近年注目が高まり、活用が増加してきているコンテンツマーケティングですが、訪問したユーザーが「どのコンテンツを経由・回遊し、資料請求や問い合わせなどのコンバージョン(CV)に至ったのか」を把握できているでしょうか。

それぞれのゴールにおいて適切な指標をもって効果を計測し、継続的な改善を行うことで、その投資対効果(ROI)を向上させることが可能です。

本連載では、コンテンツマーケティングを既に運用している、あるいは現在検討中のマーケターを対象に、効果測定の際の指標決定から、継続改善の考え方を紹介します。

また、効果計測におけるツールとして一般的な「Google Analytics」において、よく誤解のある指標についても、その問題点と対策を例示したいと思っています。

効果の可視化には、目的の定義が必須

さて、コンテンツマーケティングは、ストーリーテリングを通じ、ユーザーが意識している需要・認知だけでなく、潜在的にもっているものについても "気づき" を起こし、認知の拡大や比較・検討を促し、ユーザーの態度変容につなげることを目指します。

その効果を可視化するには、まず、目的を明確にすることが重要です。第1回では、同手法を実施する前の基本として「どのように目標と指標を設定し、Google Analyticsによって計測するか」を話したいと思います。

来てもらうことだけが、コンテンツマーケティングの目的ではない

コンテンツマーケティングは、実店舗に例えると分かりやすいとよく言われます。

例えば、新規にオープンしたお店であれば、まずは存在を多くの方に知ってもらい、直接来てもらう必要があります。当然、開店当初はとにかく集客することをだけを目標にしがちになるでしょう。少しでも多くの人に来てもらうため、安売りキャンペーンを行ったり、広告を使ったりしますが、その特売の商品しか購入してくれないことや、お店を覗くだけで出て行ってしまうこともよくあることです。

Webサイトも店舗と同じで、新しく集客を行いたいサイトを立ち上げたばかりの時は、新規ユーザーを増やすことに注力すると思います。しかし、サイトへの来訪数を増やすことを目的にして得られたユーザーは、中・長期的に定着してくれるユーザーでしょうか。店舗の「開店セール」にあたるような特定のコンテンツだけを閲覧し、そのまま帰ってしまっているのではないでしょうか。

コンテンツマーケティングの目的は、実際に店舗に来てくれた人たち(サイトに来てくれたユーザー)が、コンテンツに触れることで態度変容を起こし、ビジネスにつなげることです。

では、どのようにして「ユーザーの態度が変わったか」や「変わる可能性があるか」を可視化できるのでしょうか。

まずは、目的を意識的に定義しよう

まず、コンテンツ制作や集客を開始する前に、「そもそもなぜ実施するのか」や「どのような目的があり、どの程度の効果を期待しているのか」を明確にしましょう。

あなたのビジネスでは、コンテンツと接したユーザーにどのような態度変容を期待しているでしょうか。これらの目的を明確にすると、コンテンツの中身だけでなく、効果を測る指標(KPI)とそれを測定するために必要なツールが選定できます。

KPIを決定する際に大事なことは、「何を測るか」だけではなく「どのぐらいの値を想定しているか」という目標値を設定することです。目標値は、改善プロセスが進むにつれて修正されますが、原則として効果向上を図るベースラインとなるので、固定しましょう。

ゴール設定の例

例えばこの図のように、認知獲得が主目的の場合、今までその企業や商品について知らなかったユーザーを対象に、まずはコンテンツへ訪問してもらうこと自体が目的となります。したがって、「新規ユーザー数を1週間で5,000人獲得する」というように指標と目標値を設定します。

比較・検討段階のユーザーに行動を喚起することが目的であれば、その商品・サービスに関連する情報を読んでもらい、理解を深めてもらうことが目標です。目標値は、「ページA群を5万回閲覧してもらうこと」などとなります。

また、サイトのコンテンツをグループ分けし、集客したユーザーがどれほど購買意欲のある行動を取ったのかを分析しやすくすることもできます。

具体的には、「1 : イントロ」「2 : 比較」「3 : 購買検討」「4 : 購買方法」というようなゼグメントを行い、サイトのコンテンツをどれかに紐づけします。Google Analyticsでは、コンテンツグループというタグを活用し、このセグメントを割り当てることによって、グループごとに集約した数値を可視化することができます。

集客したユーザーのセッション数など「全体の数字」だけを見るのではなく、コンテンツグループごとに「どのように回遊したか」を比較することが可能になるわけです。詳しくは次のセクションで解説します。

コンテンツへのトラフィック、その質の測り方

先ほど「集客の数だけではなく、その質も見ることが大事」ということを話しましたが、目標値の達成度合いを見る際には、量と質を同時に見るとよいでしょう。

具体的な分析方法は、第3回で解説しますので、本稿では「目的に応じた指標」を紹介します。

1. トラフィックの量的分析

「Google Analytics」画面イメージ

この図が分かれば、下記のように目的に応じた達成度を設定でき、それに対する対策につなげることが可能です。

2. トラフィックの質的分析

ユーザーの導線として、「認知を目的としたコンテンツ」から「比較・検討を目的としたコンテンツ」に読み進んでいるかを分析し、より "ゴールに近づいているか" を把握しましょう。

Google analyticsでの質的分析方法 - 1. グループ化

このようにコンテンツのグループ化を行い、各コンテンツでの消費推移を継続して定期的に計測すれば、「ビジネスゴールに近づいているか」や「サイトやコンテンツのどこに問題がありそうか」が見えてくるのです。

さて、第1回となる今回は、集客の効果指標として「数と質の両方を見ることで目的を達成しているか計測する」ことについて解説しました。

第2回では、Google Analyticsのレポートに存在する、知らないと大きな勘違いをする "落とし穴" とその対策例について紹介し、第3回ではより具体的な分析方法について話していきます。

執筆者紹介

アウトブレイン ジャパン 筒井 祐介

世界規模のコンテンツレコメンデーションプラットフォームを活用し、企業のコンテンツマーケティングを支援するアウトブレインジャパンのシニアアカウントストラテジスト。Web解析ツールのエキスパートとして、データを用いたマーケティング施策改善のためのコンサルティングを行う。アウトブレイン入社前は、オーストラリアを拠点に約8年間、デジタルマーケティングの分野でサイト解析や効果分析の業務に携わる。なお、アウトブレインの公式Webサイトは、こちらから。