改札口は駅ホームへの出入口。利用者のきっぷを確認する場所だ。改札機に正しいきっぷを入れないとゲートが閉まるし、ICカード乗車券を使う場合は正しくタッチしなければならない。他の鉄道会社の路線や新幹線に乗り換えるときは、駅の中にさらに改札口がある。これは中間改札口と呼ばれる。新幹線のきっぷを持っているか、あるいは別の会社に乗換え可能なきっぷや定期券を持っているか、確認する必要があるからだ。

つまり、中間改札口の多くは、「新幹線と在来線の境界線」「鉄道会社の境界線」に設置されている。例外として、新宿駅や上野駅に特急列車専用ホームがあったとき、特急券をチェックするため、ホーム入口に中間改札口が設置されていた。しかし基本的には、同一の鉄道会社で路線を乗り換える場合は中間改札を設置しない。きっぷは発駅から着駅まで通しで買えるし、路線ごとに運賃体系が異なるわけでもないからだ。

JR鶴見駅。在来線同士の中間改札がある珍しい駅である(写真はイメージ)

ところが、JR在来線の普通列車同士、私鉄でも同じ会社線内の乗換えで中間改札を設置した駅がある。なんとも面倒な話だけど、それぞれに事情があるようだ。

関東でJR在来線同士の中間改札がある駅は鶴見駅だ。京浜東北線と鶴見線の乗換駅で、どちらもJR東日本の路線だけど、鶴見線ののりばの近くに改札口がある。ここは鶴見駅まで有効な乗車券を持っていれば通れる。鶴見線から京浜東北線の駅に行く場合、あるいは逆方向に行く場合も、中間改札口を通る必要があるだろうか?

鶴見線の中間改札口には歴史的な背景がある。鶴見線はもともと独立した会社の路線だった。1926(大正15)年に鶴見臨港鉄道として開業した。当時の京浜東北線の管轄は鉄道省だったから、乗換駅となる鶴見駅には、「他の鉄道会社の境界」としての改札口が設置された。

鶴見臨港鉄道は1943年に戦時買収によって国有化され、後に日本国有鉄道、現在のJR東日本へ引き継がれた。国有化された時点で中間改札口は不要になったけれど、そのまま残されていた。そしてこれが役に立つときが来た。1971年、国鉄は合理化のため、鶴見駅以外の鶴見線の駅を無人駅とした。各駅にきっぷの販売機は設置されたけれど、きっぷを買わずに乗車できてしまう。

そこで、鶴見線の乗客については鶴見駅でまとめて改札しようというしくみになった。鶴見線は線内の利用者が少なく、ほとんど鶴見駅までやって来て、京浜東北線に乗り換える。だから鶴見線自体をひとまとまりとして、鶴見駅を出入り口と考えた。

JR西日本・東武鉄道・名古屋鉄道にもある

鶴見駅はJR在来線同士の乗換えで中間改札を通る珍しい駅となったが、こうした駅は他にもある。JR西日本の兵庫駅、東武鉄道の西新井駅、名古屋鉄道の大江駅だ。ちょっと特殊な例として、JR東日本の西船橋駅もある。

東武鉄道の大師前駅。都内の大手私鉄の無人駅。改札口はない(写真はイメージ)

兵庫駅は山陽本線(JR神戸線)と山陽本線支線(和田岬線)の乗換駅。和田岬線ホームの入口に改札口がある。和田岬線ホームへの入口はここだけだから、兵庫駅から和田岬線だけ利用する人にとっては、駅改札口と中間改札口の計2回も改札を通る必要があり、面倒な話だ。その理由は、和田岬線は次の和田岬駅が終点で、和田岬駅が無人駅だから。鶴見線と同じで、改札や精算を兵庫駅に集約している。

西新井駅は東武スカイツリーラインと大師線の乗換駅。大師線ホームへの連絡通路に中間改札口がある。理由は兵庫駅と同じ。大師線は次の大師前駅が終点で無人駅となっている。もちろん改札口はない。西新井駅から大師線だけ利用する人は、西新井駅の改札口と中間改札口を通る。これも兵庫駅と同じだ。

大江駅は名鉄常滑線・築港線の乗換駅。築港線は次の東名古屋駅が終点で無人駅。築港線ホームへ向かう連絡通路に改札口がある。こちらも「兵庫駅方式」である。

JR在来線同士だけど他社線ホームを利用する西船橋駅

JR東日本の西船橋駅は、先に挙げた駅とは事情が違う。総武線各駅停車と東京メトロ東西線を結ぶ通路に中間改札口がある。会社の境界線として、普通に設置される中間改札口だ。ところが、東京メトロ東西線と総武線各駅停車は、平日の朝夕ラッシュ時だけ直通列車が運転されている。総武線の西船橋~津田沼間で東京メトロ東西線の電車が直通する。

この直通電車は西船橋駅で東京メトロ東西線のホームを使用する。よって総武線だけ利用して西船橋駅で乗り継ぐ場合、この中間改札を通るわけだ。もっとも、総武線は運行本数が多く、東西線への直通電車のほうが少ない。わざわざこんな乗り方をする人は少ないだろう。もしいるとすれば、「津田沼方面から総武線で都心方面へ乗ったつもりが、間違えて東西線直通に乗ってしまい、西船橋駅で気づいたとき」という稀な状況だろう。

中間改札口は鉄道会社の境界線を明確にする役割があるけれど、地方に行くとJRと私鉄(第3セクター鉄道を含む)が接続する駅で中間改札がないケースがある。むしろこちらの事例のほうが多い。もともと同じ会社だったり、利用客数が少なくて必要がなかったりと、事情はさまざまだ。

じつは西船橋駅も、もともと中間改札口はなかった。稀な例とはいえ、総武線を乗り継ぐときに、どのホームも同じように利用できた。中間改札口が設置された理由は、ICカード乗車券の精算のためだ。東京メトロ東西線は東側の西船橋駅で総武線各駅停車と接続し、西側の中野駅で中央線に乗り入れる。

つまり、中野駅からさらに西側と、西船橋駅から東側を結ぶルートを利用した場合、JR東日本の電車だけ利用したか、中間で東西線を利用したか判別できなかった。中間改札口ができるまで、この場合は全区間をJR東日本に路線を利用した扱いとなっていた。しかし、運賃は東京メトロ東西線経由のほうが安い。中間改札を設置したおかげで、安いルートを利用した場合、実際のルートで精算できるというわけだ。

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