本連載では、ネットワーク構築に必須となるLANスイッチについて、動作や仕組みを解説しながら実際の設定例を示し、ネットワークを身近に感じていただける事を目的としています。第一回では、LANスイッチの概要と基本的な動作について解説しています。

この連載では、ネットワーク構築に必須となるLANスイッチについて、動作や仕組みを解説しながら実際の設定例を示し、ネットワークを身近に感じていただける事を目的としています。第一回の本稿では、LANスイッチの概要と基本的な動作について解説していきます。

1. LANスイッチとは?

LANスイッチは、複数の機器をネットワークに接続するために分岐させる装置です。例えば、電源コンセントが足りない場合は電源タップを使って分岐させ、利用出来るコンセントを増やすと思います。LANスイッチも同様で、分岐させて接続数を増やす目的で使われます。

電源タップの接続口はコンセントですが、LANスイッチの接続口はポートと呼ばれます。ポート数は8、16、24、48ポート等さまざまで、ポートとパソコンやサーバ間はツイストペアケーブル等で接続します。

ネットワーク上には0と1の信号を流しますが、それを通信で使えるようにした塊をフレームと呼びます。

LANスイッチは、接続された機器から送信されるフレームを分岐した他のポートに転送する役目をしています。

2. MACアドレステーブル

電源タップには各コンセントにスイッチが付いているものがあります。スイッチをOFFにすると電気が流れないため、電源ケーブルを接続したままでも余計な電力を消費せずに節約出来ます。

LANスイッチにも同様の機能があり、必要なポートだけフレームを転送することで余計なフレームが流れないように出来ます。

フレームには相手装置を特定するためのMACアドレスがあります。MACアドレスはパソコンやサーバ等に割り当てられており、世界で一意です。このため、自身のMACアドレス宛てのフレームであれば、自身への通信だと判断出来ます。LANスイッチは受信したフレームの送信元MACアドレスとポートを対にして暫く覚えています。これは何個も覚えておけるため、MACアドレステーブルと呼ばれます。

以下はネットギア製品のスマートスイッチでのMACアドレステーブル例です。送信元のMACアドレスとポート番号が確認できます。

LANスイッチはフレームが来る度にフレームの宛先MACアドレスとMACアドレステーブルを比較し、対応するポートにだけフレームを転送します。これにより、不要なポートにフレームを流さずに済むため、余計なフレームで溢れる事がありません。

LANスイッチと同様に、ネットワークへ接続する機器を増やすための装置でリピータハブがあります。リピータハブではMACアドレステーブルがないため、1つのフレームは全てのポートに分岐してしまいます。フレームが何倍にもなるため輻輳(ふくそう)と呼ばれる飽和状態になり易く、輻輳になると通信が殆ど出来なくなります。このような事から、リピータハブは今では殆ど見かけず、LANスイッチに置き換わっています。

3. LAN間のブリッジングとLANスイッチの基本動作

リピータハブで接続された機器で同時にフレームを流すと衝突します。

この衝突をコリジョンと言います。車が衝突すると壊れるのと同じで、信号が衝突すると壊れて判別できなくなります。判別できないと再送する必要があり、非効率で通信も遅くなります。このため、交差点で車が衝突しないよう交通整理するのと同じで、フレームの交差点で交通整理する装置があり、ブリッジと言います。

ブリッジは今では殆ど見かけませんが、ソフトウェア処理するため多くのポートを持つことが出来ませんでした。LANスイッチはブリッジと同様にコリジョンが発生しないようにしつつ、フレーム転送に特化した専用のハードウェアで処理するため、多くのフレームを高速に転送可能で沢山のポートを持つ事ができます。

コリジョンが発生する範囲をコリジョンドメインと言いますが、LANスイッチはフレームの交差点でコリジョンが発生しないため、コリジョンドメインを分離できます。

LANスイッチからフレームを送信する際に、サーバからもフレームが同時に送信されるとコリジョンドメイン内なのでケーブル上でコリジョンが発生しますが、最近は双方向同時にフレームを送信出来る全二重通信が殆どです。道路で言えば往復2車線のようになっているため、全二重通信であればコリジョンが発生しません。このようにLANスイッチを使うと、コリジョンが発生しない効率的で、且つハードウェア処理による高速なネットワーク環境を実現できます。

4.おわりに

第一回では、LANスイッチの概要と基本的な動作について解説しました。まとめると、LANスイッチには以下の特徴があります。

  • 沢山の機器をネットワークに接続するために利用される
  • MACアドレステーブルにより余計なフレームを抑える事が出来る
  • コリジョンドメインを分離するため、効率的な通信を行う事が出来る
  • 専用ハードウェアにより高速な処理が出来る

次回以降は、LANスイッチの種類や利用シーン、VLAN(Virtual Local Area Network)、リンクアグリゲーション等の機能や設定方法をご紹介していきます。

のびきよ

2004 年に「ネットワーク入門サイト」を立ち上げ、初心者にも分かりやすいようネットワーク全般の技術解説を掲載中。著書に『短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本』、『ネットワーク運用管理の教科書』(マイナビ出版)がある。

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