2回にわたり10代が「モバゲータウン」(以下、モバゲー)というサービスにはまる理由について考えてきた。最後に、モバゲーの利用スタイルから現代の10代像について考えてみたい。

モバイルサイトである優位性

10代にとって、ケータイでネットやメールは当たり前。彼らにとってケータイは、パソコンより手軽で日常的なものだ。起動に時間はかからず、いつでも持ち歩け、すぐに利用できる。モバゲーを運営するDeNA広報 金子哲宏氏は、「彼らにとってケータイは命やお金の次くらいに大切なもの。肌身離さず持っており、ないと困るものになっている」と話す。

彼らにとってネットやメールは、ケータイで行なうことこそが普通である。パソコンは必要なときにのみ使うもの、パソコンから送るメールには"改まったもの"という感覚があるようだ。けっして10代がパソコンを使えないわけではない。持っている人も多いし、使うこともできる。しかし、ケータイで済ませられることが多いため、単純にパソコンを使う機会が少ないのだ。

たとえば、動画投稿サービスの利用もケータイで済ませられる。ただし、モバゲーの動画投稿サービスは、パソコンの動画サイトとは使われ方が異なる。コミュニケーションツールとして使われることが多いというのだ。日記を書く代わりに、画像や動画を手軽に投稿する。「PCだと画像や動画をアップするにはひと手間いりますが、ケータイならそのままアップできるからでは」(金子氏)。ケータイの機能自体も、モバゲーにおけるコミュニケーションの促進に一役買っていると言えるだろう。

モバゲーが広まった最大の理由に、そもそもモバイルサイトだったということがあるのは言うまでもない。(なお、現在モバゲーはゲームや検索機能などを除くSNSに関わる機能がPCでも利用可能になっている)。

四六時中の「ながら利用」

モバゲーの利用スタイルに関するユーザー調査(15~18歳、有効回答数33,783件、2007年7~8月実施)によると、「何かをしながら利用する」という傾向が見られたという。たとえば「テレビを観ながら」など、何かをしている時間も「ケータイはモバゲーにつなぎっぱなし」にしていることが多いというわけだ。

モバゲーをつなぎっぱなしにして、観賞中のテレビのこと、聴いている音楽のことなどを日記やサークルに書き込んだり、ミニメールで感想をやりとりしたりする。「いつも誰かとつながっていたい」という欲求ゆえだ。メールにはその場で返信し、調べたいものはその場で調べる。モバゲーユーザーのアクションは非常に反応が早い傾向にある。

飽きっぽく反応が早いユーザー

モバゲーユーザーはさまざまなゲームをプレイしているが、パズルやゴルフといったシンプルなゲームは息が長い一方で、多くのゲームがすぐに飽きられてしまう。新作を絶えず投入し、ユーザーからの反応がよいゲームやコンテンツを探っている。

とくに占いに対する反応が良い。占いコーナーでは毎日新しい占いが出る。その動きに合わせて新着日記のほとんどが占い結果について書かれたもので埋まるという。これらのことから、「反応は早いが、飽きっぽい」というモバゲーユーザー像が浮かび上がってくる。

モバゲーに見る10代の姿とは?

モバゲーのユーザー像から見る10代とは、どんな子どもたちなのだろうか。まとめると以下のようになる。

ケータイをメインに利用し、いつも誰かとつながっていたいと思いつつ、密度の濃い関係は避ける傾向にある。自己表現欲求や自己承認欲求が強い。暇つぶしになるものを求めており、タダ(無料)に弱く、反応は良いが飽きっぽい──というものだ。そしてモバゲータウンは、あらゆる面においてこのような10代にマッチするサービスを投入してきたからこそ、ここまで広まったと言えよう。

しかし、そんな飽きやすいユーザーにモバゲーを使い続けさせるためには、その反応を読み取りつつ、様々な手を繰り出し続ける必要がある。今後、モバゲーはどんな変化を見せるのだろうか。

著者プロフィール:高橋暁子

小学校教員、Web編集者を経てフリーライターに。mixi、SNSに詳しく、『660万人のためのミクシィ活用本』(三笠書房)、『ミクシィをやめる前に読む本』(双葉社)などの著作が多数ある。ネットと教育関係やSNS関連などをテーマに多数連載中。PCとケータイを含めたWebサービス、ネットコミュニケーション、ネットと教育、ネットと経営・ビジネスなどの、"人"が関わるネット全般に興味を持つ。ブログはこちら