「スロープカー」という乗り物をご存知だろうか。モノレールの仕組みを応用した乗り物で、営業や運用にあたってはエレベーターに準じている。「有料で人を運ぶシステム」だけど、法律上は鉄道という扱いにはならないらしい。

スロープカーは全国の観光地に設置されている。東京では、JR王子駅そばの飛鳥山公園にある「アスカルゴ」がそれだ。2009年から稼動し、公園の施設の一部として無料で利用できる。いわば"斜めに動くエレベーター"だ。

飛鳥山公園のスロープカー「アスカルゴ」

ウェスパ椿山の「しらかみ号」」

スロープカーが全国の鉄道ファンに注目されたきっかけは、2000年に青森県のJR五能線、ウェスパ椿山駅に隣接するリゾート施設に設置されたスロープカー「しらかみ号」だ。五能線は日本海を望む景色が素晴らしいと鉄道ファンに人気の路線。その沿線に小さなモノレールが登場すれば、鉄道ファンの関心を集めるのも当然だろう。

全国の鉄道路線を乗り潰そうという「乗り鉄」たちにとって、「あのモノレールは鉄道なのか。法律上、鉄道に分類されるならば、ゲーブルカーと同じようにすべて乗らねばならぬ!」というわけで、しらかみ号をはじめとするスロープカーが鉄道か否かと話題になった。

結論としては、このスロープカーは「どう見てもモノレールだけど、鉄道事業法には該当しない乗り物」になるそうだ。

このコラムの第72回で、東京モノレールや大阪高速鉄道などのモノレールはコンクリート製の線路だが、法律上は鉄道と紹介した。その理由は「特定の線路を用いて、人や物を運ぶ事業」だから。また、第89回では、上野動物園のモノレールは遊具ではなく鉄道だと紹介した。動物園内にあるとみえて、じつは西園と東園の間に公道があるため「運ぶ事業」に相当するからだ。

アスカルゴは飛鳥山公園の敷地内にあり、無料でもあるため、「運ぶ事業」とはならないことは納得できる。アスカルゴの利用案内の看板には「遊具ではありません」とも明記されているから、エレベーターのような扱いだろう。

しかしウェスパ椿山の「しらかみ号」は有料だ。しかも国道101号線の上空を跨いでいる。それでも鉄道とは見なされない。その理由は、「しらかみ号」のチケットは展望台の入場とセットになっていて、片道だけの利用が出きず、元の場所に戻ってくるしかないからだろう。これでは「他の敷地に運ぶ」にはならない。

敷地内のエレベーター扱いなのに料金を取るのか? と思うかもしれないが、高層ビルの展望フロア行きエレベーターだって有料の場所もあるし、神奈川県の江の島にある「江の島エスカー」は有料のエスカレーターである。これらと似たような扱いだと考えたほうがわかりやすいかもしれない。

スロープカーは京都府の天橋立など観光地に多く登場している。最大50度の登坂能力を持ち、ジャイロ機能を搭載して常に床を水平に保つなど技術的にも興味深い。小型でも運用できるという特徴から、導入先は公共の場所だけではない。旅館やゴルフ場、墓地など導入先は多岐に亘り、「温泉の女性用風呂行き専用」という事例もある。

個人宅への導入事例もあるというから、よかったらおひとついかがですか?