リユースサービスを紹介する本連載の第4回では、リユース品を上手に活用しているビーコンエヌシーの事例を紹介しよう。同社はリユースサーバを活用して、レンタルサーバ事業の強化に成功している。今回は、ビーコンエヌシー データセンター事業部 データセンター長の甲斐亮氏と、データライブ代表取締役社長の山田和人氏に対談していただいた。

DCとコンサルが大きな柱

ビーコンエヌシーは、データセンタサービスとコンサルティングサービスを事業の大きな柱としている。データセンタサービスでは管理・運営までを担い、コンサルティングサービスは、システム関連のIT部分のコンサルティングを中心とする。

BeaconNC(ビーコンエヌシー) 

ビーコンエヌシーでは、「ビジネスコンサルティングサービス」や「ITコンサルティングサービス」などのコンサルティングサービスのほか、「データセンタサービス」を提供。 データセンタサービスでは、インフラ設計構築やシステム開発などのシステム設計・構築サービス、サーバ運用を行うシステム運用サービスの2つを展開。フルマネージド・フルアウトソーシングの保守・運用、大電源容量、世界最高水準の免震性能の3大ポイントを売りに、アドバンスドデータセンターを提供する。

http://www.benc.jp/

ビーコンエヌシー データセンター事業部 データセンター長
甲斐 亮氏

データセンタサービスは東京都中央区に拠点を構え、アクセス性の高さが大きなメリットになっている。「2010年3月に事業を開始してから3年を迎えますが、この業界では比較的後発のため、1ラックあたり8kVAと電源容量に余裕があるのも特徴の1つです」と甲斐氏は語る。

また、「収納しているビルが免震構造のため、災害耐性に優れています。そのほか、岐阜と三重に提携データセンターがあり、ディザスタ・リカバリ(DR)のご提案も可能です」と甲斐氏が語るように、災害への備えに万全の構えをとっている。 運用アウトソーシングでは、平和島(東京都大田区)や大手町(東京都千代田区)のデータセンターなどに拠点を持ち、これらを活用してさまざまなニーズに応えている。

「当社のサービスの特徴としては、夜間にもエンジニアが常駐していることにより、万一のトラブル発生時にも1次切り分けに即時対応できる強みがあります。当然、その後のエスカレーションにも対応しています」(甲斐氏)。

リユース品との出会い


-現在、リユース品はどのように活用しているのでしょうか?

甲斐:メーカーの保証が切れた場合など、古いサーバを利用せざるを得ないケースがあります。そのような時に、データライブさんを通じて中古サーバ用のHDDなどを調達しています。サーバではHDDと電源が故障しやすく、これらの調達が比較的多いです。サーバ関係に限らず、ネットワーク機器もメーカー保守時間に左右されず稼働停止時間を短くするための予備機として調達しています。全体ではサーバ関係よりネットワーク機器のほうが多いですね。

-そもそも、データライブさんを知ったきっかけは何だったのでしょうか?

甲斐: 実は、私は以前の勤務先でデータライブさんと取引した経験があるのです。最初は中古HDDの手配でしたが、その後、サーバも購入したことがあります。ですから、データライブさんとのお付き合いは長いのです。

初めてデータライブさんと取引したきっかけは、IBMの古いサーバの故障でした。RAID構成のHDDの1台が故障した際、ネットオークションで見つけたものを利用しましたが、当然保証は無く、不安でした。そこで、中古でも保証サービスがあるデータライブさんに型番を指定して、調達を依頼したのです。中1-2日ほどで納入してもらえ、無事交換できました。

-リユースサーバも利用していますか?

甲斐: 残念ながら、リユースサーバはまだ利用していません。まとまった台数を調達する場合や、サーバ集約をお求めのユーザーの場合は、メーカー保証が付く新品サーバを調達しています。新品についてはベンダフリーで、メーカーにこだわりはありません。

アウトソーシングのユーザーでは、古いサーバの場合が多いですね。4-5年前のサーバだと保証は既に切れていて、保証の延長や追加購入も不可能な場合が多いためです。このような場合にシステムを温存し、サーバをそのまま移行する形になります。

データライブ代表取締役社長
山田 和人氏

最近はスイッチなど、ネットワーク機器の取引が増えていますね。アラクサラネットワークスの製品(他メーカーも別ブランドで販売)を多く使っていますが、保守サービスが特殊でオンサイト交換に時間が掛かってしまうのです。そのため、中古の同等品をあらかじめ用意し、メーカー側の修理が完了するまでの一時代替機として保有しています。

山田: ビーコンエヌシー様は、データセンター事業者としては少々特殊な取引形態なのではないかと思います。通常のデータセンター事業者では、HDDよりネットワーク機器の取引が多いですね。

保証制度の有無が判断材料に


-リユースのパーツやネットワーク機器を利用しているとのことですが、信頼性はどうですか?

甲斐: データライブさんの取扱製品では、今まで故障などのトラブルの経験はありませんね。 データライブさんが提供する保証サービスは、非常に心強く感じています。保証が無ければネットオークションと変わりませんが、保証があるため安心して企業間取引が可能なのです。また保証が付いていれば、社内の決裁も通りやすいですね。

他の中古サーバ業者を調べたこともあり、特定メーカーの製品に特化した業者はありますが価格はそれほど安くなく、保証もありませんでした。故障や保証切れの場合は、結局新品を購入し直すことになってしまうようです。

中古製品の調達先は、現在はデータライブさんのみですね。取扱品目の幅広さが魅力です。

-データセンター設置場所の選定に、こだわりをお持ちとか

甲斐: データセンターの設置場所は、地区としての電力容量やハザードマップ(災害予測地図)、利便性などを主な判断材料として選定しています。最近は文京区や江東区(いずれも東京都)に拠点を構える同業他社が多いのですが、当社として、これらの地区はいまひとつであると感じています。

今後は地方のデータセンターに分散されているお客様の東京への集約移設などを推進すると共に、IPアドレス枯渇に備えてのIPv6対応も今まで以上に進めていきます。

リユース品は今後活用すべきもの


-リユース品の今後については、どう考えていますか?

甲斐: 例えば新品の保守サービスを見ると、ある海外メーカーでは5年が最長で、保証期間が切れた場合は新製品への買い換えになります。保証が切れたサーバでも、処理能力は若干見劣りするとはいえ、他の用途にも転用可能なので、もったいない話だと思います。

そういう観点からも、リユース品は今後活用していくべきものだと考えています。また、クラウドシステムなどで、活用の機会が増えていくのではないでしょうか。クラウドでは低価格のサーバを使用するより、リユース品の活用も検討していきたいですね。

クラウドについては、当社ではIBMのzシリーズの運用経験などを通じ、いち早く着手しています。サーバ仮想化から始めれば、クラウドは理解しやすいと思います。

山田: ビーコンエヌシー様は、いい意味で普通のお客様だととらえています。堅いユーザー様をお持ちで、信頼性を損なわないよう努めておられます。極力新品を導入されるようにしておられますが、代替機や予備機なら中古サーバでもよいのではないでしょうか。その際は、ぜひ当社をご利用いただきたいですね。

冗長化やバックアップでリユースサーバの活用を


-リユースをはじめ、データライブさんのサービスに今後望むことはありますか?

甲斐: 取扱品目としては、当社が望む製品はほぼカバーされていると思います。むしろ、中古市場の動向などを、会員や提携企業などに提供してほしいですね。中古市場はバックヤード的な扱いを受けており、流動性が高いのです。市場動向を得られれば、それを元にユーザーへの提案も可能になるのですが。

山田: 希少な製品や現行製品など、当社でも手配できない製品が一部あります。また、国産サーバは市場が未成熟なこともあって、入手難ですね。元々は輸出が主体の業界だったという事情もあり、国産サーバは製品として扱うのではなく廃棄されるケースが少なくありません。

-コスト面からリユース品をどのように考えていますか?

甲斐: ユーザーのコスト意識の高まりは、最近特に強く感じています。高度な冗長性が不要であったり、システム規模を徐々に拡大し初期コストを抑えたいというユーザーには、中古製品を勧める場合もあります。ハードウェアは目に見えてコストを抑えることが可能なため、価格が折り合わないケースでは、リスクもお伝えした上で中古製品を織り交ぜる提案もしています。コスト重視のユーザーは、フロントなど重要な部分に新品を使いコストを集中させ、スタンバイマシンやバックアップマシンはリユース品を使用可能なケースもあると思います。

-大規模なシステムでも、リユース品が活用されそうですか?

甲斐: 大規模なシステムのユーザーは既に冗長化してあるため、トラブルが発生しても即時に復旧する必要は無いのですが、片系統のみでの稼働時間は極力短縮したいとお考えです。メーカー保守では復旧に2-3日かそれ以上を要す場合もありますから、そのつなぎとして中古機器で冗長状態を維持したほうが、安定稼働に繋がると思います。

山田: 24時間365日のサポートをうたっているメーカー保守も、実はメーカーのエンジニアがやってくるまでには、3時間ほどかかります。メーカー保守はエンドユーザーには安心感を与えられますが、SIerなどは実効性に疑問を感じているのが実情です。なぜなら、エンドユーザーが求める改修時間に、メーカー保守だけでは間に合わないからです。

そのため、中古製品でバックアップ機器を保有する動きが広まっており、この意識がエンドユーザーにも広がっていけば、リユース品の伸びる余地が十分にあると考えています。