://trac.calendarserver.org/projects/calendarserver

Mac OS X ServerにはiCal Serverという機能がある。iCalなどのカレンダーソフトウェアをクライアントとして、皆でスケジュールを共有するソフトウェアだ。iCal形式に対応していればよいので、iCalに限らず、さまざまなクライアントソフトウェアから自分にあったものを選択できる。

そしてiCal Serverのソースコードは『Calendar Server』として公開されている。これを使えば、Mac OS Xであってもカレンダーサーバとして動作させることができる。とくにMac OS Xでないと動作しない、というわけでもないようなので、Linuxなどを使ったサーバに入れてみても面白い。

カレンダーサーバのWeb管理画面。幾つかのカレンダーが登録されている

認証情報の扱いなどで、iCal Serverとは異なる仕組みのようだ。だが、Calendar ServerでもLDAPを認証システムとして利用できるようになっている。あとはカレンダーのURLを取得してカレンダークライアントに登録したり、自分で作成したカレンダーをiCalから公開したりすることもできる。

カレンダーの公開入力。iCalから可能になっている

何よりカレンダークライアントが自由に選択できるようになるのが利点だ。使い慣れたクライアントソフトウェアを使いつつ、その情報が共有できれば業務効率も向上するだろう。

いかがでしたか?

スケジュールはイベントや休みに合わせた旅行の計画など、楽しい情報がたくさん詰まった面白いツールだ。さらに他人と共有できると、同じ空間をともに楽しめるようになるかもしれない。企業内の情報はおいそれと公開できないが、個人の予定であれば公開してみることで新しい出会いも生まれそうだ。

また、携帯電話やPDAなど多彩なデバイスが登場している現在にあっては、そのデータの同期や流用性が大事になる。Webベースであればそうした問題はないが、閲覧するのにネットワークが必須になってしまうといった問題もある。同期する仕組みを用意することで、複数のデバイスやオフラインでも便利に活用できるになる。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。