「日本一仲の良いお笑いコンビ」と言われているキャイ~ン(天野ひろゆき、ウド鈴木)。彼らが年に一度、行っているライブが今年で記念すべき10回目を数え、その模様を収めた「キャイ~ンLIVE2008 Sweet 10 キャイ~ン」のDVDが発売された。天野が「集大成です」というコント集には、テレビでは決して見られない彼らのお笑い魂が詰まっていた!

キャイ~ンの天野ひろゆき(右)とウド鈴木

――まずは今回の「キャイ~ンLIVE 2008 Sweet 10 キャイ~ン」の見どころについてお聞かせ下さい。

天野ひろゆき : 「もともと『10年やれたらいいね』と言ってはじめたこともあり、今回は一応、キャイ~ンとしてのひと区切りじゃないですけど、集大成的なものができたらいいなと」

ウド鈴木 : 「そうですね~」

天野 : 「ですから、初めて見る方にはこれ一本でキャイ~ンの10年が分かりますし、逆にずっと見て来た人には『これ一本見れば良かったな』と思わせるくらいの作品に仕上がってます(笑)」

ウド : 「まさに珠玉の一本ですね(笑)」

天野 : 「中でも『ものまね芸人鈴木三郎物語』という毎回やってるコントがあるんですが、ウドちゃんが演じる鈴木三郎というキャラクターはこのライブと共に育ったようなもの。これを見ないと終われない、というくらい人気が高まっていたので、今回はここらで一つの形にしようと思って作りました。まぁ、お客さんを感動させようという意図はまったくなかったんですけど(笑)」

――ライブは基本的にどうやって作り上げていくんですか?

天野 : 「まず僕が漫才のネタを作り上げていくところから始まります。それがある程度見えてきたらコントに着手していきます。だいたい1月の初めから、あんなことあるな、こんなことあるなといった感じで3つ、4つくらいネタを書いて、最終的に2つに絞る。漫才は基本的にオーソドックスですが、コントは比較的、今、話題のことを盛り込む傾向にありますね。あとは漫才とは違うシュールな感じなことをやったりとか。で、最後は『ものまね芸人鈴木三郎』というのがだいたいのパターンです」

――天野さんがネタを考えている間、ウドさんは何をしているんですか。

ウド「僕はみんなが顔合わせる時だけ参加しますので、立ち稽古に入った段階でちん入するというか乱入するというか(笑)。ですから、天野くんがネタを考えている間は、ひたすらのんびりとお陽様の光を浴びてます」

天野 : 「逆にそうしてもらった方がこっちは楽なんですよね(笑)。僕が漫才を7~8割がた作ったところでウドちゃんを入れて完成させたり、コントを肉付けしていったり……このやり方は10年間変わってないです」

――でも、やっぱり今回は10周年ということで気合いも入ったのでは?

天野 : 「僕らより周りが気合入ってましたね。うちの(事務所の)社長なんか、慌てて謎の有田焼のカップを作ってましたから(笑)」

ウド : 「お世話になった方たちにお配りしたんですよね」

天野 : 「品質は申し分ないんだけど、なにせ僕らの顔が書かれてるから……すでに手放した方がいらっしゃるという情報が入ってきてますけど(笑)。まぁ、回を重ねるごとに産みの苦しみみたいなものは感じますが、やってる分にはそんなに経ったのかなっていう感じはあります。やっと10年か、というか」

ウド : 「でも、さすがに10年も経つと体力的な変化は感じますね。肌が水分を弾かなくなったとか、シミが増えたとか、いろいろな検査の数値が高くなったとか(笑)。天野くんは人間的にも肉体的にも成長して力道山のような体型になりましたし(笑)」

天野 : 「確かにライブでは異常な量の汗をかくんですよ。他の仕事と比べても一番緊張しますし。テレビはみんなで作るもの、という感覚がありますけど、ライブはすべて自分たちだけなので、責任の重さが違いますね。毎回、終わったら『もうどうにでもしてくれ!』って感じになるんですけど、千秋楽が終わるとまたやりたくなる。不思議ですよね」

ウド : 「僕の場合、ファンレターが半年に1通くらいしか来ないんですね。たまに来ても小学生だったりして、大人からはいっさい来ないんですよ(笑)。ですから、ライブは大人のお客さんの顔が間近で見えるという意味でも、僕にとって貴重な時間なんですよね」

天野 : 「確認作業か(笑)」

ウド : 「いや~、もう『よく来てくれましたね~』って感じなんですよ。ホントありがたいです」

――今回のDVDに収録された特典映像(LIVE2008エンディング集)では、「ラリアット」や「土俵入り」といった、ウドさんによる天野さんいじりが新鮮でした。

天野 : 「はじめてウドちゃんが主導権を握ったコーナーですから、それはそれで楽しみでしたね」

ウド : 「あれはですね、ラリアットに限らず、普段から天野くんがいろいろやってくれることをですね、みなさんにぜひお見せできたらと思いまして」

天野 : 「まさか『本気を出せ』と怒られるとは思ってなかったけど(笑)」

ウド : 「いや、あの長州力さんのリキ・ラリアット並のポテンシャルを今、出せる芸人といえばですね、やっぱり天野くんしかいないわけですよ!」

天野 : 「(スルーして)ま、基本的に自分たちも楽しめればと思ってやってますので、その意味では二人の仲の良さというか、そういった部分もひっくるめてキャイ~ンだと思っていただければ」

――では、あらためて「キャイ~ンらしさ」とは何だと思いますか?

天野 : 「今回のライブを通じて、なんとなく自分たちの笑いってこんな感じなのかな、っていう気はしましたね。具体的には……スキだらけの笑いというか(笑)。それはさておき、なによりお客さんを楽しませる以上に自分たちも楽しみたいので、お客さんはそんな僕らを見て笑ってくれればいいと思うんです。それと、見終わって何も残さないのが理想。『時代の先端だね』みたいなのはおこがましいですから。子供から大人まで、二人の凸凹な感じを見てひたすら楽しんでもらえれば嬉しいです」

インタビュー中も仲の良さを見せつける2人

――ライブではこれから先、どういったものをやっていきたいですか。

天野 : 「とりあえずひと通りやってみたし、変えようにも変えようがないかもしれないです。ただ、自分たちが楽しめることをやろう、というコンセプトは変わらないと思います」

ウド : 「でも、同じネタをやってもこの10年で二人の関係性にも変化が出て来たというか。比べるのもおこがましいですが、ベテランの方々のように間合いによって笑いが変わってくるというか、同じことをやっても、なんともいえない『味』がでてきたというか、そんな感じは少ししますね~」

天野 : 「そうだね。若い頃はネタをとにかくきっちりやることが大事でしたけど、今はネタの余白を楽しめる余裕があるかも」

ウド : 「でも、歳を取ると、滑舌はきっと悪くなってるでしょうね」

天野 : 「これ以上悪くなられてもたまらないよ(笑)」

――最後に「Sweet 10」になぞらえて、ウドさんから天野さんへ、天野さんからウドさんへ"贈る言葉"をお願いします。

ウド : 「そうですね……なにより天野くんが書くネタの面白さが、僕が加わることで少しでもお客さんに伝われば僕は嬉しいんです。ネタを考えることのプレッシャーはすごいと思うし、替わってあげることはできないんですけど、いつもホントにありがたく思ってます。その意味で天野くんはまるで太陽のような存在なので、これからも僕はその周りを回るような感じでいられればと。ギャラは折半で申し訳ないですけど(笑)」

天野 : 「僕からは……まぁ、ホント、生きてさえくれればいい(笑)。コンビを組んで17年ですが、ある時から彼に多くを求めなくなりましたから(笑)。『僕はこの人と組ませてもらっているのだ』という、そのような境地に至ったのか至らされたのか……これからも変わらずに息をして生き続けてくれればと思います」

ウド : 「ありがとうございます! でも、いまだにセリフを噛むと天野くんがものすごく落胆した顔をするんですよね(笑)」

天野 : 「このコンビは俺がネタを忘れたら終わりなんですよ(笑)。それもあって、今ではもう多くを求めないようになりました。これもウド鈴木という天才と組んだ修行……いや、荒行……苦行ですね(笑)」

ウド : 「いやぁ~、そういってもらえて嬉しいなぁ~。まぁ、これからも天野くんには体だけは大事にしてもらわないと……」

天野 : 「親戚かよ、おまえは(笑)」

『キャイ~ンLIVE2008 Sweet10 キャイ~ン』発売中 3,990円
発売・販売元:ポニーキャニオン
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キャイ~ン プロフィール

天野ひろゆき 1970年3月24日生まれ。愛知県出身。A型。ウド鈴木 1970年1月19日生まれ。山形県出身。AB型。1991年にコンビ結成。ウドのボケと天野の的確なツッコミによるコンビネーションで人気となり、登場する時に披露する「キャイ~ン」ポーズで一世を風靡した。以後、多くのバラエティー番組に出演。お笑い界一仲の良いコンビと称されている。現在、『もしもツアーズ』(フジテレビほか)、『リンカーン』(TBS系)、『特上!天声慎吾』(日本テレビほか)に出演中。