本連載では、Twitter Japan(以下、Twitter)の協力のもと、季節や特定のイベントに関するツイート内容と、その盛り上がり状況の解析に基づき、Twitterのトレンドを活用したマーケティング手法について考えていきたいと思います。

2本で1セットとし、前編では、Twitterでリサーチャーを務める櫻井氏に監修を依頼し、特定テーマに関してTwitterのトレンドを分析してもらい、インフォグラフィックで分かりやすく解説していくほか、このインサイトを活かしたプロモーションプランを提案していきます。一方、後半では、マイナビニュース編集部が実際に当該テーマに関してTwitterを積極的に活用する企業に取材を行い、その事例をインタビュー形式にて紹介していく予定です。

第5回となる本稿では、Twitterのトレンド欄にも頻出する話題である「アイドル」に関連したツイートを分析。どんなインサイトがあり、マーケターがそれをどのようにプロモーションに役立てることができるのか、提案していきます。

ツイートの分析から見えてくる、アイドルファンの姿

今回、キャラクターが明確に異なるアイドルを選び、Twitter上のファンの行動がどのぐらい変わるかをみてみました。前提条件として、1)キャラクターが明確で比較しやすいこと、2)一般名詞が名称に含まれるとノイズが多くなること(ただしノイズを整理しやすい場合はその限りではない)の2点を考慮し、「嵐」「EXILE」「AKB48」「うたの☆プリンスさまっ♪(以下うたプリ)」「ラブライブ!(μ's)」の5グループを分析対象としました。

分析の結果、各アイドルについてツイートしているアカウントの数は、多い順に「嵐」「AKB48」「ラブライブ!」「EXILE」「うたプリ」 となりました。ただし、「嵐ファンです」「うたプリ垢」など、プロフィールでファンであることを公言しているような、いわゆるファンアカウントに絞るとこの順位に変動が見られ、「嵐」「EXILE」「ラブライブ!」「AKB48」「うたプリ」の順になりました。

「アイドルを起用して企画を作る際には、そもそも起用するアイドルによってどれくらいのファンの心を掴めるかが重要です。その際には、ツイートされているボリュームも参考になるかと思いますが、同時にファンアカウントがどのくらいあるのかも考慮すべきでしょう。例えば『ラブライブ!』はツイートの数でこそAKB48に負けるものの、ファンアカウントの数はAKB48よりも多いことがわかります。ラブライバーが盛り上がったときの爆発力はAKB48と同等、もしくはそれ以上が期待できるかもしれません」(櫻井氏)

さらに、ファンアカウントに絞ってツイートの中身を分析したところ、「嵐」に関するツイートには@返信が多用されていることがわかりました。「EXILE」はリツイート率が高く、リツイートによって公式アカウントからの情報がファンの間で瞬時に共有されているようです。逆に「AKB48」や「ラブライブ!」に関するツイートは@返信やリツイートでない「ひとり語り」の率が低く、仲間内で盛り上がったり情報共有をするというよりは、ひとりで熱く語るパターンが多いようです。

「アイドルを起用するキャンペーンを企画する場合、そのファンたちがTwitterでどのようにコミュニケーションしているのかを参考にするといいでしょう。リツイートキャンペーンが良いのか、あるいはアーティストのアカウントからの第三者ツイートによってメッセージを送るのが良いのか、あるテーマについてのハッシュタグを提示してファンの間での会話を盛り上げるのが良いのかは、ファンコミュニティがどのようにコミュニケーションしているのかを理解すると、ヒントが見えてきます」(櫻井氏)

ツイートの内容から見えてくる、アイドルファンの姿

次に、「CDやDVDを買った」「ライブに行った」「グッズを買った」「イベントに行った」「テレビでアイドルを観た」などのトピック別にツイートを分析し、5グループのツイート数を比べてみました。結果、ファンイベントは「AKB48」、ライブやコンサートについては「嵐」「EXILE」といった、いわゆる「3次元アイドル」が強いものの、グッズについては「うたプリ」「ラブライブ!」の2組の「2次元アイドル」だけでが過半数を占めることがわかりました。

「2次元アイドルと3次元アイドルで、ツイートされるテーマが異なることがわかります。3次元アイドルであれば、ライブやイベントなどで「観れた」「会えた」という感動のタイミングがツイートが生まれるチャンスですが、2次元アイドルはグッズ化が容易であり、それそのものがコンテンツとしてツイートされやすい、ということが強みであると言えるでしょう」

これらのツイートについて、前出した「ファンアカウント」に絞ると、アイドルについてツイートしている一般的なアカウントに比べて、「CD買った」「グッズ買った」「イベント行った」といったツイートをしている割合が1.3倍から3.0倍ほど大きくなることがわかりました。

「また、なぜそのようなツイートをしているのかを理解することが重要です。単純にアイドルとコラボした企画を宣伝してもTwitterが盛り上がるとは限りません。アイドルファンたち、特に熱狂的なファンたちは、なぜツイートをするのかをよく考えましょう。例えば、アイドルに自分の声を届けたい、アイドルについての情報を仲間と共有したい、こんなグッズがあるよと他のファンに教えてあげたい、コンサートなどでの感動を他のファンと分かち合いたい、それらのモチベーションに沿って、ツイートを促す企画をすることにポイントがあるようです。」

最後に、アイドルコミュニティをテーマに、テレビとTwitterの親和性をみてみましょう。例えば、音楽番組に出演した日には、そのアイドルに関するツイートは、平均して普段の2倍まで増加することがわかっています。さらに、音楽「特番」の出演時は特にツイートが盛り上がるチャンスで、歌が始まったタイミングから5分間で、番組放映中のそれ以外の時間帯に比べて、ツイート数は平均して8.7倍まで増加します。

「マーケティング活動に起用しているアイドルやキャラクターがテレビ出演する日は、効果的な施策を仕掛ける絶好機と言えるでしょう。テレビ出演情報(例えば音楽番組やバラエティー番組)は事前に把握できるものなので、マーケターの皆さんは予め計画を立ててみてはいかがでしょうか。音楽番組にスポンサーをしているようであれば、テレビ番組の内容や、その番組中のCMコンテンツと連動したキャンペーンを仕掛けることもできるかもしれません。番組のスポンサーでなくても、Twitterの広告メニューを活用すると、そのテレビに関するツイートに反応している人に対してツイートを配信したりするなどのチャンスも広がります。適切なタイミングを捉えることで、アイドルコミュニティを大きく盛り上げるような企画を考えてみてください。マーケティングの可能性が大きく広がるでしょう」(櫻井氏)

では次回、実際に"音楽関連会社"のプロモーションとしてTwitterがどう活用されたのかをご紹介します。

執筆者紹介

Twitter Japan

米Twitter社は2006年に創立され、その役割は、アイデアや情報を生み出したり、それをすぐにほかの方々と共有するパワーを世界中の方々に提供すること。毎月3億2,000万人以上に利用されている。Twitter Japanはその日本法人となる。

監修者 : 櫻井 泰斗 (さくらい たいと)

Twitter Japan リサーチマネージャー (Twitter ID : @SakuraiTaito)
Twitter広告の効果測定やツイート分析、マーケティング施策立案を担当する。