機関車は単体では役に立たない。客車や貨車を連結して列車となってこそ役に立つ車両である。ところが、電車ばかり運行している都営地下鉄は、動軸が8つの大型機関車「E5000形」がある。動軸4つの機関車を背中合わせに連結した構造で、190kwのモーターを4機搭載している。最高速度は時速70km。「E5001号+E5002号」と「E5003号+E5004号」が都営浅草線の馬込車両基地に所属している。

都営地下鉄E5000形機関車

鉄道会社が機関車を保有する理由は「営業路線で客車や貨車を牽引するため」「除雪車など保線用の車両を牽引するため」「車両基地で電車の編成を入れ替えるため」などだ。このうち、保線車両や入れ替えは、モーターカーと呼ばれる小型車両を使うようになった。現在、大型機関車の役割は客車や機関車の牽引に絞られている。

都営地下鉄の場合、除雪の機会はほとんどない。入れ替え用の機関車は別途保有している。つまりE5000形は営業路線用の機関車である。では、この機関車は営業路線で何を牽引するのだろうか。

大江戸線の電車を浅草線で運ぶための機関車

E5000形機関車の用途は、大江戸線用電車の牽引だ。E5000形は、大江戸線の電車を浅草線の馬込車両基地に運ぶために製造された。

鉄道用車両も車と同じで、定期的な点検が行われる。ところが大江戸線には電車を点検する工場設備がない。そこで、浅草線の馬込車両基地で点検を受ける。そのため、大江戸線の汐留駅と浅草線の新橋駅付近を結ぶ線路が作られた。大江戸線と浅草線は線路の幅が同じ。大江戸線の車両のほうが小さいから、大江戸線の電車は浅草線に乗り入れ可能だ。

ただし、大江戸線の電車は浅草線を自走できない。大江戸線はリニアモーター式といって、線路上の電磁石と台車側の電磁石の作用で走る。しかし浅草線には線路側の電磁石がない。そこで、E5000形機関車の登場となる。大江戸線の電車が汐留の引き上げ線に停車すると、E5000形に連結され、浅草線を走行して馬込基地までいくのである。

都営浅草線用の台車。車輪が大きく空気バネを搭載している

大江戸線の台車はリニモーターを搭載。車輪が小さい

E5000形は大江戸線内も走行できるように、浅草線の電車より車体が小さい。また、パンタグラフも大江戸線用と浅草線用を搭載している。連結器は上下2段の切り替えが可能で、大江戸線の電車だけではなく、浅草線の電車も牽引できるという。

E5000形機関車の連結器部分