中小企業の6割が自社サーバの導入を検討中

サーバ導入を検討している企業(個人事業者・SOHO)が増えている。そこにはどんな目的やメリットがあるのだろうか。

「中小・中堅企業のIT投資動向に関する実態調査」(ノークリサーチ調査:2007年1月~5月)によると、6割弱の企業が「サーバ導入の予定あり」と回答。全体の32.0%が「具体的に導入の検討・計画をしている」、25.5%が「具体的ではないが検討・考慮している」と回答し、中小企業のサーバ導入への積極的な姿勢が見える。

IT化についての考え方が、「取引先とネットワーク化しなくても問題ない」「ネットワーク化はコストや運用の負担が大きい」「少人数なので社内情報の共有や活用は不要」というものから、「業務に活用していこう」と前向きに変化している証明であろう。

予算で動く大企業は毎年一定のIT化予算を得ることができる。しかし、景気に左右されやすい小規模な企業の場合、継続して一定の予算を得ることは難しい。中小企業のIT化が遅れていると言われる原因のひとつといえる。

そこで本連載では、中小・個人経営者のサーバ導入手順(考え方)を具体的に紹介していく。「これからサーバを導入しよう」と考えている企業の判断材料のひとつとして参考にしてもらいたい。第1回では「サーバとは何か」という基本的なことについて考えてみよう。


サーバを導入する目的

サーバ導入の目的を「Web関連」「LAN関連」の二つに分けて考えてみる。


■Web関連サーバ

  • 自社製品/サービス情報発信(PRの場としての役割を持たせる)。
  • 顧客窓口としての役割。
  • 電子メールによるユーザーや取引先とのビジネスコミュニケーション。

表1 Web関連サーバの種類

サーバ名 目的
Webサーバ(HTTPサーバ) ユーザー(Webブラウザ)のリクエストに対して、HTMLファイルやイメージファイルを送信するサーバ。ホームページを閲覧する場合はこのサーバにアクセスしている(LANのみでの使用も可能。LANの場合でもCGIなどを利用できる)
メールサーバ 電子メールを送受信するためのサーバ。サーバ内部では「SMTPサーバ」「POPサーバ」「IMAPサーバ」のやりとりにより送受信・転送・保存が行われる
FTPサーバ サーバにファイルをアップロード、サーバからファイルをダウンロードすることを目的としたサーバ
プロキシサーバ 直接インターネットに接続できないクライアントマシンの代わりにインターネットとの接続を行なうサーバのこと(プロキシとは「proxy(代理)」の意)。ネットワークに出入りするアクセスの一元管理を行なう(内部からの特定の種類のアクセスのみを許可、外部からの不正なアクセスを遮断する等に用いられる)。キャッシュしたデータを複数のマシンで共有することも可能
DNSサーバ インターネットでドメイン名を割り当てるサーバ。ネットワーク上のIPアドレス(4階層に分割した0~255までの数字)を管理する
DHCPサーバ アドレス構成管理の複雑さを軽減するためのサーバ。動的かつ自動的にIPアドレスを割り振ってくれる。ネットワークのアドレス体系を知らなくても社内でLANケーブルを挿せばネットワークに接続できるのはこのサーバの働き

■LAN関連サーバ

  • データの共有……サーバを介してデータのやり取りを効率化する。
  • プリンタの共有……共有したいプリンタをプリンタサーバにつなぐ。そのプリンタサーバをネットワークにつなげることでネットワーク上にあるすべてのパソコンでプリンタを利用できるようにする。
  • グループウェア(※)の活用……情報共有やコミュニケーションの効率化を図り、グループによる協調作業を支援する。
※グループウェアとは、企業内の各種やりとりを効率化し、生産性を高めるツール。電子メール機能、メンバー間の打ち合わせや議論を行なう電子会議室機能、メンバーとリアルタイムな打ち合わせができるテレビ会議機能、グループ全体に情報を告知する電子掲示板機能、メンバーのスケジュールを共有するスケジューラ機能等を備えている。

表2 LAN関連サーバの種類

サーバ名 目的
ファイルサーバ ファイルサーバにファイル(データ)を保管しておくことで、他媒体(CD、MO等)でのデータ移動の煩雑さ、複数のクライアントが同じファイルを転送する際の手間の省力化、ファイル更新時に発生する不整合を防ぐ。また、バックアップなどのデータ管理も行える
プリンタサーバ ネットワーク上のコンピュータの電源状態やマシントラブルにも対応して印刷できる。ほとんどのプリンタサーバは印刷データのキャッシ機能を備え、パソコンが印刷処理から早く解放されるという利点もある

サーバは「情報の発信」「情報の共有」「情報の活用」を効率的に行なうためのものである。サーバを『業務遂行を円滑にする武器』と認識している企業が増えていることも、サーバ導入を考える企業が増加している一因である。


サーバの形態によるメリット・デメリット

サーバの形態は、大きく三つに分類される。それぞれにメリット・デメリットがあり、導入目的や維持費用を考慮したサーバ形態の選択が必要だ。

【レンタルサーバ】

通信事業者やプロバイダが(自社設備を用いて)サーバの容量の一部を間貸しするサービス(ホスティングサービスともいう)。ひとつのサーバを複数のユーザーで使う『共有サーバ』タイプ、ひとつのサーバを独占して利用する『専用サーバ』タイプ、共用サーバでありながら専用サーバ並みの機能が使用できる『仮想専用サーバ(Virtual Private Server、VPS)』がある。CGIを用いた掲示板、フォーム、独自ドメインでの運用、Webサイトの作成代行などの付加サービスを提供している事業者もある。

【自社サーバ】

『自社サーバ』とは自社内で構築(設置)したWebサーバのこと。自由度という点においてはこの形態が最も高い。サーバは独占状態にあり、サーバの機種選択やメールアカウントの発行など、すべての管理が行なえる。そのほかにも自社サーバを構築するメリットは多数あるが、デメリット(管理責任・維持管理費用・人材確保など)も多い。

近年は、サーバ機の価格の低下、難解な操作の軽減もあり、資金力や技術力に不安を持つ中小企業もサーバ導入を進めているのが現状である

【ハウジングサービス】

通信事業者・インターネットサービスプロバイダ(ISP)が行なっているサービスで、データセンターのスペースを低額(月額契約が多い)で借りるサービス。高速な回線や耐震設備、安定した電源設備などを利用できる。電源が多重化されていて緊急時の対策がなされているという特徴がある。レンタルサーバにも似たようなサービスであるが、ハウジングサービスではサーバなどの機器はすべて利用者が用意、事業者は場所と回線、電源などを提供するのみである。

表3 サーバの種類

サーバ形態 概要 費用 トラブル時の対応 拡張性
レンタルサーバ サーバそのものを外部に借りる。「共用レンタルサーバー」「専用レンタルサーバー」「VPSレンタルサーバー」の3種類がある レンタル方法により大きく異なる 業者が処理
自社サーバ 自社内にサーバを設置する サーバ機器の購入費用。サーバ維持費は安い すべて自分で対応
ハウジングサービス サービス提供者の保有する「回線設備の整った施設」にサーバを設置するサービス サーバ機器の購入費用 サービス利用料金は高い。場合によっては自分で対応

なぜ自社サーバの運用を推奨するのか

ほとんどの大手企業は自社サーバ(近年はコスト面からデータセンターを利用するケースが増えている)を構築している。

事業規模が小さいのであればレンタルサーバで問題ないが、事業の拡張、サーバ(および周辺機器)の増強が予想される場合は自社サーバのほうが有利な面が多い。以下にメリットを挙げてみる。

表4 自社サーバの利点とは

維持費が安い。サーバを構築後の月々の負担は回線費用のみ
ソフトウェアはオープンソース(無料)がほとんど
拡張性が高い。サーバアプリケーションの自由度が高く、サーバ上で動作させる各種ソフトの導入・カスタマイズに制限がないためシステム開発の選択肢が広がる
メールサーバを構築し、独自ドメインを取得すればメールアドレスを無制限に発行できる
ユーザーの要望するWeb上での高度なサービスを提供できる

自社サーバは、初期投資を抑えつつも事業の拡張が想定される企業に向いている。しかし、ネットワーク化が進展している現在、FAXやコピー機などを用いて業務の効率化・電子化・経費削減を目的とするOA(Office Automation)とともに、事業戦略・生産性向上・一元管理化を目的とするIT(Information Technology)にも企業は力を入れている。そのような中で自社サーバの導入はIT化へより一歩前進することになる。

次回は、自社サーバを購入する際のポイントについて考えてみたい。

文|デジカル/松井秀樹