前回は「遠くへ行くなら普通乗車券より安いきっぷを使おう」というテーマで、往復割引乗車券、周遊きっぷを簡単に紹介した。往復割引乗車券は片道600km以上の駅が対象だ。周遊きっぷは「片道200km以上で、ゾーンが設定されている地域」が対象である。これらの対象にならない駅は普通乗車券を使う。しかし、工夫次第で普通乗車券も安くできる。今回のテーマは"普通乗車券は一筆書きがおトク"だ。
東京から仙台へ向かう場合、もっとも素直な方法は東北新幹線だ。東京 - 仙台間の乗車券は5,780円。新幹線特急券は4,810円。合計1万590円だ。往復する場合は2万1,180円となる。東京 - 仙台間は351.8kmだから、片道600km以上の往復割引は適用できない。
行きは東北新幹線 |
帰りは常磐線 |
しかし、一筆書きのようにきっぷを買うと安くなる。行きを東北新幹線、帰りを常磐線経由にして、東京都区内 - (東北新幹線) - 仙台 - (常磐線) - 東京都区内という片道きっぷを作る方法だ。きっぷの距離は718.3kmで、乗車券は9,870円となる。行きの新幹線特急券は4,810円、帰りの常磐線特急スーパーひたちの特急料金が3,030円。合計は1万7,710円だ。新幹線で往復するよりも3,470円も安くなった。もちろん逆回りも可能である。仙台行きのきっぷではないので、仙台で降りるときはきっぷを渡さず、改札口で「途中下車します」と申告する。きっぷは東京に戻るまで使うので大切に保管しておこう。
この安いルートの難点は所要時間だ。新幹線は約1時間40分で到達するが、常磐線は約4時間10分もかかる。また、常磐線特急「スーパーひたち」のうち、上野と仙台を直通する列車は1日あたり3往復だけで、日程の選択肢も少ない。それでも3,470円の差額は魅力的である。「どうせ帰りの電車は夜だから、ビールを飲んで寝ちゃおう」という人なら、新幹線より「スーパーひたち」のほうが長く眠れるだろう(笑)。鉄道旅行ファンとしては「行きと帰りで違うルートを通ったほうが楽しい」といえそうだ。ただし、有効期間には注意したい。このきっぷの有効期間は5日間だから、仙台に1週間滞在したい場合は期限切れになってしまう。
ちなみに、在来線を使うと安い。それなら……と、往復とも常磐線を使って計算すると、一筆書きよりも高くなってしまう。片道乗車券が6,090円、特急料金が3,030円、合計9,120円。往復の合計は1万8,240円だ。やはり、往復よりも一筆書きのほうがトクだ。
秘密は遠距離逓減制度にあり
どうしてこうなるかというと、実はJRの運賃制度が「長距離になるほどキロ単価が安くなる」という仕組みになっているからだ。これを遠距離逓減制度という。JR東日本の運賃表によると、1~3kmの運賃は140円だ。いわゆる初乗り運賃である。3km乗ったとすれば1kmあたり46円66銭です。次の段階は4~6kmで180円。6km乗ったとして1kmあたり30円になる。さらに先を見ていくと、60kmは950円で1kmあたり15円83銭だ。単価が半分以下になっている。600kmの場合は9,030円で1kmあたり15円5銭。このように、乗車券は距離が長くなるほど単価が安くなる。300kmのきっぷ2枚で往復するよりも、600kmのきっぷ1枚で済ませるほうが安くなっているわけだ。要するに、「一筆書ききっぷを使うと安くなることがある」。これを頭の片隅に入れておいてほしい。
ちなみに、東京 - 仙台間を往復する場合は、周遊きっぷ「山寺・松島ゾーン」も使える。乗車券は片道4,620円、往復9,240円。ゾーン券が3,300円。特急券が往復で9,620円、総額は2万2,160円。新幹線の往復よりも高くなってしまう。ただし、ゾーン券の範囲に松島や山形、新庄なども含まれるので行程によってはおトクだといえよう。
また、旅程が土日の日帰りの場合は「土・日きっぷ」のほうが安くなる。土・日きっぷは土曜日と日曜日に限り、JR東日本の南側エリアが乗り放題になるきっぷだ。料金は大人1万8,000円。中学生以上9,000円。小児3,000円とになっていた。新幹線も含めて普通車指定席を4回利用できる。土・日きっぷの詳細はこちら。
さらに、JR東日本のインターネット会員制度「えきねっと」の会員には、期間限定、列車指定の割引制度「やまびこトクだ値」がある。前回の販売期間は7月から9月まで、片道の乗車券と特急券のセットが7,260円から。往復ともこの切符を使うと1万4,520円。制限があるとはいえ、これが一番安いきっぷだといえそう。