今回より、全4回にわたってECサイトやメルマガの改善方法について連載をさせていただきます、サイバーエージェントの小川卓と申します。第1回は、ECサイトにおいて売上をのばしていくために、ゴール、KPIについてどのように考えるべきかを解説いたします。
世の中にはたくさんのウェブサイトが存在します。その中でもビジネスという観点で考えると代表的なものはECサイトなのではないでしょうか? ここでいう「ECサイト」とはオンライン上で売上が発生するサイト全般を指します。たとえば洋服や名産品を販売していたり、宿の予約やデジタルコンテンツの取り扱いなども含まれたりします。
今回の記事ではECサイトでどのようにゴール設計を行い、どのようなKPIを見るべきかを説明するとともに、見ていくべきデータの事例も紹介いたします。
まずはゴールを決める
ECサイトのゴール設計は非常にシンプルで、「売上」がそのゴールになります。しかし単純に「売上を上げる!」というゴール設計ではいけません。目標には3つの要素が必要です。それが「指標」「値」「期間」の3つです。この3つのうち一つでも欠けているとゴールを設定したとは言えません。マラソンで言えば、「42.195km先にあるゴールに3時間以内に到達する」といった形です。
ECサイトの例に話を戻しましょう。ECサイトでは、基本的には年及び月単位で数値を設定するとよいでしょう。以下がその例になります。
年間の目標と月の目標が設定されています。年間の目標は会社の経営陣が決めるものとして、月の売上はどのように設定するか、気をつけるべきポイントを2つ紹介します。
1つ目は「過去の季節トレンド」です。特定の月が売上を上げやすい商品(例:扇風機)などを取り扱っている場合は、次回の同月も売上が伸びることが最初からわかっています。過去の結果を元に、どれくらい増えるか算出して反映させましょう。
もう1つのポイントは今後実施することがわかっている施策の予測を加味することです。例えばリスティングを今年の11月から現在の2倍に強化する予定なのであれば、リスティング経由の売上も2倍前後で想定しておく必要があります。目標設定は達成可能なラインを現在ある情報を元に設定することが大切です。
KPIの設計
ゴールの設定が終わりましたら、次にKPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)を設計します。KPIという単語は聞いたことがある方も多いかと思います。一言で言うと、ゴールを達成するために改善をしていく、特に重要な指標となります。
ECサイトの場合は、以下の式が成り立ち、左辺のそれぞれの値がKPIの「候補」となりえます。
ここでは「訪問回数」「コンバージョン率(CVR)※」「購入単価」がKPIの候補となります。ではこの候補のうちどれをKPIとして設定すればいいのでしょうか。それは、その数値を上げられる見立てや施策がどれくらいあるかによって決まってきます。
※コンバージョン率とは、訪問者数あるいはページビューを母数として、そのうち、運営側が目指す行動(商品の購入や資料の請求など)に至った割合を示すもの
たとえば商品の特性上(大半の商品が同じような値段で1個しか購入されないようなもの)があるとすれば、購入単価を改善することは難しいでしょう。その場合はKPIとして設定を行わないほうがよいでしょう。
逆に集客施策を今年度はいろいろ試していくということであれば、訪問回数はKPIの最有力候補になります。KPIは1つである必要はありません。改善施策が考えられるのであれば、3つの要素すべてをKPIとして設定することが理想です。
KPIもゴールと同様に、指標・値・期間を設定する必要があります。先ほどの表にこれらKPIの数値を反映してみましょう。
ゴールの設計でも説明しましたが、季節トレンドや実施予定の施策に基づいてそれぞれのKPIを設定しましょう。
サイトに応じた指標を追加する
上記がECサイトを評価する上で、設定しその結果を必ず見るべき指標になります。しかし、この数値だけでは改善施策や課題を発見するのには少し情報が不十分です。たとえばコンバージョン率が上がったときに、それは良いお客様を連れて来られたからなのか、あるいは、サイト内を改善したからなのかがわかりにくくなります。
そこで追加でいくつか見ておくべき指標を追加しておきましょう。どのような指標を追加するのかは、サイトによって変わってきます。実施予定の施策、特に注力しようとしている箇所(例:スマートフォン経由の売上比率を増やす)あるいは、利益も見るために販売管理費も追加したいという考え方もあります。これは社内で議論して決めてみましょう。
最後に「メンズファッションプラス」(http://mensfashion.cc/)というECサイトで設定しているゴール・KPI・指標を紹介しておきます。こちらも参考にぜひ、このような管理シートを作成してみてはいかがでしょうか?
次回はECサイトを改善するためにアクセス解析ツールで見るべきデータやその見方を紹介いたします。
■小川 卓氏(サイバーエージェント)
前職では、株式会社リクルートにて住宅情報サイト「SUUMO」のウェブアナリストを担当。アトリビューション・ソーシャルメディアの分析・モニタリング・スポット分析・教育などが主な業務。また、アクセス解析に特化したブログ「リアルアクセス解析」を2008年より運営中。
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