万能情報整理ツールとして盛り上がっているEvernoteですが、普通、初めてのユーザーはノートを追加したり、ノートブックで整理したり、数個のタグを付けたりする程度だと思うのです。そうした初心者ユーザーと上級者の分かれ目は、やはりタグの使いこなし方と検索だと思うんですよね。

佐々木 そうですね。特にノートが増えてノートブックやタグをたくさん作るうちに混乱してきて、これ以上タグもノートブックも増やしたくないとなった時に、ここから先どう使ったらいいかわからないという話をよく聞きます。堀さんの場合、ノートが増えて困った時の手はやはり検索ですか?

僕は最近整理が追いついてませんので、クリッピングしたノートのほとんどがinboxというノートブックに収まったままです。だから、検索できないととても困ってしまいますね。検索については2つのワザに磨きをかけるようにしています。1つがMac OS XのSpotlightでEvernoteを検索すること。実はEvernoteの日本語検索には若干難があるので、Spotlightのほうが時間が稼げたりするんですよね。

佐々木 なるほど、Spotlightを使うわけですか。これは、Googleデスクトップで検索してもいいんですよね。もう1つの方法は?

もう1つが「高度なフィルター」と呼ばれているものです。これはEvernoteのヘルプにも載っていないのですが、例えば、tag:wineという検索ワードはwineというタグに反応しますし、created:20100201と打てば今年の2月1日以降のノートが見つかります。

詳細フィルターは「-」などと組み合わせて使えますので、「-notebook:"inbox"created:day-30 tag:wine」とすれば、「inboxに存在しない、30日以内の、wineというタグの付いたノート」が見つかるわけです。便利ですよー。でも一方で、僕はタグの整理が乱雑なのでいつも階層タグを使いこなしたいと悩んでいたりします。佐々木さんはこの辺り何か工夫されていますか?

佐々木 階層式タグは、自分の目的に合わせて情報収集と整理ができているかどうかをチェックするのに便利です。私の「心理学」のサブタグには「行動」「社会」「認知」「発達」などのタグがあるのですが、これらのタグを並べることで、安心して「心理学」に関する情報をまんべんなく収集している感覚が持てます。

もう1つは、「1月」や「2月」のサブタグとして「01」「02」などのタグを作っています。単に「01」では何のことだか不明ですが、「2月」の下にあれば「2月1日に見るべき情報」だということがわかります。こうして31日間に情報を散らして置くことで、かなり広範囲で雑多な情報を、1ヵ月かけて読み込んでいくことができます。この方法は、普段から読みたくてもあまり読めていないような情報整理向けですね。

例えば、料理に関するタグ群を書いているとするなら、「料理」タグの下に「中華」、「中華」の下に「四川」と入れる感じですね。「四川」というタグを他のどこでも使わないのなら、これは便利ですね。僕の場合は、「面白い」や「要対応」といった、ノートも階層タグも飛び越える少数のタグがありますので、こちらと混在させないように気を付けて利用してみたいです。

佐々木 その「四川」というタグを2つ作りたくなったら、片方を「四川料理」にするか、あるいは「地域」などという親タグを作って、2つの分類で利用する「四川」をまとめたりしています。タグの名称や関係は毎日変えています。「時間がもったいない」と思われるかもしれませんが、時間をかけることで、自分の記憶の構造が少しずつ見えてくるような気がするのです。こうしたことはなかなかできないことですから、Evernoteに長い時間を注いでも、私としては惜しい気がしません。

ただこんなことをしているので、私のEvernoteのタグは傍目にはグチャグチャです。でも、私は自分の記憶の内部構造だって、これと同じくらい、あるいはそれ以上にグチャグチャだと思うんです。だから、むしろ自分のEvernoteを見て、「これこそシナプスだなー」という感慨にふけってしまいます。

編集後記(堀 正岳)

Evernoteについてはいくら書いても書きたりないといつも思っていたのですが、このたび、その思いを共有している僕と佐々木さん、そしてシゴタノ!の大橋悦夫さんとの3人の共著で、『Evernoteハンドブック』というeBookを発刊することになりました。詳細フィルターのすべて、階層タグの使いこなし方、そして何よりもEvernoteのさまざまな使い方についての提案が収録されています。ぜひ御覧ください!

佐々木 正悟(ささき しょうご)
心理学ジャーナリスト

「ハック」ブームの仕掛け人の一人。専門は認知心理学。 1973年北海道旭川市生まれ。97年獨協大学卒業後、ドコモサービスで働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。 著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほかに『ブレインハックス』(毎日コミュニケーションズ) 『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などある。

ブログ「ライフハックス心理学」を主催

堀 E. 正岳(ほり まさたけ)
ブロガー・気候学者

1973 年アメリカ・イリノイ州エヴァンストン生まれ。筑波大学地球科学研究科(単位取得退学)。理学博士。地球温暖化の影響評価と気候モデル解析を中心として研究活動を続けている。その一方でアメリカでライフハックが誕生したころからその流行を追い続け、最新のハックやツール、仕事術や自己啓発に至る幅広いテーマをブログ Lifehacking.jp で紹介している。 著書に、「情報ダイエット仕事術」(大和書房)、「英語ハックス」(日本実業出版社、佐々木正悟氏との共著)、Lifehacks PRESS vol2(技術評論社、共著)がある。ブログ「Lifehacking.jp」を主催