みなさま、はじめまして! タブチキヨシです。筆者は名古屋で工務店を経営しながら、日本中にハッピーな家を作りたいと考え、住宅デザイナーとして活動をしています。この連載では、筆者が考える「ハッピーな住空間」のアイディアを紹介していきます。

本当に「家族が仲良く暮らせる間取り」を考える(画像はイメージ)

"LDK"は本当に正解か

今回のテーマは、「本当に『家族が仲良く暮らせる間取り』とは」。実際、非常に難しいテーマです。なぜなら、日本の住宅業界はまだまだバブルの成功パターンから脱却できず、成功パターンの変化・進化ができていない状態だからです。

例えば、リビング・ダイニング・キッチンが一体となった"LDK"という空間設計。すっかりおなじみの設計ですが、これは戦後からのスタイルであり、日本の住宅の歴史からすると非常に歴史が浅いと言えます。そんなLDK一体型の空間で、本当に家族が仲良く暮らせるのか? 筆者は疑問を持っています。

ただ、バブル期にはLDK一体型の住まいが人気を集めていたのも事実。当時は買い手も多く、LDK一体型の住まいへの憧れも世間にはありました。では、今は何が必要とされているのでしょうか?

一度、バブル崩壊後の現代の日本を考えてみましょう。日本人は物質的な豊かさよりも、自身の心のゆとりを重視するようになりました。また、女性の社会進出が当たり前になったことで、生活習慣も変わりました。雨が降ったら"隣のおばさま"が洗濯物を取り込んでくれるような時代もありましたが、今では"隣のおばさま"も働いているか、家にいても隣の洗濯物まで取り込まない、ということがほとんどではないでしょうか。これは時代の流れですから、仕方のないことです。

しかし、そうして生活状況が変化していく中、販売しやすいからと言って、従来のLDK一体型の間取りがベストと考えていいのでしょうか? 家の間取りも変わる必要があります。

キーワードは「自分時間」

下記で紹介するのは、そんな思いから筆者が手がけた具体的な案件です。

■洗面・洗濯ができる部屋
この案件では、LDKの空間を削り、4帖(じょう)以上の洗面洗濯室を確保しました。電動物干しを設置することで、洗濯機から移動の手間なく干せるようにしています。設置場所はあえて2階とし、天窓を設けて洗濯物に直射日光を当てる設計にしました。女性だけではなく、男性も洗濯物を干す家庭が多くなった今、「毎日の家事をいかにスムーズにこなせるか」を追求したのがこのカタチです。

洗面洗濯室がある家(色付けをした部分が洗面洗濯室)

■着替えもできるリビングクローク
この間取りを考えるにあたり、依頼者からは「人に見せるためのLDKはいらない。自分自身の心のゆとりがほしい」という要望がありました。その答えとして提案したのが、家の散らかり防止のためのリビングクロークです。クローク内で仕事着や制服から家着に着替えることが可能で、ゲームや雑誌・マンガ、薬なども収納できます。

リビングクロークがある家(色付けをした部分がリビングクローク)

上記2件に共通するキーワードは、「自分時間」です。家事をスムーズにこなせるようにしたり、掃除や片付けの手間を減らしたりすることで、家族全員が自分だけの時間を確保できることを重視しました。共働きが当たり前になった今、外の社会で疲れて帰宅するのは夫も妻も子どもも同じ。いかに家族全員がストレスなく家で生活するか、を考えることが大切になると筆者は思っています。

間取りで言えば、LDKの確保にとらわれるのではなく、1つの部屋を家族共用の図書室にしたり、あるいは洗面洗濯室にしたりと、居住者の生活に合わせて空間の使い方を変えることが重要です。セオリーにとらわれず、自分たちのライフスタイルに合わせた住まい。それこそが、本当に「家族が仲良く暮らせる間取り」ではないでしょうか。

著者プロフィール: タブチキヨシ

日本中にハッピーな家をたくさん建てる事を夢見る住宅のプロ。
Instagramでは2万3,000人(2016年3月時点)のフォロワーがいるカリスマ住宅デザイナー。
attract style・house stageの代表取締役を務めながら可愛すぎずカッコよすぎないデザインを追求し、ワクワクキャーな家を提供している。
インテリアショップ「THE WOW」も経営し、家具販売も手掛けている。
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