『デスノート』『デスノート the Last name』(06年)、スピンオフ作『L change the WorLd』(08年)で大成功を収めた実写『デスノート』シリーズ。誕生から10年の時を経て、映画『デスノート Light up the NEW world』(10月29日公開)で、まさかの続編として復活を遂げる。果たして、その"最終ページ"には一体何が書き込まれたのか。
マイナビニュースでは「独占スクープ 映画『デスノート』の最終ページ」と銘打ち、すべての作品を企画・プロデュースしてきた日本テレビ・佐藤貴博プロデューサーの「今だから語れる」証言を中心に、全20回にわたってその歴史を掘り下げていく。インタビューは合計約5時間、4万字近くにも及んだ。第19回は、東出昌大を俳優の道へと導いた"陰の恩人"が明らかに。
オーディションでは「迷わず」落としていた
――東出昌大さんにお話をうかがったところ、佐藤さんを「恩師」とおっしゃっていました(2016年10月28日にインタビュー記事を掲載)。
そんな「恩師」とは大げさな(笑)。映画『桐島、部活やめるってよ』(12年・以下『桐島』)という彼にとって人生のターニングポイントとなった作品をプロデュースしたのは事実ですが、『桐島』は僕にとっても大きくて大事な作品なので、彼のことを僕は同志だと思っていますよ。
東出くんとの出会いは『桐島』オーディションのエントリーシートです。500人近い資料をまず僕が選別しました。さすがに吉田大八監督に何百人にも会ってもらうわけにもいかないので。100人以下に絞りましたが、実はその段階で東出くんを僕は落としています。高校生たちの生々しい青春を描きたいと思っていたので、当時現役高校生だった神木隆之介くんと橋本愛ちゃんを既に決めていました。
その主演とヒロインに合わせて基本は10代、少し上でも22歳までで切ろうと思っていたので。その時、東出くんはもう23歳だったし、年齢よりさらに大人びて見えるアーティスト写真だったので、迷わずに落としてました(笑)。そんな足切りから東出くんを救ったのは、枝見洋子プロデューサーです。『桐島』の企画を僕に提案してきた若手Pで、僕について『桐島』でプロデューサーデビューをしようとしていたところでした。
枝見は最初から東出くんに目をつけていたみたいで、僕にどうしても会って欲しいというので、そこまで言うならと繰り上げ当選させて、オーディションに呼びました。だから「恩師」というなら枝見Pじゃないですかね(笑)。そこからオーディションを重ねていくわけですが、僕の中でなかなかゴーサインを出せませんでした。都合6回くらい東出くんを呼んでいるはずです。ただし、東出くん以外にもイイと思える人間もいなかったのも事実で、悩みましたね。
もうスケジュール的に決定しなければならない段階のオーディションが終わったところで、吉田大八監督が「佐藤さん、宏樹役は東出昌大しかいないでしょう。僕は彼と心中してもいいと思ってます」と覚悟の発言をされました。監督にそこまで言われたら、僕もノーとは言えません。その場で東出くんに決定の連絡を入れました。まあ、吉田監督はこの「心中発言」について、いつも「僕はそんなこと言ってません」と否定するんですけどね(笑)。
勝負作を任せる意味
――先程、今回の起用のエピソードでもありましたが、舞台をご覧になって即決したと(連載第13回より)。今回は迷わなかったんですね。
はい。東出くんが数々の経験を積んで、大きく飛躍しているのを感じましたし、何より今回の映画の役柄が彼にバッチリとはまっていたからです。松ケンもLという、松ケンにしか出来ない「役」に最高のタイミングで出逢う縁を持っていた。そしてLからスターになった。スターになる人は、そういった「ハマリ役」と出逢える運と縁を持った人なんだと思います。東出くんは『桐島』の宏樹役でデビューのきっかけを掴み、そしてまた更なる高みを目指すであろう今回の主役の座を射止めた。そしてこれは僕の中だけのことですが、僕の勝負作の主演を東出昌大に任せるというのは、とても意味あることなという思いもあり。とにかく、映画を観ていただければ、今回の主役が東出昌大でなければならなかった意味を分かっていただけると思います。
久しぶりに一緒に仕事をして、彼の座長気質な一面も垣間見ることができました。デスノート対策チームに、池松くんを加えたメンバーで「反省会」という名の飲み会を毎晩開催していたそうです。その飲み会は常にホテルの東出くんの部屋だったそうで(笑)。毎日、自分の家に帰ることなく、仲間たちとずっと一緒にいられる地方ロケの醍醐味ですね。
映画『桐島』も高知で1カ月ほどのオールロケ。キャストもスタッフも同じホテルに泊まり、もはや修学旅行のようでした(笑)。キャストはほぼ高校生役の若い俳優たち。まあ濃厚な時間を過ごしたんだと思います。東出くんはデビュー戦ですから、俳優としての経験が全く無い中での長期ロケ撮影でしたは、その時から彼の周りに人が集まっている感じでした。撮影を終えて、東京に戻ってからも、彼の家が「桐島メンバー」のたまり場だったそうです。そして今でもその関係性は続いているみたいですよ。愛されキャラで、みんなが集まるところの真ん中にいる人。それが東出昌大です。
■プロフィール
佐藤貴博(さとう・たかひろ)
1970年4月26日生まれ。山梨県出身。1994年、日本テレビに入社。営業職を経て、2003年に念願の映画事業部に異動する。映画プロデューサーとして、『デスノート』シリーズ、『GANTZ』シリーズ、『桐島、部活やめるってよ』などヒット作話題作を数多く手がける。今年公開作品は、『デスノート Light up the NEW world』(10月29日公開)、『海賊とよばれた男』(12月10日公開)。
(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS