前回は、BtoB企業の営業活動を効率化するため、取り入れるべきマーケティング手法「デマンドジェネレーション」についてお話をしました。

おさらいをすると、「デマンドジェネレーション」とは、「リードジェネレーション (見込み客獲得)」と「リードナーチャリング (見込み客育成)」「リードクオリフィケーション」の3ステップで構成され、営業担当へ渡すリード(見込み顧客の情報)の創出や発掘活動全般のことを指します。

この活動を改めて振り返ってみると、「もしリードが1,000件あれば、1,000通りのアプローチ方法が必要になる」ということになります。なぜなら、BtoBにおける商談は、検討期間が長期化する場合が多く、また、さまざまな部門や役職の人が関わってくることがほとんどで、一人ひとりの検討フェーズや役割・役職に合わせたコミュニケーションを図る必要があるためです。

では、1,000件それぞれに合ったコンテンツを用意することや別々のメールを配信すること、異なったセミナーを開催すること……といった取り組みは、はたして現実的と言えるでしょうか ―― マーケティング担当者が何人いたとしても、終わりませんよね。

そんな課題を解決に導くのが、今回のテーマでもある「マーケティングオートメーション」だと私たちは考えています。日本でもこの1年ほどで認知が広がり、マーケティングや営業の担当者であれば、耳にしたことがあるのではないでしょうか。

一方で、「オートメーション」という言葉が一人歩きし、深い理解に繋がっていないようにも感じます。マーケティングオートメーションを導入することで、何が実現できるのか、その上でマーケターは何に注力すべきなのか、整理していきましょう。

マーケティングオートメーションで実現できること

マーケティングオートメーションとは、端的に言うと言葉の通り、"マーケティングを自動化する"ツールのこと。リードを一元管理し、一人ひとりに対して最適な方法でコミュニケーションを図り、営業可能な見込み顧客として育成してから営業部門に引き渡す、という一連の活動をできる限り自動化・効率化をする仕組みを指します。

先にも触れた、"一人ひとりに最適なコミュニケーション"を図るために、まず考えたいのが「シナリオの設計」です。営業可能な見込み顧客として育成するまでの「ユーザーの行動の流れ」を仮説立てて考え、流れの中のどこで・どのようなアプローチをするかといった戦略を立てていきます。

簡単な例を挙げてみましょう。

自社サイト訪問者のうち、「PV数の多いユーザーはサービスに興味を持った可能性がある」と仮定し、一定数以上のPVがあるユーザーを抽出後、彼らに対し自社で開催するセミナーへの参加をメールマガジンにて促します。

その後、セミナーに参加したユーザーのうち、数人は商談化するでしょう。一方、セミナーに不参加だったユーザーに対しては、ホワイトペーパーなど課題解決に役立つ資料のダウンロードをメール配信で促します。ダウンロードしたユーザーは、セミナーに参加したユーザーと同様にニーズがあると捉えることができるため、リターゲティング広告を配信する対象とし、広告のクリックとそこからの問い合わせを促します。

次に、配信するメールの内容や広告の素材(クリエイティブ)を用意し、シナリオとともにマーケティングオートメーションツールにセットします。すると、設計した通りに対象ユーザーに広告を配信してくれます。

このように、ユーザー行動の流れを仮定する「シナリオ設計」を行ったのち、立てた戦略にのっとった「作業」の部分を担当してくれるのがマーケティングオートメーションです。このツールにより、それぞれの検討段階・役職に合わせた適切なアプローチを効率的に行うことができるのです。

では、マーケティング担当者は何に注力すべきなのか?

また、マーケターは本来、マーケティング戦略の立案やその効果分析に力を注ぐべきである、というのが私たちの考えです。しかし、実際は運用や調整など細かい作業に多くの時間を割かれてしまっているのが現実ではないでしょうか。この課題を解決する手段のひとつが、マーケティングオートメーションの導入です。

これによりマーケターは、作業部分の工数削減を実現し、活動の骨組みとなるシナリオ設計に時間を割くことができるようになります。そして、施策実施から得られた結果をユーザーの反応や案件化率などの指標で分析し、シナリオ自体やメールの内容(コピーライティング)、広告の素材(クリエイティブ)を見直すことで、マーケティング活動をブラッシュアップしていくと良いでしょう。

さらに、作業の部分を自動化することにより、マーケティング戦略の立案から実行、検証といった「PDCAのサイクル」が、従来よりも早く回せるようになります。マーケターのみなさんには、継続的にPDCAを回すことに集中し、成果向上に向けて活動していくことで、顧客の考えや行動の傾向、ニーズへの理解を深めていってほしいと思います。

導入前に考えてほしいこと

さて、これまで、マーケティングオートメーションを導入するメリットを中心にお話してきました。最後に、導入を考える際に注意してほしいこととして、「マーケティングオートメーションありき」ではなく「マーケティング戦略ありき」で考える必要性についてお伝えしたいと思います。

当然のことですが、何の戦略もないままツールを導入しても、そのまま頓挫してしまうことは目に見えています。ペルソナの設定からシナリオの設計、各素材の用意、成果分析といったPDCAを回し続けることも、実際に行ってみると非常に高度な業務であることが分かるでしょう。

そのため、まずは、営業担当者が既に会っている顧客、Webではなくリアルに接点を持っている顧客に対し、「今はどの検討タイミングで、どんな情報が必要で、それをもとにどう検討を進めるのか」といった実態をヒアリングすることから始めましょう。その上で、インターネットを介して何をどこまで情報提供するのか、どのような手段で顧客とコミュニケーションを図ることができるかを判断すべきです。

また、マーケティングオートメーションの導入は、マーケターだけでなく営業マンにも関わってきます。次回、最終回ではツールを導入した際に効果を出せる組織体制についてお話したいと思います。

執筆者紹介

株式会社イノベーション

「BtoBマーケティングを変革する」を使命に、年間900社以上の営業・マーケティング支援を行う。提供サービスとして、有望商談を発掘することを目的に、企業Webサイトにアクセスした企業名と個人名を判明し見込みリードを生み出す「リストファインダー」を提供する。そのほか、自社運営メディアとして、「ITトレンド」や「BIZトレンド」も展開。これらを通じて"法人営業の仕組み化と効率化"を実現し、BtoBマーケティングを変革することを目指す。