【連載】

新・リーダーの品格

12 部下を叱る時は投げやりにならず"あなた流"で

    佐藤高史  [2009/07/15]

    人間関係、コミュニケーションによって叱り方は変わる

    「叱る時は相手を別室に連れていった方がいいのでしょうか? 皆の前で叱るのはよくない、と本で読んだことがあるのですが」という質問を受けたことがあります。確かに、筆者もそのような意見を聞いたことがありますし、ある意味納得できます。しかし一方で、ある有名な経営者が、「叱る時は時間を空けてはいけない。その時、しかも皆がいるところでもまったく気にしない」という話を耳にしたこともあります。

    叱る人間と叱られる人間の間に深い信頼関係が築かれていれば、周囲の人間の前で叱られたからといってそのまま腐ってやる気をなくす、などということもないはずです。皆の前で叱ることで、他の人たちへのアナウンス効果もあって、現場が引き締まることもあるのです。リーダーの仕事に対する真摯な姿勢が部下たちによい効果をもたらすかもしれません。

    もちろん、場を設けることの効能も間違いなくあります。別室に呼ばれることで「特別なことなのだ」ということを明確に、しかも無言でわからせることもできます。他の人がいないことで、部下も素直になって心を開き、問題解決への本質的な手がかりがつかめるかもしれません。大切なことは、叱る人間と叱られる人間の関係と、その組織が今まで行ってきたことやリーダーのコミュニケーションスタイルによって、望ましい叱り方は変わってくるということです。

    言い方も重要でしょう。同じ台詞でも、目を見ながら向き合って伝えるのと、雑誌などに目を通しながら言うのでは全然印象が違います。また、一回の叱り方だけでなく、その後のフォローも関係するでしょう。いずれにせよ、まず聞く姿勢を持つこと。そして相手を「一段上のステージに上げるんだ」という気迫、本気の度合いが、叱られる側の変化につながるのです。

    この世に万能な叱り方は存在しない

    誰にでも間違いなく効果がある、そんな叱る方法が世の中に存在するでしょうか。結論は「No」でしょう。しかし、あなた自身に合う叱り方、というのは必ずあるはずです。叱ることは、叱る方も大変な精神的苦痛を伴いますが、自分の中の基準に従って行動すれば迷いは少なくなります。これは単に「叱り方がわからない」というレベルの話ではなく、リーダーとしての覚悟の問題かもしれません。

    今、世間には「叱れないリーダー」が増えています。だからこそ、叱ることができる人間がこれから求められてくるはずです。そして、優秀な若手ほど叱ってくれるリーダーを求めています。叱るということは、判断の基準を教えようとしている、つまり育てようとしているからであり、その姿勢は部下に伝わります。放棄したり適当にやり過ごしたりするのではなく、"自分流"を確立するつもりで向き合っていきませんか。「叱る」のはあくまで指摘をすることであり、「怒る」のではないのですから。

    執筆者プロフィール

    佐藤高史 (Takashi Sato)
    株式会社コラージュ代表取締役。ビジネスコンサルタントとして人事教育・研修プログラムを数多く開発。著書「最強のプレゼンテーション完全マニュアル」(あさ出版)。

    『出典:システム開発ジャーナル Vol.4(2008年5月発刊)
    本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。

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