広島県のJR呉線はなにかと話題になる路線だ。最近はJR西日本の新型車両227系「Red Wing」が続々と投入されている。その227系に押し出されるように引退した103系はトイレ付きという変わり種だった。海沿いの車窓風景も定評があり、観光列車「瀬戸内マリンビュー」も走っている。トワイライトエクスプレス車両を使った「ランチクルーズトレイン」が走ったこともある。

呉線は電化されているとはいえ、全線単線だ。しかし快速列車が走り、臨時列車も運行する。列車の運行は意外と複雑かもしれない。早速、列車ダイヤ描画ソフト「OuDia」に入力してみよう。

呉線平日ダイヤ(2015年6月)

呉線は山陽本線の三原駅と海田市駅を結ぶ87.0kmの路線だ。現在の時刻表は糸崎駅~三原駅~海田市駅~広島駅と掲載されている。三原方面の普通列車の多くが山陽本線糸崎駅を発着する。海田市方面の列車はすべて山陽本線に乗り入れ、広島駅を発着する。そして呉線の中心からやや広島寄りの広駅を境に、運行本数に大きな差がある。広島方面は広島市への通勤通学需要があり、三原方面はローカル線の趣だ。

列車の線は、黄緑色が快速「安芸路ライナー」、濃緑色が快速「通勤ライナー」だ。黒が普通列車。黒い太線は臨時普通列車で「赤ヘルナイター号」の愛称がある。こちらは上り列車のみ。マツダスタジアムで野球のナイトゲームが開催される日のみ、帰りの観客のために運行する。

快速「通勤ライナー」は、下り(広島方面)が朝の時間帯に4本と夕方に1本、上り(呉方面)が夕方以降に7本運転。広島への通勤通学列車らしい設定といえる。呉線全線を走る「通勤ライナー」もあるけれど、三原~呉間は各駅に停車する。呉~広島間の停車駅は矢野駅だけ。なんと山陽本線と合流する海田市駅も通過する俊足ぶりだ。一方、日中に走る快速「安芸路ライナー」は呉~広島間の停車駅が多く、吉浦駅・坂駅・矢野駅・海田市駅に停車する。日中の買い物客や観光客向けだろう。

快速列車を拡大(下り列車)

快速列車を拡大(上り列車)

ところで、快速列車と普通列車の追い越しはあるだろうか? 呉線は全線単線で、広~広島間は約30kmだ。追い越しは設定しにくい。停車駅が少ないだけで先行列車に追いつかない「ズルい快速列車」だろうな……と思ったら、しっかり追い越しが設定されていた。ただし、上り列車の呉駅だけだった。それも普通列車の停車時間が長すぎる。追い越しだけなら数分で済むはずだけど、20分以上も停車する列車もある。

上り列車に追い越しが設定された理由は、「快速を先に行かせたい」ではなく、「普通列車と快速列車を等間隔に運行するため」といえそうだ。ちなみに下り快速列車は、先行する普通列車に追いつくあたりで広島駅に到着する。運行間隔が整っていて、追い越し不要というわけだ。

ところで、快速列車の線を見ると、かるが浜~天応間ですれ違っているように見える。しかし呉線は単線だから、実際にはどちらかの駅で運転停車が行われると思われる。

呉線休日ダイヤ(2015年6月)

最後に休日ダイヤも見てみよう。土曜・休日の日中、呉線では快速「瀬戸内マリンビュー」が走る。山のようにとがったピンクの線だ。他の列車には変化がない。朝夕の坂~広島間、日中の安浦~広間がちょっと減る程度で、圧縮表示すると目立たない。その変化のないダイヤの中で、臨時快速列車をサクッと設定できる。すれ違い可能駅が多く、歴史的に優等列車も走った高規格な線路のおかげともいえる。だからこそトワイライトエクスプレス車両を使った列車も設定できたろうし、将来は「トワイライトエクスプレス瑞風」だって割り込めそうだ。

また、土曜・休日も「通勤ライナー」をちゃんと走らせている。学生の部活などへの配慮か、あるいは観光都市広島だから土日も働く人が多いのかもしれない。もちろん広島市内へ遊びに行く人もいるだろう。土日の「通勤ライナー」がなければ、呉から広島市内へ行く人はクルマで出かけてしまうかもしれない。広島市は路面電車もあるし、公共交通機関を上手に使う人が多いともいえそうだ。呉線、なかなかやるじゃないの。