よくネットで、独身女性が結婚できない理由として「理想が高すぎる」という項目が挙げられているのを目にします。「年収は最低でも400万以上で、専業主婦希望で、子供も考えるならうーん600万、できれば1000万以上はないと厳しいかなぁ。見た目にはこだわらないけど、清潔感があって、身長は私よりは高くないとイヤかも……」なんていうワガママ放題の「女性の意見」が取り上げられ「自分だってそんな条件のいい女じゃないクセに、何高望みしてんだ! そんなんじゃ結婚できなくて当たり前だろ!」と、まぁ「そりゃそうだよね」という至極まっとうな非難にさらされていたりします。

「身の程知らずに理想が高いから、独身女性は売れ残ってる」。果たして、それは事実なのでしょうか。

高いのは「理想」じゃない

私の周りにいる独身女性は、もれなく仕事を持っています。そりゃ独身で一人で生きていかなきゃいけないわけですから、仕事ぐらいしますよね。だいたい一人暮らしだし、それなりの経済感覚も身についていれば、会社勤めで年収が600万や1000万を超えるなんて、めちゃくちゃレアケースだということも、骨身にしみてわかってます。

彼女たちの口から、結婚したい相手の条件として「年収」という言葉を聞いたことはありません。自分が生活するためのお金は自分で稼いでるわけだし、まともに仕事さえしていれば、二人で生活する分にはなんとかなるだろうという現実的な考え方を持っている人がほとんどです。

「普通に働いてれば十分」。そんな相手はいくらでもいそうなのに、なぜ結婚までたどりつけないのでしょうか。

私を含め、彼女たちが求めているのは「心を支えあい、毎日を楽しく送れる相手」なのです。経済的に全面的に保護してくれなくてもいい。何かあれば自分だって相手を助けるし、助け合いたい。もちろん、見た目でもなければ、どんな企業に勤めているかとか、周りに自慢できる相手かどうかなんて、どうだっていいのです。

でもそれって、言葉を変えれば「自分に合う相手」ということですよね。心を支えあうには、話が合って、お互いを理解し合えなければいけない。条件で相手を探すのが「既製服を探すこと」に近いなら、気持ち的に自分に合う相手を探すのは「オーダーメイドで自分の身体にぴったりくる服を探すこと」に近い。

そして、人間はオーダーメイドでなんか作れないわけです。どんなにお金を積もうと無理。これは、どんなあり得ないハイレベルな条件よりも、ある意味「高望み」なのかもしれないと思うのです。

<著者プロフィール>
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『POPEYE』などで連載中。

イラスト: 野出木彩