E7系・W7系といえば北陸新幹線用に開発された車両だ。2015年の金沢延伸に先駆けて、E7系が長野新幹線「あさま」として走り始めた。デザインコンセプトは「"和"の未来」とのこと。その外観の特徴といえば「ブルー」だ。先頭から屋根にかけて深い青色が採用され、強い印象を与えた。E5系の「グリーン」、E6系の「レッド」と同格の個性を発揮する。このE7系・W7系のブルーは「空色」と名づけられた。空色は車体の帯にも使われており、銅色と組み合わせて日本の工芸品をイメージさせている。

JR東日本の北陸新幹線用車両は「E7系」。JR西日本版は「W7系」となる

客室では、グリーン車に「群青色」を使っている。床とシートを濃く、深みのあり、なおかつ鮮やかな青とした。暖色系でまとめた普通車に比べると落ち着いた雰囲気で、高級感もある。

加賀・前田家の別邸「成巽閣」をイメージ

「空色」と「群青色」。このふたつのブルーについて、2013年12月23日付の北國新聞が「E7系・W7系」のデザインチームに取材している。

普通車は暖色系

グリーン車は群青色でまとめられている

「空色」は、実際にデザイン担当者が小松や富山で見た空の色をイメージしたとのこと。それまで、「北陸といえば曇り空」という印象を持っていたところ、宇宙まで見通せそうな空の色を見て忘れられなかったという。E7系・W7系の空色は、北陸のイメージを一新する力があると思う。北陸と首都圏が結ばれる未来への期待感が込められている。

グリーン車の「群青色」は、金沢市内の「成巽閣(せいそんかく)」がモチーフになったとのこと。成巽閣の「群青の間」と、そこに続く所見の間は、天井や壁に色鮮やかな群青色をあしらっている。これがスタッフに強烈な印象を与えたという。そこに配された装飾や工芸品などの組み合わせは、車体色の「空色」と「銅色」の組み合わせにも影響しているかもしれない。

「成巽閣」は加賀藩11代藩主で前田家12代当主の齊廣(なりなが)が、奥方のために建てた別邸だ。兼六園の中央にある。後に齊廣の息子の13代当主齊泰(なりやす)が、母のために装飾を施した。その建物が現在も残されている。群青色は加賀藩前田家の他には許されなかったという。高貴であり、質素に見えて豪華な群青色は、加賀藩前田家を象徴する色として、現在も金沢市の高級旅館などで採用されているようだ。

こんなエピソードを知ってしまったら、E7系・W7系のグリーン車に乗って金沢へ行き、そのデザインの由来となった「成巽閣」を訪れてみたくなる。2015年春の北陸新幹線金沢開業が待ち遠しい。