法人向け営業マンは日々、売上を上げるため、営業先(見込み顧客)の発掘や顧客の育成に多くの時間を割いているのではないでしょうか。消費者向けの商材(BtoC)に比べ、法人向け商材(BtoB)は商材の単価が非常に高く、そのため導入の決定には多くの関係者が介入します。

たとえば人事システムの導入の場合であれば、人事担当者や人事部長、情報システム部長、購買部長、社長といったように複数の関係者が存在し、それぞれに合わせた提案が必要になってきます。そのため、半年~2年と長い時間をかけて導入検討をしていく企業も多く、営業マンにとって、この提案活動のプロセスにおける「お客様との信頼関係の構築」は非常に重要になってきます。

にも関わらず、日本の法人向け営業マンは、この"最も重要な信頼関係の構築"に時間を割くことができず、見込み顧客の獲得・育成に多くの時間を使ってしまっているのが現状です。この理由は、そもそも提案の工夫をこらす以前に、"提案をする相手を見つけだすことができない"ために陥ってしまうジレンマなのです。

「やみくもに電話をかけ、商品を売り込む活動」はやめませんか?

一方で、日本企業の中でも効率的に営業活動を行い、業績を伸ばしている企業もたくさんあります。

特に、新規顧客を獲得する段階では、従来型の「ターゲットリストに対してやみくもに電話をかけ、商品を売り込む活動」ではなく、Webサイトを活用し、お問い合わせや資料ダウンロードから引き合いを増やす"インバウンド(プル)型顧客"を多く獲得し、ニーズがあるもしくは検討しているタイミングの顧客のみに営業がアプローチできる仕組みを作り上げています。

もちろん、業種・業界やその時の顧客の状況により、プッシュ型のダイレクトアプローチも効果的にはたらくこともありますが、基本的には顧客から自社の商品を見つけてもらい、声をかけてもらえるような仕掛けをつくり出す方が効率的です。そのためには、顧客の立場になり、「売り方」を考えるのではなく顧客の「買い方」を考え、戦略を立てていくことが生産性を高める第一歩になるのではないでしょうか。

マーケティング視点で営業しよう

これまでの法人営業では、自身の担当する企業や地域などが決まっていることも多く、案件の創出から受注後のアフターフォローまで、各営業担当者がすべてのプロセスを担っていました。このような状況下では、いかに"すべての営業プロセスをこなせる優秀な営業マン"を育てるかが重要視されてきたと言えます。

しかし、優秀な営業マンを育てることは非常にマネジメントコストがかかるほか、個人の経験やスキルに依存することが多く、簡単には実現できないことだと多くの人は思うでしょう。

そこで、営業活動に"マーケティング"という要素を取り入れ、「営業マンに依存せずに売上を上げることができる組織」の構築を目指してみてはいかがでしょうか。

では、まず「売上」を構成する要素を分解してみましょう。BtoBにおける売上とは「案件数×顧客単価×受注率」で成り立っていると言えます。その中でも「案件数」は、提案した社数(提案数)と案件化率によって決まってきます。

この中で、マーケティングが直接貢献できるフェーズは「提案数」になります。前述の通り、BtoBの営業活動は現状、見込み顧客の発掘や育成に時間が割かれています。ここのフェーズをマーケティングでフォローすることにより、本来営業マンが注力すべき「企画の作成や顧客への提案」に時間を使えるようになるのです。

さて、ここで言う「マーケティング」とは何でしょう。BtoB企業におけるマーケティング活動は主に、営業マンが売上をあげるための活動と言えます。

具体的には、リード(見込み顧客)獲得から、検討状況を上げるためのリード育成、ニーズが高まった状態で営業マンへ受け渡すといった活動を行っていきます。これにより営業マンは、検討度合いが高く適切なタイミングで顧客への提案活動ができるわけです。

次回から、より具体的なBtoBマーケティング活動についてお話します。

執筆者紹介

株式会社イノベーション

「BtoBマーケティングを変革する」を使命に、年間900社以上の営業・マーケティング支援を行う。提供サービスとして、有望商談を発掘することを目的に、企業Webサイトにアクセスした企業名と個人名を判明し見込みリードを生み出す「リストファインダー」を提供する。そのほか、自社運営メディアとして、「ITトレンド」や「BIZトレンド」も展開。これらを通じて"法人営業の仕組み化と効率化"を実現し、BtoBマーケティングを変革することを目指す。