フルスピードで駅を通過する新幹線の音や風、振動。体験すると、いかに危険かということがわかると思います。ですから、線路は高架や防音壁で人が近づけないような構造になっているのです。では、走行中の撮影は可能なのでしょうか。今回は、沿線からの新幹線撮影について解説します(都市、列車などの設定は架空です)。
新幹線沿線の地方都市へ長期出張に来たテツヤくん。待ちに待った日曜日が来ました。新幹線の撮影に挑戦するつもりです。「新幹線から街が見えたんだから、街からも新幹線が見えるはずだよね」と、軽い気持ちで駅前の散歩に出かけました。しかし、新幹線の線路はずっと高架で、見えるのはパンタグラフだけ。当然、踏切もありません。「線路沿いじゃ撮影できないんだ」と、出鼻をくじかれてしまいました。
そうなんです。走行中の新幹線に近づける場所はほとんどありません。ぶらぶら歩いていて、偶然それなりに撮影できる場所を見つけられる可能性はかなり低いと言えます。ですから、第9回で紹介した「撮影地ガイド」などで事前に撮影できる場所の目星をつけておくといいでしょう。さらに、新幹線のお立ち台は郊外にあることが多いです。どうしても街中で撮影したいというのなら、大きな道路と立体交差する場所を探しておくのも手です。
あきらめきれないテツヤくんの目に入ったのは、駅前の高層マンション。「あそこに上ってみたいなあ。交渉してみよう」とマンションの入口まで行ったとき、ハッと我に返りました。
「新幹線の撮影をしたいから、マンションに立ち入らせて欲しい」。鉄ちゃんにとっては普通の欲求でも、一般的には異質なこと。第11回で、話術で私有地に入れてもらうという話をしましたが、のんびりした郊外の田畑と、都市のマンションでは事情が違いますよね。マンションは外階段や共有スペースも私有地ですから、絶対に立ち入らないようにしましょう。複合ビルの立ち入り制限がある場所も同様です。
一方、もしも駅や線路が見える商業施設の展望フロアや、展望台などがあれば是非上ってみてください。そこが撮影に不向きであっても、街を知り、撮影場所を探すヒントになります。線路からかなり離れた場所であっても、見えるのなら上る価値があります。裏技として、出張ならば駅前の新幹線が見えるホテルに泊まるという手があります。あえて線路側を好む人は少数派ですから、予約のときに「線路が見える部屋」とリクエストしてみましょう。
新幹線は、人が近づけないため事故がほとんどありません。撮影が困難なことを嘆くよりも、安全の実績を喜びたいですね。
ミニ情報
コンパクトデジカメが便利!
新幹線が至近に見える場所では、ちょっとしたところでも細かく高い金網やアクリル板が張られ、撮影が困難です。そんなときは、コンパクトデジカメのほうがかえって便利です。金網をよけたり、アクリル板にくっつけたりするには小さなレンズがいいのです。限られた条件の中で、無理なく安全に撮影を楽しみましょうね。