Hyper-V環境を事前検証済みの「Hyper-V 仮想化 太鼓判構成」

日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 プライベートクラウド製品部 シニアプロダクトマネージャ 原田英典氏

IAプロセッサの性能向上は目覚ましく、現在では物理サーバを単一のワークロードの処理に専念させる構成ではオーバースペックとなってしまう状況が普通になってきている。このため、仮想化技術によって1台の物理サーバ上に複数のワークロードを共存させて効率化を図る「サーバ統合」が進みつつある。

しかし、仮想化インフラという新たなレイヤが加わることによるシステムの複雑化や運用管理手法の変化などに懸念を抱くユーザーもいる。

こうした不安を解消するため、ベンダー側もさまざまな対応を行っている。日本アイ・ビー・エムの「Hyper-V 仮想化 太鼓判構成」もその1つだ。同ソリューションは、System xサーバをベースに、Windows Server 2008 R2のHyper-V仮想化環境の稼働検証済みの「太鼓判」構成として提供するものだ。

比較的小規模向けとなるSystem x3200 M3タワー型サーバの構成と、大規模環境にも対応するSystem x3650 M3/x3690 x5/BladeCenter Sによる構成が用意されており、ユーザーの用途に応じて適切なモデルを選択できる。Hyper-V稼働確認済みのハードウェア構成に加え、各構成のセットアップ/導入手順書も用意され、さらに充実したサポート体制も提供される。

「仮想化環境のプラットフォームとして適切なハードウェア構成をどうやって選んだら良いかわからない」というユーザーにとって、安心して選択できる間違いのない推奨構成となるはずだ。構成例には「今すぐ仮想化」といった基本的なものから、「今すぐ仮想化」ライブ・マイグレーション構成のような高度なものまで豊富に揃っているので、すでに仮想化環境の構築/運用経験があるユーザーにとっても利用価値が高いだろう。

「Hyper-V 仮想化 太鼓判構成」で初期導入時点のハードウェア構成に関する不安は解消できるとしても、その先の運用管理体制についても心配するユーザーは少なくないと思われる。その点については、Hyper-Vの開発/提供元であるマイクロソフトの運用管理ツール「Microsoft System Center」を活用することで解消できるだろう。

System Centerファミリーには、それぞれ管理対象や目的とする作業が異なる複数製品が用意されている。主な製品としては「System Center Configuration Manager」「System Center Operations Manager」「System Center Data Protection Manager」「System Center Virtual Machine Manager」の4種があり、名称からわかるとおり、仮想環境の管理はSystem Center Virtual Machine Manager(SCVMM)が対応する。本稿執筆時点での最新バージョンは「SCVMM 2008 R2」となる。

今回、System Centerについて、日本マイクロソフトのサーバープラットフォームビジネス本部 プライベートクラウド製品部 シニアプロダクトマネージャの原田英典氏に聞いた。

仮想サーバと物理サーバを一元管理可能な「SCVMM」

仮想環境の運用管理において負担が増える原因の1つは、管理対象のレイヤが増えることにある。まず、仮想化ソフトウェアの運用管理は、物理サーバの時代には存在しなかった作業なので、その分が増えてしまうのは当然だ。

また、仮想サーバではOSが把握できる情報が物理サーバ時代とは変わってくるという問題もある。「物理サーバ時代は、OSからハードウェアリソースの状況をかなり正確に把握することができたが、仮想サーバでは、OSが管理しているのは仮想化ソフトウェアによって割り当てられたリソースで、物理サーバのリソースは仮想化されているため正確に把握することは不可能。そのため、OSからは十分なリソースが割り当てられていて問題ないように見えても、実は仮想サーバのリソースは逼迫している、ということも起こりうる」と、原田氏は指摘する。

運用管理担当者がシステムの稼働状況を正確に把握するには、従来のようにOSの情報を収集するだけでなく、仮想化ソフトウェアが管理する情報も参照して両者を総合して判断を下さなくてはならない。

仮想化された環境には、物理サーバと仮想サーバのそれぞれに向けた運用管理ツールが用意されているのが一般的だが、従来のシステム管理手法と独立した仮想化環境のみに対応したツールだと、両者の統合は運用管理担当者の作業となってしまう。

SCVMMでは、従来の物理サーバの管理に対応したモジュールと連携して、仮想環境をプラットフォームである物理サーバのレベルと、その上で稼働する個々の仮想サーバのレベルでそれぞれ情報を取得し、一元的に管理できる。これは、物理サーバを対象とした管理ツールにおいて長い経験を持つ同社の強みが生かされている部分でもある。

「System Center Virtual Machine Managerでは、System Center製品群と連携することにより、物理サーバと仮想サーバの情報を一元的に管理できるので、運用管理担当者は、仮想サーバと物理サーバとで異なる運用管理ツールを使い分けるといった負担を強いられない」(原田氏)

また、同氏は「マイクロソフト製品だからといってHyper-Vのみをサポートしているわけではない」と話す。SCVMMはヴイエムウェアの管理ツールと連携してVMwareの仮想化環境の運用管理も統合できるので、複数の仮想化環境を混在させているような大規模環境でも効率的な管理が可能というわけだ。

「メンテナンスモード」で円滑な計画保守を実現

一方で、Hyper-Vと密接に連携した運用管理が可能なのはやはり開発元が同一であることのアドバンテージと言える。

例えば、SCVMMはHyper-Vに実装されている「ライブ マイグレーション」にも対応しており、動作要件の検証機能なども提供する。また、クラスタ構成にも対応しており、ライブ マイグレーションを利用した「メンテナンスモード」も備える。これは、メンテナンスなどの都合で物理サーバを停止させる機能がある場合、そのサーバ上で稼働する仮想サーバを別のサーバ上にいったん待避しておき、サーバが稼働再開したらまた元に戻すという機能だ。

「クラスタ機能を使えば、サーバに障害が発生した際にスタンバイ側に処理を移すことはできるが、復旧に手間が掛かってしまう。メンテナンスモードを使えば、仮想サーバの移動から復旧までを一連の処理として実行できるため、運用管理の負担が軽減される」と、原田氏はメンテナンスモードのメリットを説明する。こうした機能も、クラスタソフトウェアとの連携が取れているから実装できるわけだ。

仮想サーバの移動から復旧までを一連の処理として実行可能な「メンテナンスモード」

物理サーバのリソース監視は、「System Center Operations Manager」との連携によって高度な機能が実現されている。PRO(Performance and Resource Optimization)と呼ばれる機能では、Operations Managerでパフォーマンス状況の監視を行い、その情報をもとにSCVVMと連携してリソースを最適化することができる。さらに、ハードウェアに対応したPRO対応管理パックの導入により、詳細な情報を取得することが可能だ。

System Center Virtual Machine ManagerとSystem Center Operations Managerの連携の仕組み

仮想化環境への移行に必要な機能も充実

なお、仮想化環境への移行の段階で重要になるのがP2V変換機能だ。これは、物理サーバ上に構築された環境のスナップショットを作成して仮想サーバに変換する機能だが、同社ではP2V変換機能を単なるオマケ的な扱いではなく、製品の正式な機能として位置づけ、アップデートや修正をこまめに行っているという。「ユーザーから、P2V変換機能によってトラブルがあったといった報告があれば、ソフトウェアの不具合として修正を行っている」と原田氏。

この結果、P2V変換の精度は高くなっており、失敗することは少なくなっているという。なかには、P2V変換を重要視していないため、そのメンテナンスをあまり行わない仮想化ソフトウェアベンダーもいるが、ユーザーのP2V変換のニーズは高いそうだ。こうしたユーザーのニーズに即した細かな機能の品質の高さも、仮想環境への移行支援において重要な要素となる。

仮想環境では、運用上のトラブルが生じた場合も、トラブルの切り分けや原因究明が複雑化する傾向がある。もちろんこれは、従来は存在しなかった仮想化ソフトウェア(ハイパーバイザ)という新しいレイヤがシステムに加わるためだ。しかし、適切な運用管理ツールを使うことで負担増を最小限に抑えられる。特に、ExchangeやSQLなどのMSワークロードを仮想化する時は、Hyper-Vを合わせて使うことによりサポートサービスをマイクロソフトからワンストップで受けられ、問題解決をスムーズにすることが可能だ。

また、システムの運用管理ではハードウェアの情報を的確に収集することも重要となるため、運用管理ツールのベンダーとハードウェアのベンダーで協業関係が確立されていないとユーザーの負担が増えてしまう。Hyper-V 仮想化 太鼓判構成を用意してHyper-Vの稼働検証を行っているIBMとマイクロソフトは協調関係を築いており、その点でも仮想化環境への移行を考えるユーザーにとって、両社によるパッケージは安心して選択できる組み合わせであろう。