【連載】

中小企業にとってのマイナンバー制度とは?

56 マイナポータル 2017年7月本格スタートのサービス概要

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1月から始まったマイナンバーの本格利用においてマイナンバーを記載した書類をより安全に提出するには書面によるのではなく、電子申請・申告をお勧めしてきましたが、実際に電子申請・申告で提出する事業者や税理士事務所が増えたのか、給与支払報告書や償却資産申告書など地方税分野の電子申告のシステムであるeLTAX(地方税ポータルシステム)が1月27日から31日にかけてアクセス集中によりつながりにくい状況になりました。これはマイナンバーの本格利用が電子申請・申告の利用を促進することになった結果だと思われます。今後の経緯をみながら、マイナンバーの利用状況と合わせて、電子申告の利用状況などもレポートしていきたいと思います。

今回は、前回アカウントの開設から現状のメイン画面などについてみてきましたマイナポータルで、7月からの本格的なサービス開始で予定されている機能およびその後予定されている機能について、何が便利になるのか、事業者にはどのような影響が出てくるのか、その概要をみていきましょう。

マイナポータル 7月から利用できるサービス

2017年1月5日、新年早々内閣官房のホームページにマイナポータル紹介ページが開設されました(図1参照)

前回ご紹介したアカウントの開設が「2017年1月からできること」として紹介されています。そして、2017年7月以降にできることとして「サービス検索・電子申請機能(子育てワンストップサービス)」などの機能が紹介されています。7月当初に実装されるサービスは、子育てワンストップサービスを中心にした機能のほか、”やりとり情報”や”あなたの情報”などが挙げられています。

個人が行う行政手続きなどさまざまな手続きをワンストップで実現するというのが、マイナポータル構想でアピールされてきました。当初は引越し時の諸手続きのワンストップ化が例として紹介されていましたが、実際にサービス開始時の7月は「子育てワンストップサービス」から提供されることになったようです。

この「子育てワンストップサービス」で何が便利になるのかについては、以下の(図2)のように紹介されています。

「かんたん検索」、「かんたんオンライン申請」、「プッシュ型通知」といったサービスが紹介されていますが、便利なサービスとして利用されそうなのは、役所に出向くことなく申請が可能となる「かんたんオンライン申請」ではないでしょうか。このオンライン申請の具体的な例として認可保育園への入所申請については(図3)のような流れが示されています。

この流れの中では、事業者が「勤務先」として登場しています。前回取り上げた「社印」代わりにマイナンバーカードを使用する「電子委任状」をとりあげた際、雇用証明書([図3]では就労証明書)の電子発行も可能になるということでした。(図3)の流れの中では「電子データと原本を発行」となっています。「電子委任状」の仕組みが制度的に担保されるようになると、書面での原本発行の必要がなくなり、電子の雇用証明書のみ作成、発行すればよいことになると考えられます。

マイナポータルの「子育てワンストップサービス」の利用が進むと、子育て世代の従業員をかかえる事業者では、雇用証明書の電子発行が可能になるように「電子委任状」を利用できる体制を整える必要がでてくることも考えられます。事業者としては、契約書の電子化への取り組みとあわせて、「電子委任状」を利用できる体制の整備を検討しておく必要があります。

民間送達サービスとの連携とe-Taxとつながることでできること

7月開始のサービスも含めて「マイナポータルでできること」の全体像として、(図4)のようなサービスが紹介されています。

この民間送達サービスでは、(図4)にあるように生命保険料控除証明書が生命保険会社から電子データで送信され、マイナポータルで受け取れるようになることなどが想定されています。マイナポータル構想時点で「電子私書箱」と呼ばれていた機能の実際の運用を、ここでは「民間送達サービスとの連携」と呼んでいるようです。2018年度にはマイナンバーカードを健康保険証代わりに使用することができるようになる予定ですが、そのような運用が進めば、もともと「電子私書箱」で構想されていたように、医療費の明細なども民間送達サービスで、健康保険組合などから電子データで送信、マイナポータルで受け取ることができるようになると考えられます。そうなるとe-Tax(国税電子申告・納税システム)との連携により、マイナポータルを利用して医療費控除の所得税申告が行えるようになるように構想されています。

この「民間送達サービスとの連携」は、「G もっとつながる(外部サイト)」を利用して事前に民間送達サービスを提供する事業者とつなぐことが必要になります(https://img.myna.go.jp/manual/9.pdf#page=33 )。実際に生命保険会社が生命保険料控除証明書を電子データで提供するようになり、それをマイナポータルで受け取りたい場合は、生命保険会社が指定するウェブサイトとマイナポータルをつなぐことになるということです。

また、この「G もっとつながる(外部サイト)」機能では、電子データを受け取るだけでなく、マイナポータルの自分のデータを提供することもできるようになります。このデータの提供は、医療費控除のために自ら所得税の申告を行う場合に、電子データで受け取った医療費の明細や生命保険料控除証明書などをe-Taxに提供するといったことが使い方として考えられます。そのほか、生命保険料控除証明書の電子発行が一般的になると、マイナポータルで受け取った電子データの生命保険料控除証明書を年末調整のために勤務先の事業者に提供するといった使い方も考えられます。そうなると、事業者や税理士が利用する年末調整システムでも、こうしたデータを取り扱えるようにする必要がでてくると考えられます。

この「G もっとつながる(外部サイト)」機能では、すでに1月からマイナポータルとe-Taxとつなぐことができるようになっています。(図5)では現状マイナポータルとe-Taxとをつなぐことでできることでできることが説明されています。

マイナポータルとe-Taxをつないで利用する場合、現状はメッセージボックスに届いたお知らせの確認やe-Taxソフト(Web版)から納税証明書の交付請求を行うことなどができますが、所得税の申告などはまだマイナポータルからできるようになっていません。今後マイナポータルの機能が拡充されていくのにあわせて、マイナポータルと連携してe-Taxソフトの改善も行われていくものと思われます。7月のマイナポータルの本格稼働以降、どのように機能の拡充が進んでいくのか、民間送達サービスやe-Taxなどの動きとあわせて、注目していきたいと思います。

以上、7月に本格的にサービス開始となるマイナポータルのサービス概要およびその後に予定されているサービスについて、特に民間送達サービスとe-Taxの関連に注目してみてきました。マイナポータルで利用できるワンストップサービスは、現状の書面ベースでの手続きに比べれば確実に便利になります。ただし、その便利なサービスが多くの人たちに利用されるようになるためには、マイナンバーカードがもっと普及することや、前回レポートしたマイナポータルを利用するためのアカウントの開設がもっと簡単にできるようになることなど課題があります。こうした課題に対して政府がどのように対応していくのかといった点も注目していきたいと思います。

著者略歴

中尾 健一(なかおけんいち)
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役
1982年、日本デジタル研究所 (JDL) 入社。30年以上にわたって日本の会計事務所のコンピュータ化をソフトウェアの観点から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。マイナンバーエバンジェリストとして、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。

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インデックス

連載目次
第63回 デジタルファーストを目指す政府 法人税電子申告義務化へ
第62回 電子申告とマイナンバー制度
第61回 「特別徴収税額決定通知書」へマイナンバーが記載され通知されることの影響
第60回 マイナポータル・行政機関間での情報連携 本格運用は10月以降へ
第59回 1月~3月 マイナンバーの本格利用の時期を終えて
第58回 政府が進める「デジタルファースト」への流れとマイナンバー制度
第57回 マイナンバー本格利用 次は所得税確定申告
第56回 マイナポータル 2017年7月本格スタートのサービス概要
第55回 2017年におけるマイナンバー制度の動き
第54回 2017年におけるマイナンバー利用の動き
第53回 年末調整直前 今からでも間に合うマイナンバー対策 その4
第52回 年末調整直前 今からでも間に合うマイナンバー対策 その3
第51回 年末調整直前 今からでも間に合うマイナンバー対策 その2
第50回 年末調整直前、今からでも間に合うマイナンバー対策 その1
第49回 マイナンバーカード・マイナポータルの活用促進をめぐる総務省の動き その2
第48回 マイナンバーカード・マイナポータルの活用促進をめぐる総務省の動き その1
第47回 マイナンバー制度、今後のスケジュールを再整理する
第46回 なかなか進まない支払先からのマイナンバー収集
第45回 経済産業省版法人ポータル(β版)など法人番号をめぐる動き
第44回 行政側のマイナンバー制度へのシステム対応 現状の動きを確認する
第43回 中小企業・小規模事業者からマイナンバー取り扱いの委託を受ける税理士の現状
第42回 マイナンバー対応 準備を順調に進めている企業と進まない企業
第41回 世界最先端IT国家創造宣言とマイナンバー制度
第40回 マイナンバーが記録されているパソコンは修理できない?
第39回 平成28年度税制改正でマイナンバーの取り扱いはどう変わったのか?
第38回 動き出した企業版マイナンバー(法人番号)の利用が与える影響
第37回 マイナンバーカードは民間活用でどのようなメリットがもたらされるのか
第36回 多くの企業がメリットを感じない、マイナンバー制度の課題を考える
第35回 新入社員を迎える季節 継続的にマイナンバーを管理・運用できる体制作りを
第34回 中小企業のマイナンバー対応 システム選択? 外部委託? 現状の傾向を探る(2)
第33回 中小企業のマイナンバー対応 システム選択? 外部委託? 現状の傾向を探る(1)
第32回 あいつぐマイナンバー制度のトラブル 中小企業への影響を考える
第31回 個人事業主のマイナンバー利用 今後のスケジュールを整理する
第30回 マイナンバー利用開始1カ月 マイナンバー利用の課題を考える
第29回 マイナンバーの取り扱い 中小企業から委託を受ける税理士などの最新動向
第28回 マイナンバーとマイナンバーカードの役割を考える
第27回 マイナンバー利用開始 すぐマイナンバーの記載が必要な書類・時期を再整理
第26回 平成27年分年末調整業務進行中 来年を見据えて準備しておきたいこと
第25回 マイナンバーの収集、今年中に収集するか? 来年に入って収集するか?
第24回 マイナンバーの通知と中小企業の取り組み 最新状況
第23回 中小企業向けマイナンバー商戦 現状整理
第22回 マイナンバー制度への対応を中小企業の本格IT化のきっかけに
第21回 法人番号の通知・公表スタート 中小企業に与える影響を考える
第20回 マイナンバー通知本格化 いよいよ本番 中小企業のマイナンバー対策
第19回 中小企業のマイナンバー対策 システム選びが成否をにぎる? (その2)
第18回 中小企業のマイナンバー対策 システム選びが成否をにぎる? (その1)
第17回 マイナンバー利用開始 間近に迫る 今中小企業は何をすべきか?
第16回 マイナンバー通知カードの送付始まる 待ったなしで始まるマイナンバー制度
第15回 税理士などにマイナンバーの取り扱いを委託する場合のシステム連携の課題
第14回 マイナンバーの保管・廃棄 システムで異なる安全管理措置
第13回 マイナンバーの利用・提出 よりセキュアに対応するためにほしい機能
第12回 マイナンバーの収集 システムで異なる業務運用
第11回 IT活用で対応するマイナンバー対策 システム比較
第10回 マイナンバー対策を契機にIT活用を見直す
第9回 法人番号とマイナンバー制度の将来像
第8回 マイナンバーの取り扱いを税理士事務所などに委託する場合
第7回 マイナンバーの保管、利用シーンで求められる安全管理
第6回 マイナンバーの収集で注意すべきこと
第5回 マイナンバー制度 中小企業に与える影響
第4回 中小企業が「個人番号関係事務実施者」として行う実務内容と必要な準備
第3回 すべての中小企業が「個人番号関係事務実施者」へ
第2回 マイナンバー制度の概要と今後のスケジュール
第1回 マイナンバー制度で業務のここが変わる!

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