電車の屋根上にあるパンタグラフが減っているという。数えてみれば、山手線は3個、中央線は4個、総武線各駅停車は2個、京浜東北線は4個。山手線は11両編成で、他は10両編成だ。電車の車両数に関係あるようでなさそう。さて、パンタグラフの数はどのようにして決まるのだろう。そして、数が減っている理由とは何だろうか。

中央線快速(E233系)のパンタグラフは4個

総武線各駅停車(E231系)のパンタグラフは2個

電車の進化に合わせて増減している

パンタグラフは電車のモーターに電気を取り込む装置だ。だから電車1両につき1個のパンタグラフが必要だ。1両で走る路面電車のパンタグラフは1個である。無ければ走らないし、2個は必要ない。昔の電車は1両につきパンタグラフ1個が原則だった。通勤電車で3両編成の場合は、各車両に1両、合計3個のパンタグラフが必要だった。

しかし、電車の性能が向上すると、つながっている車両すべてにモーターを搭載する必要はなくなった。モーター付き車両が1両とモーターなしの車両1両をつないで、問題なく走れるようになった。こうなると2両編成でパンタグラフ1個というパターンになる。勾配がきつかったり、乗客が多いという場合は、3両編成でモーター付き車両が2つという場合もある。こうして「1編成の車両の数よりもパンタグラフが少ない」という状態が当たり前となった。

さらに技術が進んで「モーター付き車両を2両1組で設計し、パンタグラフや変圧器などの機器を共用する」という考え方になった。これを「2両1ユニット方式」という。10両編成の通勤電車の場合、2両1ユニットを3組、モーターなし車両4両とすれば、パンタグラフは3個で済む。「2両1ユニット」は最近まで長編成電車列車の標準だった。初代東海道新幹線の「0系」も2両1ユニット方式だった。しかも、スピードアップのためすべての車両がモーター付きだった。そのため、16両編成でパンタグラフが8個も付いていた。

ところが、さすがに8個のパンタグラフが一斉に動くと騒音が大きく、架線とパンタグラフが離れたときのスパークも問題となった。そこで、後の新幹線車両では、編成全体に高圧線ケーブルを通し、パンタグラフをすべてのモーター付き車両で使えるようにした。東海道新幹線の最新型「N700系」は16両編成で、パンタグラフは2個しかない。これも、本来はひとつで足りるけれど、振動などでパンタグラフが架線から離れた時のための予備として使っているとのこと。最近「はやぶさ」の名前が付いた東北新幹線「E5系」は10両編成で2個のパンタグラフを備えている。このパンタグラフは架線から離れにくい最新型のため、実際の走行では1個しか使わず、1個は予備としてたたんでいるという。

新幹線のパンタグラフは8個から2個へ。騒音も軽減された

ところで、最初に示した中央線快速(E233系)のパンタグラフは4個もある。隣の総武線各駅停車(E231系)は2個。先にデビューした231系よりも、あとから登場したE233系のほうがパンタグラフの数が多い。時代に逆行しているようだ。これは、E233系のコンセプトが「機器の二重化」だから。E231系はN700系と同じで、架線から離れた時の予備としてもうひとつ搭載して2個となった。233系は、電気系統が故障したときのために、さらにもうひと組の予備系統を装備している。だから4個。本当はどちらもパンタグラフ1個で走行できる。