Excelでグラフを「しょっちゅう作る」という人は少なく、「たまに作る」程度という人が圧倒的に多いなか、「なんかテキトーにいじってたらできた」という感じで仕上げている人も多いのではないだろうか。だから、グラフ機能はいつまでも習熟度が上がらず、かといって、たまにしか使わないから、そんなに深刻に困らない。

そんな感じなので、初心者の域をいつもウロウロ。おまけにExcel 2007でインターフェースだけでなく、グラフ機能は大きく様変わりしたので、余計に、思ったようなグラフを作れなくなっている人が意外に多いようだ。

そこで、まずは、ただテキトーにリボンのボタンをいじるのではなく、現状での指針となる「コンパス」くらいの役目を果たしてくれる概念や考え方を紹介しておきたい。

Excel 2007以降も、グラフ機能にはちょこちょこ手が加えられているのだが、Excel 2007/2010と2013/2016で大きく変わっているので、2回に分けて、それぞれのバージョンについて紹介しておこう。

グラフの基本的な作り方は今も変わらない

グラフの作り方すらわからないという人は少ないだろうが、念のため確認しておこう。基本的には、次の2ステップでOKだ。

 (1)グラフ化したいデータ範囲を選択
 (2)[挿入]タブから作成したいグラフの種類を選ぶ

合計欄等を除いたデータ範囲を選択して、好みのグラフ種類のボタンをクリックする

適当な位置にグラフが作成される

選択範囲に「合計」欄などは含めてはいけないなどの初歩的なトラップはあるものの、Excel 2003時代から作成の流れは変わっていないので、ここでつまづく人はいないだろう。実はExcel 2007から、グラフ種類を選択したあと、シート上でグラフを描画する位置をドラッグする必要がなくなったのだが、そんな細かいところに気づく人は少ないかもしれない。

グラフを編集する上で、しっかり押さえておく必要のあるのが、グラフは「グラフ要素」と呼ばれる複数のパーツで構成されているということ。グラフ要素によっても特性が違うが、グラフ上でそれぞれの要素はマウスで選択したり、ドラッグして移動したりすることができ、[Delete]キーを押すと、その要素を消去することができる。

それぞれの要素をクリックすれば選択することができ、不要なものは[Delete]キーで削除できる

文字を編集できるグラフ要素の場合、マウスカーソルを近づけるとカーソルがIビームカーソルになるので、その状態でクリックすると、文字の編集ができるようになっている。

文字が編集できるグラフ要素の場合、マウスカーソルを近づけるとカーソルの形状がI字型に変化する

必要に応じて、好みの文字に編集することができる

ここら辺は、Excel 2003以前から脈々と受け継がれてきている機能なので、従来からのExcelユーザーなら、新バージョンのExcelでも、とりあえずグラフを作ることができるようになっているはずだ。

リボンは左から右へと使うべし

問題となるのは、やはり「リボン」だろう。リボンインタフェースが採用されて、もう10年近く経つので、もはや慣れるしかないが、グラフはたまにしか作らないというユーザーにとっては、これがなかなか覚えられない。

Excel 2007/2010の場合、グラフを選択すると、左から[デザイン]、[レイアウト]、[書式]と3つのタブが表示される(Excel 2013/2016の場合は2つ)。

[デザイン]タブ

[レイアウト]タブ

[書式]タブ

慣れないと、これら3つのタブを行き来して、適当にあたりをつけてボタンをクリックすることも多いだろうが、やみくもに操作すると二度手間、三度手間となってしまうことがあるので注意したい。

まず、もう一度、それぞれのタブを見渡してみてほしいのだが、いちばん左の[デザイン]タブは[グラフのレイアウト]や[グラフのスタイル]グループが大きくスペースを取っていて、このタブは、「グラフ全体」に対する操作のボタンが揃っている。

そして、次の[レイアウト]タブは、たとえば「データラベル」や「凡例」といった各グラフの構成要素のオン/オフを設定するタブになっている。たとえば、[軸ラベル]ボタン→[主縦軸ラベル]→[軸ラベルを垂直に配置]を実行すれば、次のように縦書きの縦軸ラベルが追加される。

試しに垂直の「縦軸ラベル」を追加してみる

あとはこれまで通り、追加された軸ラベルの文字を編集すれば完成だ

あとはこれまで通り、追加された軸ラベルの文字を編集すれば完成だ。

完成したグラフ

最後のいちばん右の[書式]タブは、すでにグラフ上に描画されている各グラフ要素の細かい書式を設定するために用意されている。

こうして見てくると、グラフ用の3つのタブは、左から右に順に使うようなイメージで設 計されているのがわかるだろう。このポイントを押さえておくだけでも、無駄な作業が減るだろう。たとえば、こんなケースだ。

次の図は、棒の太さを太くして、データラベルも追加するなど、ある程度まで仕上げた状態の縦棒グラフだ。このグラフに、元数値の表を表示できる「データテーブル」を追加したくなったとしよう。タブを移動しながら探してみると、[デザイン]タブの[グラフのレイアウト]に、データテーブルを表示しているものがあったので、「これだ、これだ」とクリックする。

ある程度書式を整えたあと、「データテーブル」が用意された「レイアウト5」を設定してみる

すると、データテーブルが追加されたのはいいが、せっかく太くした棒が元に戻ってしまい、データラベルもなくなってしまっている。この場合の正解は、[レイアウト]タブで「データテーブル」を追加すればよかったのだが、「データテーブル」という名称はマイナーなので、なかなか気づかないのも無理はない。

せっかく太くした棒が細くなってしまい、データラベルも失われてしまった

こんな場合も含めて、リボンは左から右へと使うのが基本で、いちばん左の[デザイン]に戻る時は、「イチからやり直し!」みたいなときに限ると覚えておくといいだろう。

なんだかんだ言っても、いちばん使うのは[書式設定]ダイアログ

リボンがどうだこうだという話をしたが、結局、細かい設定は[書式設定]ダイアログを使うことになり、これは基本的にExcel 2003以前から変わってないので、以前からグラフ機能に馴染んでいる方なら、かなりの面は救われるようになっている。[書式設定]ダイアログの内容は、対象のグラフ要素によって内容が異なるが、たとえばこんな感じだ。見慣れないパネルもあるが、まぁ、許容範囲内だろう。

「データ要素」の書式設定ダイアログ

この[書式設定]ダイアログを表示する方法は、次の3つ。

 (1)グラフ上のグラフ要素をダブルクリックする(Excel 2010以降のみ)
 (2)[Ctrl]+[1](数字のイチ)キーを押す
 (3)[レイアウト]や[書式]タブの[選択対象の書式設定]ボタンをクリックする

どの操作方法も、若干の違いがあるもののExcel 2003以前から備わっている操作方法だ。ただし、Excel 2007の場合のみ、(1)のダブルクリックする方法では、表示できないので要注意。(2)のショートカットキーは、Microsoft製品に共通のショートカットキーなので、覚えておいて損はないだろう。Excelの場合、セルを選択した状態でこのショートカットキーを押せば、[セルの書式設定]ダイアログが表示されるし、グラフ上の特定の要素を選択しておけば、その要素の[書式設定]ダイアログが表示される。

最後のリボンを利用する方法は、選択しにくいグラフ要素に対して設定を行いたいときに便利で、[レイアウト]や[書式]タブには、[書式設定]ボタンと一緒に、グラフ要素を選択できるプルダウンも用意されているので、これらをセットで利用すると便利だ。

さて、すでにExcel 2007以降でグラフを作成している方も、前出の[書式設定]ダイアログには、[キャンセル]ボタンがなく、[OK]ボタンの代わりに[閉じる]ボタンが用意されていることにちゃんと気づいているだろうか。使い勝手の上では、この仕様変更がいちばん大きいかもしれないが、Excel 2007以降では、ダイアログで設定している内容が即座にグラフに反映されるようになっているのだ。Excel 2003以前の場合は、[OK]ボタンをクリックするまで適用されず、「いろいろオプションをいじっていたらわかんなくなっちゃった」ってときは、[キャンセル]ボタンをクリックすればいい、という逃げ技が使えたのだが、この技は、今はもう使えないのだ。1つの設定でも取り消すには、通常のコマンドと同様に[元に戻す]機能を利用するしかない。この点、しっかり、頭を切り替えておこう。

逆に、意外と知られていないようだが、この[書式設定]ダイアログは、開いたまま、次々にほかのグラフ要素の書式を変更することもできる。たとえば、図のように左側の棒の色を変更したとしよう。

左側の棒の色を「オレンジ」に設定してみる

ここで[閉じる]ボタンでダイアログを閉じずに、そのまま右側の棒をクリックする。すると、表示されているパネルがリセットされるものの、そのまま右側の棒の系列の[書式設定]ダイアログを表示している状態になる。

ダイアログは閉じずに、そのまま右側の棒をクリックして選択する

あとは、パネルを切り替えて、こちらの色も変更すればOK。

そのまま[塗りつぶし]パネルを表示して、「濃い青」に設定する

ダイアログを表示したまま作業するのは邪魔な時もあるので、あらゆるシーンで万能な使い方というわけでもないが、このような設定方法も今はできるので、要所要所でぜひ使ってみていただきたい。