写真はケニアのツァボ国立公園 |
東京は毎日暑い日が続いていますが、夏バテしていませんか。私は先月、ケニアに行ってきました。サファリでキリンもシマウマも見ましたが、主な目的は保健医療に関する取材で、元駐日大使、保健長官(日本の厚生労働大臣に相当します)、地域の病院などを見ました。
どんな取材だったか、[こちら]で全体像を見られます。
ケニアで乳児死亡率が高い理由
ケニアの医療上の課題は、妊産婦死亡率や乳児死亡率が高いこと、そしてエイズなど感染症で亡くなる人が多いことです。
「にゅうじしぼうりつ」って、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。生後1カ月以内の赤ちゃんが、出生1000人当たり、何人亡くなるか、という数字です。日本は本当に少なくて、わずか2.1人。一方、ケニアでは39人。背景には設備の整った病院で生まれるかどうか、という問題があります。日本では多くの人が病院で生みますから、緊急事態が発生しても対応しやすい。
一方、ケニアでは、自宅出産が珍しくないことが、赤ちゃん死亡の多さにつながっています。合計特殊出生率は3.9に達しており、生まれる赤ちゃんも亡くなる赤ちゃんも多い(多産多死)ことが分かります。
こうした状況を変えるため、ウフル・ケニヤッタ大統領は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと呼ばれる、全国民を対象にした医療保険の制度を作ろうとしています。日本では、健康保険証を出せば全国どこでも自己負担は3割程度で診察してもらえます。それと似たような制度を作ろうとしていると考えると分かりやすいでしょう。日本はケニア政府によい条件でお金を貸し、またJICAで保健分野を中心に活躍していた専門家の渡邉学さんを保健省にアドバイザーとして派遣して支援しています。
ケニアの女性ジャーナリストとの間に感じた共通点
1週間にわたる現地取材で、印象に残ったことのひとつが、現地の女性ジャーナリストとの会話でした。「日本にきたことがあって、NHKで研修を受けたのが勉強になった」と話す彼女と日本の少子化について話が及んだ時、私はこんな風に説明しました。
「日本で働く女性にとっては、子どもは0か1か、選択に悩むところ。私は2人いるけれど、仕事を続けている40代女性としては珍しい部類に入ります」 すると、ケニアの女性ジャーナリストはこう言いました。
「それは面白いわ。確かにケニアは平均すると、女性が一生に4人の子どもを産む。けれど、高等教育を受けて都市部で働く女性の考えはだいぶ違う。私の周りだと、働く既婚女性は2人か3人か悩むけれど、働く未婚女性は1人か2人か、で悩むものだから」
彼女は大手テレビ局で保健医療の問題を専門に取材する有名なジャーナリストで、話をした当時は公衆衛生の修士課程に通いながら働いていました。「ふつうのケニア女性」とは、だいぶ違います。彼女との会話はとても自然で日本の女友達と話しているみたい、と思いました。
やはり、豊かになり、女性も教育を受けて自活できる仕事の道が見つかると、子どもの数は減っていくのでしょうか。ケニアで滞在した首都のナイロビは治安が悪く、ホテルやレストラン、住宅地などは壁と鉄条網で囲まれています。「絶対にホテルの敷地内から出ないでください。散歩もダメ」と言われる環境は、夜でも女性が普通に歩いている東京とは全く異なります。
それでも、経済状況や仕事の状況が似ている年の近い女性同士は、似たようなことを考えているんだな……遠いところに来たと思っていましたが、共通点の方が多く感じられるワンシーンでした。
著者プロフィール
●治部れんげ
豊島逸夫事務所副代表。 1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。 2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。
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25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。