ブロックストレージサービス「Cinder」は、インスタンスに対して永続的なブロックストレージの機能を提供する。Cinderのストレージ領域は、コンピュートサービス「Nova」が提供する一時的なディスク領域と違い、インスタンス終了後も内容が保持される永続的なストレージ領域となる。

以下、Cinderが提供する機能、中心機能となるボリュームの作成とインスタンスへの添付の方法、関連する機能について説明する。

Cinderが提供する機能

Cinderは仮想・物理のインスタンスに対して、ブロックストレージ機能を提供する。Cinderでは作成されるストレージ領域を「ボリューム」と呼び、その作成・削除・添付・スナップショット作成が可能だ。ボリュームを作成する際に、ボリュームソースとしてイメージを選択すると、イメージサービス「Glance」からイメージが転送されて、ボリューム内に保存される。Glanceから提供されるイメージがOS起動イメージである場合、そのボリュームからインスタンスが起動可能となる。

Cinderでは、管理者がストレージをカタログ化することで、利用者はボリューム作成時にカタログからストレージの種別を選択できる。このストレージカタログの作成では、RAIDの種別、SSDの利用有無、サードパーティのストレージなどの要件を自由に加味できる。

Cinderは標準でLVM(Logical Volume Manager)上の領域を利用するが、EMCやNetAppといった大手ストレージベンダーが提供しているCinder用のドライバを利用することにより、サードパーティのストレージ製品との連携が可能となる。これによって、スナップショット作成などの各種作業をストレージシステム側にオフロードできる。

さらに、Extra Specの機能でEMCやNetAppのようなサードパーティのストレージ製品が提供するレプリケーション、重複除外、RAID構成などの情報を加味した形でカタログを作成することができる。ボリュームのバックアップは、ストレージ側でバックアップ機能を提供してもよいが、Cinder側でバックアップを提供することできる。ボリュームのバックアップデータはSwiftに対して定期的に転送され、ボリューム個別にレストアすることも可能だ。なお、Cinderは前回説明したNovaと同様に、アベイラビリティゾーン機能を提供するので、ボリューム作成時にアベイラビリティゾーンを指定できる。

ボリュームの作成とインスタンスへの添付の操作

中心機能となるボリュームの作成とインスタンスへの添付に関して、Horizonを介したGUIからどのような操作を行うか、実際のGUI画面から説明する。今回は、RedHat Enterprise Linux OpenStack Platform 6の画面を掲載する。[プロジェクト]-[ボリューム]から、”ボリューム作成”をクリックし、各項目に必要な値を入力した後、ボリュームの作成と添付を実施する。

[ボリュームの作成画面]

以下が、ボリュームを作成する画面で入力する項目だ。

  • ボリューム名 : 作成するボリュームの名称
  • ボリュームソース : イメージを選択することでイメージが事前にボリューム内に保存される
  • 種別 : ストレージカタログの選択
  • 容量 : 作成するボリュームの容量を指定
  • アベイラビリティゾーン : Novaと同一のゾーンを指定可能

これらを設定した後、「ボリュームの作成」を選択するとボリュームが作成される。そして、作成されたボリュームはインスタンスに添付することができる。

[ボリュームの作成後のボリューム一覧画面]

[ボリューム接続の管理画面]

各サービスが提供する主な機能

Cinderに関わる各サービスが提供する主な機能は以下のようになっている。

サービス名称 サービスが提供する機能
cinder-api Cinderを制御するためのAPIを提供する
cinder-volume ストレージバックエンド(LVMやEMCなどの物理ストレージ)に接続して、ブロックデバイスをコントロールする
cinder-scheduler 複数のcinder-volumeが起動している場合、どのcinder-volumeを利用するかを選択する
cinder-backup ボリュームをSwiftなどにバックアップ。Backup利用時のみ起動されている

今回は、OpenStackコンポーネントの紹介として、ブロックストレージサービスのCinderを紹介した。次回は、ネットワークサービスとなるNeutronを紹介する。

荒牧 大樹
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 第2応用技術部 クラウドソフトウェアチーム
シスコシステムズの認定資格「CCIE #14716」を保持。OpenStackおよびCisco/VMwareなどのさまざまなクラウドソフトウェアを担当している。