2015年春に「上野東京ライン」が開通する。当初は「東北縦貫線」という仮称で建設されていた線路で、上野駅と東京駅を結ぶ。この区間の山手線、京浜東北線、東北新幹線に続く第4の複線となり、東海道本線と東北本線(宇都宮線・高崎線・常磐線)が直通する。じつはこの線路、新規路線ではなく、過去にあった路線の復活にあたる。東海道本線と東北本線の長距離列車が直通した時期もある。

東京駅。かつて上野駅を結ぶ長距離列車用線路があった(写真はイメージ)

1983年まで、東北本線の長距離列車用線路は東京駅に接続していた。それは当然のことで、そもそも東京駅は、上野駅を起点としていた日本鉄道と、新橋駅を起点としていた官営鉄道を直通するために建設された。だから東京駅開業以降、東北本線の起点は東京駅である。

もっとも、当初、東京駅に乗り入れた旅客列車は山手線電車だけだったようだ。東北本線の長距離列車はずっと上野駅を起点とし、上野~東京間の列車用線路は回送列車や貨物列車が使っていた。東京駅八重洲口の新橋駅寄りには転車台があったそうだから、上野駅発着列車の回送と折返しにも使われたかもしれない。

1946年から東北本線の長距離列車の一部が東京駅を発着している。優等列車を中心として、東海道本線に乗り入れた。きっかけは横浜駅発着の占領軍専用列車だったという。1967年公開の映画『喜劇 急行列車』では、東京駅列車ホームに掲げられた時刻表に、「急行 湘南日光 伊東行」の文字がある。「湘南日光」は伊東線伊東駅と日光線日光駅を結ぶ列車で、1961年から準急列車として走り始めた。その前身の準急「日光」は当初、上野駅発着だった。しかし、東武鉄道の電車特急に対抗するため、1957年に東京駅発着となっている。

東北新幹線用地として線路は撤去された

このように、もともと上野~東京間には長距離列車用の線路があった。しかし、1973年に定期旅客列車の運行は終了。1983年には貨物列車、回送列車も運行を終了する。東北新幹線を上野駅から東京駅まで延伸するにあたり、用地を転用することになったからだ。秋葉原~神田間の線路は撤去された。

残った線路のうち、秋葉原駅付近は電車の留置線として使われた。1979年刊行の『時刻表名探偵』(石野哲著、日本交通公社)によると、通勤ラッシュ時の輸送障害対策として、突発応援用の通勤電車が秋葉原駅の留置線に待機していたという。東京駅付近では折返し列車の引上げ線として使われていた。東京駅発九州方面行きの寝台特急のほとんどは東京駅構内で機関車を前後に付け替えていたが、一部の列車はいったんこの引上げ線に進み、機関車を付け替えていた。

その後、山手線・京浜東北線の混雑緩和のため、そして上野駅での乗換えの不便さなどを理由として、宇都宮線・高崎線の東京駅乗入れ復活の要望が高まった。そこで2000年に当時の運輸省(現在の国土交通省)の諮問機関である運輸政策審議会が、東北縦貫線を「2015年度までに開業すべき」と答申した。これが現在の「上野東京ライン」整備のきっかけとなった。東北新幹線の高架区間は、将来に在来線を復活させる可能性を見越して、さらに上層に高架線を設置できる設計にしていたという。

「上野東京ライン」の完成で、東海道線と宇都宮線・高崎線・常磐線の直通運転が始まる。いったいどんな列車が走り始めるだろう? 新幹線の高架の上だから、都心の景色の見晴らしがいいはず。「湘南日光」の復活、あるいは特急「踊り子」の大宮・高崎発着が可能になるかもしれない。特急「草津」の東海道線方面からの直通列車、寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」の北関東発着もアリかも。もしかしたら、高崎方面から小田原あたりまで蒸気機関車が走ったりして……。空想するだけでも楽しい。2015年3月のダイヤ改正が楽しみだ。