4ドアの通勤電車を横から見ると、端から窓と扉が交互に並ぶ。扉と扉の間の窓は大きいけれど、車両の端の窓は小さい。端の窓の部分はシートも狭い。これはなぜだろうか。窓もシートも、すべて同じ大きさにしたほうが外観もスッキリするし、部品も統一できて製造コストを下げられそうだが……。
この連載の第1回で、電車が銀色になった理由のひとつはコストを下げるためだと紹介した。電車に限らず、あらゆる工業製品はコスト削減の工夫をしている。部品の共通化して大量生産するという手法はその王道と言ってもいい。電車の窓だって、すべて同じ大きさにしたほうが安くなるはず。シートも然り。しかし、通勤電車の車体の端は、窓も小さくシートの幅も狭い。あのシートは優先席になっていることが多いので、「優先席を少なくするためにわざと狭くしているのではないか」と勘違いする人もいそうだ。
編成全体の扉の間隔を揃えるため
確かに、ひとつの車両だけ見ると、端の窓は小さくて不自然に見える。しかしこれには理由がある。それは隣の車両と扉の間隔を揃えるためだ。通勤電車を遠くから見ると良くわかる。編成全体で扉がほぼ等間隔で並んでいるはずだ。窓の大きさが異なる理由は、「連結したときに、扉を等間隔で並べるため」が正解だ。
通勤電車でもっとも必要な要素は、大勢の乗客をスピーディに運ぶこと。そのためには、扉の数を増やして、乗降にかかる時間を短くしたい。また、乗客が並ぶ位置を等間隔にすることで、ホームの乗客の位置が均等になり、混雑を解消させる意図もある。編成全体の扉を等間隔にするには、連結部分の幅も考慮して、車体の端の窓を小さくすればいい。
それなら、「小窓・扉・大窓・扉・大窓・扉・大窓・扉・小窓」ではなく、「扉・大窓・扉・大窓・扉・大窓・扉・大窓」とすればいいのではないか、という気もするけれど、残念ながらこれでは連結部分の扉同士の間隔が広がってしまう。現在の形がベストだと思われる。
ちなみに特急用電車は車体の端に扉がある。片方の端に扉がひとつ、または両端にひとつずつとなっている。これは客室を広くするためだ。扉のあるデッキと客室の間に仕切りをつけて、室内を静かにしたり、空調の維持したりする。扉が少ないと乗降に時間がかかるけれど、特急列車は停車駅が少ないから問題ないというわけだ。